小石川後楽園は東京都文京区にある特別史跡・特別名勝の大名庭園。水戸黄門こと水戸光圀が完成させた回遊式築山泉水庭園で、彼ならではの中国趣味・儒教的趣味や、水田などを取り入れた個性的な日本庭園になっています。一方で、ウメやシダレザクラ、カキツバタ、ハナショウブ、ヒガンバナ、紅葉など植物も豊富で見所が多いです。
江戸時代にいち早く完成した庭園であり、多くの大名庭園に影響を与えたといわれています。
入り口は飯田橋駅や後楽園駅から近い西門と、水道橋駅から近い東門の2か所。
ここでは江戸時代の回遊コースに従って、東門から入り、中央にある大きな池(大泉水)を中心に時計回りで主な見所を紹介します。
東門を入ってすぐの池と中島のある内庭。復元された唐門がポイントです。
夏はスイレン、秋は紅葉、冬は雪吊りが見られます。
木曽川に見立てた川の流れに沿って、鬱蒼とした樹林を歩きます。
シダレザクラや紅葉などに目がいきがちですが、木曾川付近の道の延段のほか、各所の石畳も味があります。日本庭園らしい様々な造作にも注目したいです。
庭園の中央に広がる大きな池(大泉水)。池の中心には蓬莱島が浮かびます。琵琶湖の景色を見立てて造られたとのことです。
木曽川付近の鬱蒼とした薄暗い樹林を抜けると、広々とした明るい池が広がる光景は小石川後楽園の大きな見所の一つです。
大泉水のほとりにあるモミジなどが植えられた広場。ベンチでゆっくり休めるようになっています。
ベンチに座れば大泉水を挟んで、徳大寺石と蓬莱島がよく見渡せます。
西口から入って正面に樹齢100年を超えるというシダレザクラがあります。2枚目は渡月橋に近いシダレザクラで樹勢はこちらの方が旺盛です。見頃はソメイヨシノよりやや早め。
シダレザクラの奥には、綺麗に刈り込まれた笹で覆われた築山(小慮山・しょうろざん)があります。周囲の樹木の葉が落ちる冬の方が、築山の盛り上がり具合がよく分かります。
築山手前の池には夏にハスの花が見られます。
京都の嵐山の景色を模した大堰川(おおいがわ)とそれに架かる渡月橋。
その隣には中国の西湖の景色を模した西湖の堤があります。
渡月橋から見る朱塗りの太鼓橋の通天橋。晩秋は周囲の紅葉が綺麗です。
紅葉は日当たりのよい外側から始まり、橋の周囲にあたる奥側が紅葉するのはシーズン終盤(例年12月初旬ごろ)になります。
通天橋の裏手から、築山の頂上にいたる道があるので見逃さないようにしましょう。
日本庭園の借景に東京ドームやビルが見える不思議な景色です。
橋が水面に映る姿を月に例えているそうです。この橋は江戸時代の庭園築造当時の姿をとどめています。なお、現在は橋を渡ることが出来ません。
水路や八橋などがある自然風な庭園部分。里山の景色のような雰囲気のよい所です。
晩春にはフジ、初夏にはカキツバタ、秋にはヒガンバナが咲きます。
光圀の好んだとされる梅がまとめて植えられています。
花の少ない早春に見頃を向かえます。
光圀は跡継ぎたちに実際の農作業を見学させて、その苦労を教えたとのことです。
現在でも地元の小学生によって5月に田植え、秋には稲刈り行事が行われています。
また、晩春には藤棚のフジ、秋にはヒガンバナが咲きます。
花菖蒲田では6月上旬ごろにハナショウブが見頃となります。
株数は控えめながら、背景が樹木のため自然な雰囲気です。
松が多く植えられた広場。明るく広々としているので休憩するのによい所です。
松原の片隅には九八屋(くはちや)という田舎風の建物があります。
大泉水の北側にある少し幅広の滝。
沢渡りがあり、水の流れを身近で感じられます。
園内には緩やかな傾斜を生かした、優し気な水の流れが多く見られます。
そのどれもが透明度の高い水で、川魚や淡水エビなどの姿も見つけることができます。
東京の中心部にありながら鳥もよく飛んできているようです。
水の浄化が進んだことや、流水が多いせいかカワセミの姿も見られます。
場所
東京都文京区後楽1丁目6−6
交通手段
■公共交通機関
JR総武線「飯田橋」駅東口より徒歩8分(西門)
JR総武線「水道橋」駅西口より徒歩5分(東門)
都営地下鉄大江戸線「飯田橋」駅より徒歩2分(西門)
東京メトロ東西線・有楽町線・南北線「飯田橋」駅より徒歩8分(西門)
東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園」駅より徒歩8分(西門)
■車
※専用駐車場なし。公共交通機関利用を推奨。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/koishikawakorakuen/index.html
庭園デザイン:★★★★★
園の南側は典型的な回遊式泉水庭園風ですが、北側には水路や田んぼなど変わった趣向があり面白いです。自然の地形を生かした高低差による滝や谷間なども大きな特徴で、全体的に都内にある他の大名庭園(浜離宮や六義園など)に比べて暗めな場所の割合が多くなっています。その分日本庭園らしい落ち着いた雰囲気で好ましいです。
植物充実度:★★★★
有名なシダレサクラや紅葉はもちろん、各季節ごとに花がそこそこの規模で見られるのは良いところです。個人的なおすすめはハナショウブとヒガンバナ。植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★★
サクラや紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。それ以外の季節はゆったり散策するのに向いています。
園内には涵徳亭(かんとくてい)という食事処があり、ランチや軽飲食が楽しめます。
近くには東京ドームシティがあるので遊べる場所はありますし、庭園は山手線の中心部にあるので、ここから東京や新宿、上野、池袋などに行くのも時間はかかりません。
混雑度:★★★★
シダレザクラや紅葉の最盛期はとても混雑します。シダレザクラや紅葉をゆっくり観賞したいなら平日に訪問するなど工夫しましょう。それ以外の季節は酷く混雑することは少ないです。
落ち着いて庭園を楽しみたければ、新緑やフジの花が美しい初夏や、ハナショウブやアジサイが見頃を向かえる梅雨、ヒガンバナが咲く秋もお勧めの季節になります。
施設内は広く、オープンスペースもそこそこあり、混雑時でもゆっくりできる場所はあります。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、飯田橋や水道橋駅から歩いていけるので非常によいです。特に大江戸線の飯田橋駅からは歩いてすぐたどり着けます。
車の場合、専用の駐車場はなく、周辺のコインパーキングなどを利用することになります。特別な事情がなければ公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★★
落ち着いた雰囲気の王道の日本庭園といった趣です。園内には池や滝、小川、谷間などの他、さらに中国・儒教趣味もあり様々な要素がありますが、全体としてよく調和されています。花の見所も多く、それぞれボリュームがあります。また、樹木も豊富で森林浴感覚で散策できるのも貴重です。
周辺は東京ドームなどが建つにぎやかな立地。歓声や車の音が多少聞こえてきますが、気になるほどではありません。
備考1:暗めの場所では夏~秋に蚊が多いので注意。虫除けを持参するとよいでしょう。
備考2:サービスセンターや集会所のある西門の方がメインの入口となっていますが、東門ができたことで、唐門から木曽川を辿り大泉水にいたる、陰から陽へと移り変わる本来の回遊コースを歩けるようになりました。正式ルートにこだわる方は一度は東門を利用して歩いてみるとよいでしょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(シダレザクラ、ソメイヨシノ)
晩春(新緑、ツツジ、フジ)
初夏(新緑、カキツバタ、スイレン)
梅雨(ハナショウブ、アジサイ)
秋(ヒガンバナ)
晩秋~初冬(紅葉)