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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

天龍寺・宝厳院の庭園

天龍寺は京都の嵐山にある臨済宗の寺院。その境内には夢想国師作庭で、日本で最初の特別名勝に指定されている池泉回遊式の曹源池庭園があります。他にも百花苑やしだれ桜など植物の見所が多く、京都にある有名寺院の中でも庭園散策が楽しい場所になっています。
すぐ近くにある天龍寺の塔頭(たっちゅう)寺院であり、同じく庭園が美しい宝厳院(ほうごんいん)も併せて紹介します。宝厳院は季節によっては拝観できない時期があるので注意しましょう。

天龍寺

天龍寺の入口


京福電鉄の嵐山駅のすぐ近くにある天龍寺の入口。こちら以外にも桂川沿いの道からもアクセス可能。また、北門のある竹林の小路側からも拝観できます。

庫裏


大きな切妻の屋根と、三角形になった白壁に梁が入った特徴的な建物の庫裏。庫裏内部には参拝料を払える庫裏受付があります。庭園だけでなく諸堂(大方丈・書院・多宝殿)内部も拝観する場合はこちらを利用しましょう。
今回は諸堂を巡った後、庭園に入るルートで紹介します。何度も訪れたことがあるなら諸堂は省略して庭園のみを巡っても良いですが、初めての天龍寺訪問なら諸堂内部も一緒に拝観した方が、より庭園への理解が深まると思います。

大方丈と、大方丈内部から見る庭園



大方丈は天龍寺で一番大きな建物で、西面からは曹源池庭園を見渡せます。
建物内部からは、庭園の園路から見るよりも一段高い位置から観賞できるのがポイントです。

小方丈(書院)と、小方丈から見る庭園


法要など様々な用途で利用される小方丈。
こちら側からも、園路とは違った印象の曹源池庭園を眺めることができます。

渡り廊下と、廊下東側にある庭


小方丈から多宝殿へは渡り廊下を歩いていきます。その東側には祥雲閣(しょううんかく)と甘雨亭(かんうてい)という茶室があり、茶室の前は小川が流れる茶庭が広がっています。

多宝殿


渡り廊下を上りきった先にある祠堂(しどう)。比較的新しく建てられた建物になります。春には多宝殿前の広縁からシダレザクラを観賞できます。
ここで諸堂の拝観は終了。庭園内部を巡るためにいったん庫裏受付に戻って外に出ましょう。

庭園受付


庫裏の東側にある庭園受付。庭園のみに入る場合はこちらで参拝料を払います。

曹源池庭園



中央にある曹源池と、その周囲にある樹木や水の流れ、石組みなどが見所です。

龍門の滝


池の奥、中央付近に見える2つの巨石からなる枯山水の滝。
龍門とは中国の登龍門という故事からきています。

多宝殿と、周囲のしだれ桜


小方丈の脇から渡り廊下に沿って階段を上がっていくと、多宝殿前の広場にたどり着きます。
このあたりは春に咲くしだれ桜が美しいです。

百花苑


いったん池を離れて北側にある百花苑に向かいます。
百花苑は文字通り様々な花木や草花が植えられており、季節ごとに色々な花を楽しめます。

北門受付と、竹林


百花苑の奥には北門受付があり、有名な観光名所である竹林の小路に抜けられます。また、竹林の小路側から入場することもできるので覚えておきましょう。ただし、再入場はできないので注意。
今回は北門から出ずに引き返しますが、その引き返す道の右手には竹林の小路につながる竹林が広がっています。

望京の丘


百花苑と多宝殿の中間付近にある階段を上ると望京の丘にたどりつきます。
境内をよく見渡せる場所になっており、しだれ桜や紅葉の時期は特に見所があります。

曹源池の裏手にある散策路


小川が流れ、苔や樹木が観賞できる小路。特に春に咲く落葉ツツジが見所です。
散策路を道なりに進めば、龍門亭という精進料理を出す建物を右手に見ながら庭園受付付近まで戻ってこれます。
ここで天龍寺の庭園紹介は以上となり、天龍寺を出て南にある宝厳院を目指します。冒頭でも記した通り宝厳院は季節限定公開のため、公式ホームページ等で事前に確認しましょう。

宝厳院

宝厳院山門(庭園受付)


庭園受付を兼ねた、質素な雰囲気の宝厳院山門。周囲にはモミジが植えられ、特に紅葉の時期は美しいです。園内には順路があり、小路を時計回りで巡れば自然と見所にたどり着きます。

獅子吼(ししく)の庭


宝厳院の庭園「獅子吼の庭」は、策彦周良禅師によって作庭された嵐山の景色を取り入れた借景回遊式庭園。獅子吼とは「仏が説法する」という意味であり、庭園内を散策し五感で庭を感じることによって、説法と同様に心が癒されるとされています。
現在は樹木が育ったためか借景を望める場所は少ないですが、その分、庭園内部の新緑や紅葉、花木、苔が楽しめます。

三尊石・苦海・獣石


平成に入って作庭されたこの庭の構成は、獅子の咆哮に諭され先を競って苦海(現世、人間界のこと、丸い黒石で表現)を渡り釈迦如来(三尊石で表現)のもとに説法を拝聴しに行く獣(十二の干支)を表しているとのことです。

豊丸(ほうがん)垣と、宝厳院垣


ユニークな形状の豊丸垣(写真1枚目)。
写真2枚目は竹の小枝を下向きに重ねた垣で、蓑垣と呼ばれています。耐久力を増すために上部に屋根がついていますが、宝厳院のオリジナル仕様とのことです。

獅子岩


獅子の姿に似ているとされ名づけられた巨石。獅子吼の庭でよく目立つ存在の一つです。
実際に横から見ると伏せた獅子の形をしています。

モミジの紅葉


新緑や紅葉などモミジが見頃の時期に合わせて拝観期間が設定されていますが、特に紅葉の最盛期は美しい景色が観賞できます。

花木や樹木


モミジ以外にも、サクラやシャクナゲ、ツツジ、アセビなどの花木や樹木がバランスよく植えられています。春から初夏の時期は見所が多いです。


モミジや花木も綺麗なのですが、その下を彩る苔の美しさも見逃せません。
添景物や巨石、樹木に着生した苔も年月を感じさせてくれます。

施設の概要

場所
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68(天龍寺)。
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36(宝厳院)。

交通手段
■公共交通機関
京福「嵐山」駅から徒歩1分。
JR「嵯峨嵐山」駅から徒歩約13分。
阪急「嵐山」駅から徒歩約15分。
バスの便もあり、公式サイトを参照のこと。
■車
京都縦貫自動車道「沓掛IC」より約30分。
名神高速道路「京都南IC」より約35分。
駐車場あり(有料)

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
天龍寺:http://www.tenryuji.com/
宝厳院:https://hogonin.jp/

My impression

庭園デザイン★★★★
天龍寺の曹源池庭園は方丈の広縁や座敷から見る観賞式庭園という側面と、池泉回遊式庭園として園路から見た眺めの両方が楽しめるのが特徴といえるでしょう。嵐山の借景の存在も大きいです。また、その他の庭もよく管理されており散策が楽しいです。
宝厳院はあまり格式張っていない、癒される親しみやすい庭になっています。

植物充実度★★★
主な植物の見所はシダレサクラと紅葉で、最盛期にはとても美しい景色を見ることができます。他にも百花苑などで季節な花が見られます。冬以外なら苔も美しいです。植物の管理状態は良好。

娯楽度★★★★★
シダレザクラや紅葉の時期は誰にでも勧められます。それ以外の時期も歴史ある京都の寺院として観賞できます。周辺は嵐山の観光地なので事前に他の見所もチェックしておくとよいでしょう。
庭園が好きなら近隣にある大河内山荘庭園も一緒に訪れるとよいでしょう。こちらもサクラや紅葉の時期が非常に美しいです。

混雑度★★★★★
サクラや紅葉の時期は非常に混雑しやすく落ち着いて観賞することは難しいでしょう。境内は広めですがオープンスペースはそれほど多くありません。特に、紅葉シーズンの宝厳院は園路が渋滞しやすいです。初夏から夏や冬は比較的静かに散策できるでしょう。

交通の便★★★★★
公共交通機関利用の場合、京福の嵐山駅から近いため非常に良いです。また、やや離れている他路線の嵐山の駅も、渡月橋を渡る桂川沿いの道(阪急嵐山駅)や、京都らしい商店が点在する閑静な住宅地の道(JR嵯峨嵐山駅)を歩いて行けるのでそれほど苦ではありません。
車の場合、やや広い駐車場があり閑散期は問題ありませんが、桜や紅葉、行楽シーズンは周辺道路や駐車場がとても混雑します。特に紅葉の時期は公共交通機関の利用を推奨します。

総合満足度★★★★
京都の観光地としてのイメージが強いですが、どちらも回遊式庭園としてしっかり散策が楽しめる庭園になっています。寺院内にある庭園のため宗教色は多少ありますが、全体的には伸びやかで親しみやすい雰囲気になっているのも好印象。
サクラや紅葉の時期が一番お勧めですが、その時期は非常に混雑しやすいのが難点で評価にも影響を与えています。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
3月末〜4月初旬頃(シダレザクラ、落葉ツツジ、シャクナゲ)
初夏(新緑)
晩秋(紅葉)
冬以外(苔)

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