葉色:
学名:Acer
別名:モミジ
科名:カエデ科
分類:落葉高木
原産地:日本、東アジア、北アメリカ
大きさ:背丈2.0〜10m、横幅1.0〜7.0m、葉の大きさ:主な品種の項目を参照(対生)
主な見所:葉(春〜秋)、紅葉(秋)
美しい紅葉と風情のある株姿、特徴のある葉の形などで古くから使われてきた樹木です。いくつかの種類があり、ポピュラーなイロハモミジの他に、オオモミジとそれによく似たヤマモミジ、さらにトウカエデ、ハウチワカエデなどがあり、これらの改良・交配種も数多く出回ります。
葉色は赤や黄色の他に白や紫、ピンク、斑入りなど多岐にわたり、葉の形も葉幅の細いものや獅子葉などもあります。秋の紅葉だけでなく、新芽が色づくものもあります。花や実は目立ちません。株は自然樹形が美しいです。本来は株が大きくなりますが、上手に剪定すれば小振りな姿のまま楽しめます。
西日の当たらない半日程度の日当たりを好みます。半日陰では紅葉が美しくなりませんが育てることはできます。土壌は水はけ、水もちのよい肥沃な土の場所を好みます。乾燥しやすい場所はやや苦手です。カミキリムシが一番の問題になるのでその予防と駆除は怠らないようにしましょう。
和風の庭や自然風の庭によく合います。洋風の庭の場合はなるべく明るい葉色の品種を選びます。
地植え向きの樹木ですが、性質の弱い品種は鉢植え栽培するのもよいでしょう。自然樹形も見所なので横幅はとってあげたいところ。狭い庭では株立ちのものを用いるとまとまりやすいです。
新芽が美しいものと紅葉が美しいものがあるので、庭のデザインによってどちらが良いか選択しますが、紅葉が美しくならない暖地では新芽が美しいものを選んだほうが無難でしょう。
様々な種類と品種が出回ります。種類や品種によって葉の大きさや、樹高が異なるので確認を。
下記以外にハナノキ、メグスリノキなどの原種も栽培されています。
○イロハモミジ(A. palmatum)
日本原産。葉が小さめ(4〜7cm)で鋸歯は粗めで不規則。葉の裂け目は5〜7裂。枝は細かく出て繊細な印象。自然樹形はやや横に広がります。
葉の裂片を「いろはにほへと」と数えたことから名がついたとされています。
□イロハモミジ系の改良品種
「茜」:赤〜オレンジ〜黄色と変化する新芽が美しいですが、やや病気に弱い 。
「鬱金」(ウコン):新芽が黄緑で葉が小さい。紅葉は黄色。樹高は低い。
「桂」:新芽が黄色と赤の覆輪になります。赤紫の紅葉はそれほど綺麗ではありません。
「出猩々」(デショウジョウ):新緑が美しい赤色になります。樹高は低い。
○オオモミジ(A. amoenum)
日本原産。葉が大きめ(6〜9cm)で鋸歯は細かい。葉の裂け目は7〜9裂。自然樹形は直立し、イロハモミジに比べ男性的な印象になります。
□オオモミジ系の改良品種
「大盃」(オオサカズキ):秋の赤い紅葉がとても美しい。成長が遅め。
「野村」:紫葉の代表的品種。秋の紅葉は赤。
○ヤマモミジ(A. amoenum var. matsumurae)
オオモミジの変種。葉はオオモミジに似ていますが、鋸歯は荒い。日本海側や北日本に自生します。
□ヤマモミジ系の改良品種
「稲葉枝垂」:下垂性で赤紫の紅葉が美しいです。
「青枝垂」
ヤマモミジ系。枝垂性で葉の裂けが細かい繊細な品種です。紅葉は黄〜橙。丈夫な品種。
「鴨立沢」(シギタツザワ)
ヤマモミジ系。黄緑色の葉色。葉は小さめで、樹高も低い。繊細な品種でやや育てづらい。
「爪紅」
ヤマモミジ系。新芽時に葉先が紅に染まります。葉色はやや黄色みがかっており、特に新芽時は黄色が強いです。比較的丈夫な品種。
○ハウチワカエデ(A. japonicum)
日本原産。葉は大きい(8〜12cm)。葉の切れ込みは9〜11裂。寒冷地に自生するカエデで暑さに弱く、暖地では積極的に植栽されていません。
○オオイタヤメイゲツ(A. shirasawanum)
日本原産。ハウチワカエデに似ていますが葉はやや小さめ(6〜10cm)。葉の切れ込みは9〜13裂。寒冷地に自生するカエデで暑さに弱く、暖地では積極的に植栽されていません。
「ムーンライズ」
オオイタヤメイゲツ系。新芽時に葉が赤くなり、徐々に黄色から明るい黄緑色に変わります。秋にはまた赤く紅葉にします。
○トウカエデ(A. buergerianum)
東アジア原産。葉は小さめ(4〜6cm)。葉の切れ込みは普通3裂ですが、鋸歯とともに変化が多いです。直立する樹形のため公園や街路樹によく植えられます。暖地でも綺麗に紅葉します。
「花散里」:トウカエデ系の改良品種。新緑が薄ピンク〜白黄緑〜黄緑と変化し、秋の紅葉も楽しめます。葉の大きさは4〜8cm前後。
○ネグエンドカエデ(A. negundo)
北アメリカ原産のカエデ。羽状複葉で、鋸歯は荒い。耐寒性が強く寒冷地向きです。自然樹形は緩い逆三角形になります。写真は斑入り品種。
「フラミンゴ」
ネグエンドカエデの改良品種。ピンク〜白の斑入り葉。暖地ではやや育てづらい。
タネから育てたイロハモミジの苗。こぼれダネで増えることがあるほど芽出しも育苗も簡単です。
ここからミニ盆栽を作ることもできます。
写真はテッポウムシの被害跡。カエデの植栽で問題になりやすいのがテッポウムシ(カミキリムシの幼虫)の存在。被害がわかりづらく、わかった後では深刻な被害になっていることが多いです。
とにかく幹周りを観察して、異常(おがくず状のふん、不自然な穴、帯状の木くずなど)があれば殺虫剤を使ってすぐに駆除します。
癒合剤を塗った切り口。よくカエデの枝を切ると樹液が噴き出すといいますが、落葉期に剪定してもそのようなことは経験がありません。あまり怖がることはないと思います(大きな枝を切ったときは癒合材を塗った方が良いことに間違いはありません。)
新宿御苑で見かけたモミジの仕立物。一般的には自然樹形に仕立てられることが多いですが、熟練の庭師の手にかかれば、このような仕立て方も可能なようです。
オススメ度:★★★★★
丈夫で、風情のある樹木なので誰にでも、どんな庭でもお勧めできます。
暖地では紅葉がきれいになりにくいのが難点ですが、春の新芽時に色づくものを選べばよいでしょう。
品種によっては病気にかかりやすいものがあり、頻発するテッポウムシの被害も気になります。その点を考慮してもお勧め度は高いです。