環境省所管という珍しい公園。新宿駅の近くという立地を考えると驚きの空間が広がります。サクラや紅葉の名所として有名ですが、西洋庭園や日本庭園、温室、巨樹、自然風の林、菊花壇展などその他の見所も多く、広大な園内の散策が楽しめます。
入園料が必要で、道具を使った遊びや自転車、ペット、アルコール類の持ち込み等が禁止されており、ゆったりと散策を楽しむことができるのも有り難いです。
入口は全部で3つ。どの入口から入っても問題なく、順路も特にありません。園内は枝道が多く、季節ごとの見所に直接向かったり、気が向くままに散策するのも良いでしょう。
ここでは園内の大きなエリアごとに主な見どころを紹介します。
広大な芝生広場の周りをサクラやユリノキ、ケヤキ、ハルニレ、各種針葉樹など大きくなる樹木で囲んでいます。ダイナミックな風景が広がり、落葉樹が多い明るい雰囲気とともに開放感があります。
サクラが多く植えられていますが、その中でも特にサトザクラ類は素晴らしいものがあります。写真は1枚目は「フクロウジュ」(4月中旬頃)、2枚目は「ヨウコウ」(3月下旬頃)
ソメイヨシノも数多く植栽されています。開花最盛期はかなりの人出で混雑します。
落葉樹が多く秋の紅葉が楽しめます。イチョウの他メタセコイアやカエデ類などが色づきます。
ひときわ目立つユリノキ。樹木が本来もつ樹形が美しいです。
他にもハルニレやメタセコイア、ケヤキなどの巨樹が観賞できます。
整形式庭園での注目は初夏と秋に咲く約500株のバラ花壇。
特に、春バラ最盛期の5月にはバラにちなんだイベントが催されることもあります。
整形式庭園は綺麗に整備されていますが、風景式庭園よりも見所はやや少なめ。
それでもバラやツツジの咲く時期は楽しめると思います。
バラ花壇の両側にはプラタナスの並木道が伸びています。
特に落ち葉が積もる晩秋は雰囲気があります。ベンチが多く休憩にも良いです。
日本庭園は明治時代後半から整備されたということで歴史は浅いですが、風格は十分。
台湾在留邦人からの寄付で建設されたという、中国風建築の御涼亭から日本庭園の全景が眺められるので、まず寄ってみるとよいでしょう。
流れをさかのぼると大きな池にたどり着きます。池にかかる橋が見所。
庭園全体としては御涼亭以外はオーソドックスな印象ですが、管理状態がとても良いです。
母と子の森は自然や生物と触れ合うことを目的に作られていますが、自然風の林として十分観賞価値があり、散策するのが楽しい空間となっています。
武蔵野の雑木林といった雰囲気。土の道が足に優しいです。
サクラや紅葉に目を奪われがちですが、山野草の花が咲く自然な雰囲気も評価したいです。
2012年に新設されたガラス張りの温室。
内部はスロープや交差のある立体的な動線になっています。
特に絶滅危惧種の保存、展示に力を入れています。
橋から見下ろす熱帯池沼の植物。熱帯スイレンやオオオニバスの仲間が見所です。
晩秋に行われる大きなイベントの一つが菊花壇展。皇室ゆかりで歴史があり、御苑内に菊栽培場が設けられているほど力の入った展示となっています。
日本庭園内の各所に菊花壇を設け、庭園を周遊しながらそれぞれの菊花壇を観賞するという珍しいスタイルで、見所がバラけているため混雑感も抑えられています。
写真は小川のそばに造られた「懸崖造り(けんがいづくり)花壇」。
各花壇はどれも見所がありますが、写真1枚目の「大作り花壇」と、写真2枚目の「大菊花壇」は展示の目玉といえます。
特に、大作り花壇は1年がかりで枝数を増やしなら、1株で数百輪の花を咲かせるということで、迫力がありつつも日本独特の繊細さや、きめ細かさも感じさせます。
下の池周辺はサクラや紅葉する樹木が多く、見ごたえがあります。
ここは遅咲きのサトザクラよりもソメイヨシノなどの早〜中咲き種が多いです。見ごろの時期がズレるので、公式の最新開花情報を確認して出かけましょう。
斜面にツツジが植えられています。上にのぼると見晴らしもよいです。桜園地のすぐそばにあり、サクラとの共演も楽しめます。
春には新緑、秋は紅葉が楽しめます。
モミジ山の紅葉最盛期は非常に遅く、例年12月中旬ごろになります。
江戸時代に完成した歴史の古い庭園「玉藻園」の一部が残されています。現在は先にあげた日本庭園に隠れて目立ちませんが、こちらもよく管理されています。
庭園とは異なり、各所にある施設は温室を含め大きく様変わりしました。
写真1枚目は2022年に開館した新宿御苑ミュージアム。新宿御苑の歴史と文化を分かりやすく展示した施設となっています。
写真2枚目はすっかり新宿御苑の目玉の一つとなったレストハウス内のスターバックスコーヒー。他の施設も建て替えられたり改装したりと、大きく様変わりしています。
場所
東京都新宿区内藤町11
交通手段
■公共交通機関
東京メトロ丸の内線「新宿御苑前」徒歩5分(新宿門・大木戸門)
都営地下鉄新宿線「新宿三丁目」徒歩5分(新宿門)
JR総武線「千駄ヶ谷」徒歩5分(千駄ヶ谷門)
都営地下鉄大江戸線「国立競技場」徒歩5分(千駄ヶ谷門)
■車
首都高速道路4号新宿線「外苑出入口(IC)」から約5分。
大木戸門側に駐車場(有料)あり。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://fng.or.jp/shinjuku/
庭園デザイン:★★★★
西洋庭園や日本庭園、自然風樹林、温室など様々なエリアがあり、それぞれに見所がありますが、全体としては「みどりと親しむ公園」というコンセプトが統一されている思います。各エリアは余裕のある配置で違和感なく散策できるのも長所です。
風景式庭園や整形式庭園はその規模の大きさから、一般的な庭園のイメージからやや異なり、ダイナミックな景観を楽しめる公園的な場所。好みは分かれるかもしません。
植物充実度:★★★★★
サクラやツツジ、バラなどの花木の他、紅葉する樹木、巨樹、野草、温室の植物など多種多様な植物を観賞することができます。秋にはキクや洋ランの展示もあります。植物が好きな方であれば、一日で回り切れないほど興味関心がわく施設だと思います。
一方で、園芸的な草花類が植えられた花壇等は少なく、花木の開花最盛期や紅葉の時期以外では地味な印象を持つかもしれません。
植物の管理状態は非常に良好です。
娯楽度:★★★★★
サクラ、紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。初夏の新緑やツツジの開花期もおすすめ。これらの季節なら花や緑に興味が薄くても楽しめると思います。それ以外の季節は派手な景色は望めず、ゆっくり静かに散策したり寛いだりするのに向いています。
園内にはお洒落なカフェやレストラン、茶室などがあり飲食には困りません。ただ、全体的に綺麗で洗練されたのは良いのですが、気軽に頼める売店的な店舗が無くなってしまったのは少し残念です。
立地的に言えば新宿の歓楽街に歩いて行ける距離にあり、楽しめる場所はいくらでもあるでしょう。
混雑度:★★★★★
芝生部分が広く、緩和はされていますが都心なのでかなり混雑します。特にサクラの開花時期は朝早く、または平日に出かけるなど工夫しましょう。紅葉の時期も混雑しやすいです。
なお、これらの時期の飲食店の一部は、行列ができるほど混雑することもあります。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、駅すぐの立地のため非常に良い評価。
車の場合、大木戸駐車場が利用でき、都内の施設としては車のアクセスも悪くないのですが、サクラや紅葉の最盛期、大型連休中などはすぐ満車になってしまうので注意。前述の季節は公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★★
とても広い園内。場所柄を考えればそれだけでも驚きの空間です。見所が多いですが、個人的なおすすめはサトザクラの開花期。新緑の頃も都心とは思えない瑞々しい景色が観賞できます。
遊具や自転車、ペット、アルコール類の持込が禁止なのは、ゆっくり散策したい向きにはありがたいです。国営公園はこのあたりがしっかりしている所が多く助かります。
備考1:以前は「桜を見る会」という内閣総理大臣主催の行事がサトザクラ最盛期にほぼ毎年執り行われており、その日は一般の入場はできませんでした。現在は中止となっています。
備考2:温室の入退館時間が、御苑の入退園時間と異なり少し短いので、早めに温室を見学しておくとよいでしょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(ソメイヨシノ)
春〜晩春(サトザクラ、ツツジ)
初夏(新緑、ツツジ、バラ)
晩秋(菊花壇展)
晩秋〜初冬(紅葉)