弘前城のある弘前公園は全国的なサクラの名所として知られており、その名に恥じない非常に量感のある景色を見ることができます。サクラ開花最盛期は園内全部が見所といえるほどなので、ここでは観光名所や史跡的な目線というよりも、庭園的な景観に焦点を当てて見所を紹介します。
また、弘前公園内にある弘前城植物園と、弘前公園のすぐそばにある藤田記念庭園も併せて紹介します。
園内は広く、史跡が各所に散らばっており、弘前の本丸と北の郭(くるわ)周辺が有料区域になっています。ここでは追手門から入り二の丸から本丸、四の丸、西濠と巡って植物園南案内所に戻ってくるルートで主な見どころを紹介します。
市役所や市立観光館、主要バス停がある正面玄関ともいえる公園入口の追手門。いきなり素晴らしい量感のサクラを観賞できます。
以前はスギ材で造られていたためこの名がありますが、現在はヒノキ材によって架け替えられています。中濠に植えられたサクラとの共演が楽しめます。
ここからは有料ゾーン。本丸にある天守は、江戸時代に建てられた天守としては東北地方で唯一現存するもので重要文化財に指定されています。
※現在、石垣修理のため本来の本丸の場所とは異なる位置に移動しています。元の位置に戻るのは早くても2025年以降を予定しているとのことです。現在の場所で天守が見られるのは今のうちで逆に貴重かもしれません。
本丸の西側は崖になっており、岩木山方面の視界が開けます。よく晴れた日はまさに絶景です。
弘前城は1628年に改称する以前は鷹丘城(高岡城)と呼ばれており、その名残として橋の名がついたと考えられています。サクラ最盛期に本丸戌亥櫓跡から見下ろす鷹丘橋は非常に美しいです。
公園の一番西側にある濠で、周囲にはたくさんのサクラが植えられています。
春陽橋は市民の利便性向上のために西濠に架けられた橋。すっかり西濠の景観の一部となっています。
西濠の東側にある園路は桜が両側に植えられています。写真は人波が途切れた一瞬の景色で、実際には多くの人が行き交います。
サクラの開花最盛期などにはライトアップも楽しめます。派手な照明効果に頼らない、サクラの数と美しさを前面に出した贅沢なライティングは圧巻です。
弘前公園にある有料の植物園。様々なテーマで区分けされ各季節毎に花が楽しめます。植物園内でも多くのサクラが見られるので、弘前公園の喧噪に疲れたら、こちらでのんびりサクラを楽しめます。また、城菊と紅葉まつりの際は本会場となるのでぜひ立ち寄りたいです。
園内は広く、各テーマの庭ごとに整形に区分けされています。ここでは南案内口から入り反時計回りで主要な見どころを紹介します。
青森と秋田の両県に広がる白神山地の植生を再現したコーナー。たくさんのブナが植えられています。
津軽一帯で広まった庭園流派である大石武学流宗家が作庭した庭。構成が一定のパターンに沿って造られているのが特色です。有名な盛美園も大石武学流によるもののひとつです。
芝生が広がる広場。周辺にはサクラやハギ、ボタンなどが植えられています。また、城菊と紅葉まつりの際は様々な展示が楽しめます。
滝石組が見所の枯山水庭園。現天守閣が再建された際に築庭したもので、一度は荒廃したものの修復されて今に至ります。
植物園から見る辰巳櫓。天守から見て南東にあるためこの名が付きました。
サクラの開花期や、城菊と紅葉まつりの際は臨時の展望台が設置されて絶好の撮影スポットになります。
弘前公園を市民会館口から出てすぐのところにある庭園。弘前出身の実業家であった藤田謙一氏が大正八年に別荘を構える際につくらせた庭園で、その後弘前市が整備して今に至ります。東北にある庭園としては大規模なもので、庭園好きなら弘前公園を訪ねた際にぜひ立ち寄りたい場所です。
洋館や和館、シザレザクラが咲く芝生広場のある高台部と、滝や池、茶室がある低地部に分かれています。ここでは高台側の東案内所から入って低地側の西案内所に抜けるルートで紹介します。
大正ロマンを感じる洋館で内部の造作が楽しめます。喫茶室もあります。
書院造の和館も内部を見学できます。
立派なシダレザクラ。開花期はほぼ弘前公園のサクラと同じです。
和館横からは岩木山の雄大な山容を眺められます。サクラ開花期にはちょうど良い具合に山に雪をかぶっていることが多いです。
落差の大きい立派な滝。赤い反橋が架かっています。崖に植えられた植栽も見所です。
池の周囲は築山や灯籠などの添景、架けられた橋など変化の多い景色です。池の奥に見えるのは茶室で、通常は内部には入れませんが庭園の添景となっています。
また、池のそばに植えられたシダレサクラも美しいです。
場所
青森県弘前市下白銀町1(弘前公園、弘前城植物園)
青森県弘前市大字上白銀町8−1(藤田記念庭園)
交通手段
■公共交通機関
JR「弘前」駅からバスで約15分。「市役所前公園入口」「市役所前」等で下車。
■車
東北自動車道「大鰐弘前IC」から約30分。
駐車場あり(有料)
※公園専用の駐車場はなく、周辺の駐車場を利用。場所は公式HPなどで要確認。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.hirosakipark.jp/(弘前公園)
URL:http://www.hirosakipark.or.jp/hujita/index.html(藤田記念庭園)
庭園デザイン:★★★
弘前公園は歴史的な経緯によって史跡と公園、観光名所が高次元で融合した施設として興味深いです。
弘前城植物園はテーマが整形に細かく区切られており、デザインとしては好みが分かれるところ。一方、個々のテーマガーデンは自然な雰囲気でまとめられているものが多いです。
藤田記念公園は高低差のある敷地を生かしたデザインで、滝とそれにつながる池周辺の雰囲気が良いです。
植物充実度:★★★★★
サクラの量感・質は素晴らしいです。菊や紅葉の時期も美しいです。他の植物の見所はそれほど多くありませんが、植物園は初夏から秋ならば多くの花が見られるでしょう。管理状態は良好で、サクラの状態の良さにも注目したいです。
娯楽度:★★★★★
津軽のみならず、全国的な観光名所として知られているとおり、サクラの開花最盛期ならば誰にでも勧められます。ライトアップや出店もありお祭り的な楽しみもあります。紅葉の時期もサクラには劣るものの同様に楽しめるでしょう。それ以外の時期は市民の憩いの場としての雰囲気が強くなります。
藤田記念庭園の洋館の喫茶室や、庭園近くにある旧第八師団長官舎の洋館を利用した喫茶店(スターバックスコーヒー)はお洒落なのでチェックしていくとよいでしょう。
混雑度:★★★★★
サクラ開花最盛期の混雑はかなりのもの。団体が多く平日でも混雑を避けるのは難しいです。お祭り気分で訪れるのが良いと思います。紅葉最盛期もやや混雑します。ただ、園内は広いので混雑が激しくてもほっと出来る場所はあります。それ以外の季節はのんびり散策が楽しめるでしょう。
交通の便:★★★
公共交通機関利用の場合、弘前駅から比較的多くバスが出ているので良いです。
車の場合、公園独自の駐車場がなく、公園外にあるいくつかの駐車場もキャパが少なめです。サクラ最盛期は地元民でなければ公共交通機関利用を推奨します。閑散期に訪れる場合は問題ありません。
総合満足度:★★★★
弘前公園は一度は訪れたいサクラの名所。史跡と融合した景色は独自のもので、好みを超えた迫力があります。弘前城植物園はサクラはもちろん紅葉の時期も良い雰囲気。藤田記念庭園は洋館や和館など見所の多い庭園で、サクラや紅葉の時期以外でも十分楽しめます。
注意点として、サクラ最盛期の混雑は非常に激しく、花の観賞というよりもお祭りとして遊びに来ている人も多いため、そのあたりは承知したうえで訪ねたいです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(サクラ開花最盛期)
晩秋(キク、紅葉)