殿ケ谷戸(とのがやと)庭園は、東京都国分寺駅のすぐそばにある日本庭園。実業家の別荘から三菱財閥の岩崎家所有を経て、開発の危機から市民運動により保全された経緯があります。
国分寺崖線という武蔵野台地の河岸段丘(かがんだんきゅう)の高低差を利用した回遊式林泉庭園となっています。また、晩秋の紅葉の美しさにも定評があります。
庭園は高台に位置する芝生部分と、崖地になっている池側を結ぶ庭園となっています。芝生を横切って池側に行く園路がないことが奥ゆかしい雰囲気を作り出しています。
園内は特に順路はありませんが、ここでは大芝生の分岐から反時計回りで主な見どころを紹介します。
国分寺駅南口から歩いてすぐの正門を入って、まず見えてくるのが中門。国分寺駅前の雑踏が嘘のように静まり、空気も変化したように感じます。
中門をくぐって、売札所までの園路にはモッコクの並木が見られます。売札所で入園料を払って有料エリアに入ります。
庭園内に入ると、まず美しい芝生が広がる洋風庭園があります。
周囲に植えられた様々な樹木もよく管理されています。
晩秋になると芝生は色あせていきますが、周囲のイロハモミジが鮮やかに紅葉します。
武蔵野の樹木を代表するケヤキの整った樹形も美しいです。
芝生を横目に見つつ歩くと、萩のトンネルと藤棚が見えてきます。
花期は萩のトンネルが9月中旬頃、藤棚が4月下旬〜5月初旬頃になります。
ウメやハナモモなどが咲く小さな花木園(かぼくえん)。
見ごろは早春〜春ですが、他の季節にも山野草を中心に様々な花がみられます。
竹林(孟宗竹)と、アカマツやカエデに囲まれた小路。
斜面側には下草にクマザサが植えられています。
晩秋には斜面側に植えられたモミジが紅葉して美しいです。
ハケ(崖線・がいせん)からの湧水を利用した池。
周囲の樹木が被さるように茂って、落ち着いた雰囲気をつくっています。
紅葉亭から見下ろした景色も見所です。
初夏から秋の緑濃く落ち着いた景色と、晩秋の短い間に見せる鮮やかな紅葉。
数奇屋造り風の茶室。開放された休憩スペースがあり、池を見下ろしつつゆっくりできます。
元は岩崎家の別荘であった洋館。その一部は展示室となっています。
内部では庭園の歴史や、園内の自然について学ぶことができます。
場所
東京都国分寺市南町2-16
交通手段
■公共交通機関
JR中央線・西武線「国分寺」駅より徒歩2分。
■車
国分寺駅周辺の民間パーキングを利用。
(専用の駐車場はありません)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index036.html
庭園デザイン:★★★
武蔵野の河岸段丘の高低差を利用した変化のある構成が楽しめます。
また、大正以降に造園されたとあって洋と和が融合した庭園となっており、高台側の洋風の芝生広場と、低地側の和風の池、その間の斜面に植えられた樹木や下草が、バランスよく収まっています。
同じように敷地の高低差を利用し和洋の庭園を併せ持つ旧古河庭園を、コンパクトで自然風にした印象があります。
植物充実度:★★★
イロハカエデが多く新緑や紅葉の時期はとても美しいです。他には小規模ながらウメやフジ、ハギなどの花木や、カタクリなどの山野草が見られますが、遠方からならカエデが美しい時期がおすすめ。
植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★
紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。
一方で、園内には茶店や売店等はなく、娯楽施設は乏しいです。
国分寺駅に近く、食事に困ることはありません。
混雑度:★★★★
紅葉の最盛期は混雑します。園内は狭く混雑感は強いです。オープンスペースも多くありません。ゆっくり観賞したいなら朝方や平日に訪問するなど工夫しましょう。
それ以外の季節は比較的ゆっくり観賞することができるでしょう。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、 アクセスの良い国分寺駅のすぐそばにあるので、交通の便は非常に良いです。車のない方も安心して訪れることができます。
車の場合、専用の駐車場はありません(周辺のコインパーキングを利用)。特別な事情がない限り公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★
都心にある大名庭園に比べれば面積はやや狭いものの、見所がまとまっている日本庭園。また、イロハカエデの木が多く、新緑や紅葉の時期は特に美しいです。そのかわり花木や草花の数はやや少なめ。
駅からのアクセスの良さは大きな魅力となっています。保全活動された方々に感謝。
備考:夏から秋にかけて池周辺で蚊が多いので、虫よけを持参したいです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
初夏(新緑)
晩秋(紅葉)