神戸市立森林植物園は兵庫県神戸市にある自然公園風の植物園。六甲山の自然を生かしつつ、日本や世界各地の様々な樹木や花木が植栽されています。
特に梅雨の季節に咲くアジサイが有名で、植栽数も品種数もかなりのもの。他には秋の紅葉も大きな見どころです。それ以外の季節も様々な花木や野草の花が楽しめます。
ここでは、遠方から訪れても満足感が高いアジサイや紅葉の季節の主な見所を紹介します。
非常に広い園内。園路は舗装された広い道から、登山道のような細く舗装されていない道まで様々です。基本的には、地図上の黄色く塗りつぶされた幹線園路を歩き、見所のエリア内では細い道にも入って観賞するというスタイルが良いと思います。
順路は特にありませんが、ハイキング目的でなければ、くまなく巡るよりも季節に合わせて巡る場所をある程度絞った方が良いでしょう。
園内は非常に広いうえ、脇道が入り組んでいます。初めての訪問ならしっかり地図を確認しながら巡りましょう。園内には、今どこにいるか分かるように番号が振られた「いまどこNO.」が建っているので、散策時の現在地確認の目安になります。
ほかにも入口はありますが、展示館やバス停があり、広い駐車場もある正面入口の利用者が大半です。正面入口を入ってすぐには、メタセコイアが植えられた雰囲気の良い広場があります。
園内の植物の紹介のほか、各種イベントや特別展が開かれることもある展示館。世界一の巨木であるジャイアントセコイアの輪切りも見所です。
園内の様々な情報が得られ、地図やパンフレット等もあるので、散策前に軽くチェックしてみると良いでしょう。飲み物の確保もお忘れなく。
森林展示館の正面向かって右側の、あじさい坂や長谷池方面に向かいましょう。
ここでは便宜上、南側エリアとしています。施設のメインエリアといえます。
長谷池に向かって下り坂になっていますが、その両端にアジサイが植栽されています。
一番多くみられるアジサイはブルーの花が美しいヒメアジサイ。
世界各地の針葉樹や常緑広葉樹が多数植栽された見本園。その周辺の園路にもアジサイが多く植栽されています。特に雨上がりには鮮やかな色彩が楽しめます。
六甲山地に自生するヤマアジサイやコアジサイなどの野生種、アジサイの園芸品種など、様々なアジサイが植栽されています。樹林の下で自然に咲く姿が好ましいです。
緩やかな斜面になっており、上部には休憩舎もあってゆっくりできます。
長谷池の手前には周囲が開けた広場があり、休憩にぴったりです。
広場には森の売店があり、軽飲食を頼むことができます。
園の中心にある大きな池。四季折々の景色が楽しめますが、大きな見どころは夏のスイレンと、秋の紅葉です。
スイレンは池の南側や、奥にある島付近に多く見られます。アジサイの開花期とも見頃がかぶっているのでぜひ観賞しておきましょう。
池の周囲には、草も含め紅葉する植物が多く、最盛期には見応えがあります。
特に、池に反射する紅葉の美しさは一見の価値あり。風の弱い日がねらい目です。
のびのび育った、ラクウショウやメタセコイアといった針葉樹の紅葉も見事です。
姉妹都市や友好都市の提携を記念してつくられたエリア。各都市の雰囲気に合わせた植栽や、建造物が配置されています。
アジサイや紅葉が多くみられるわけではありませんが、雰囲気がよく広々としているので散策や休憩に寄ってみると良いと思います。
セコイアメズギ、ダイオウマツなどダイナミックな樹木が多いエリア。
赤く紅葉した樹木は北米原産のモミジバフウ。
シダレエンジュなど中国原産の植物が多く植栽されたエリア。
自然風のエリアが多い中で、やや象徴的な建造物が多いエリアとなっています。
ボダイジュやヨーロッパハンノキなどの北欧原産の植物が植えられたエリア。
2枚目の写真は六甲山でよく見られる霧。アジサイの季節は梅雨のため天気が悪化しやすいですが、幻想的な風景を楽しめる場合もあります。
ユーカリやブラシノキ等のオーストラリア原産の植物が植えられたエリア。比較的標高が高いこの植物園で冬越しできているのは意外とも思えますが、耐寒性の強い種類もあります。
南側の視界が開けて気持ちが良いです。
森林展示館に戻ってきても帰るのはまだ早いです。北側にある多目的広場方面に向かいましょう。
特に、バスで訪れた場合は見逃しやすいので注意。
展示館向かって左手にある道を辿り、西六甲ドライブウェイの下をくぐるトンネルを抜けて多目的広場方面に向かいます。車利用の場合は駐車場に戻るイメージです。
多目的広場の手前の道はメタセコイアの並木道になっています。
新緑も美しいですが、特に秋の紅葉が大きな見どころです。
多目的広場の南側外周路にある、あじさいの小路。
手前側に咲くのは北米原産種から作出された改良品種の「アナベル」。大型の手まりのような白花をたくさんつけるためよく目立ちます。花期が遅めで、春以降に伸びる新梢に花芽をつける等、一般的なアジサイとは異なる特徴をもっています。
アナベルの咲くエリアの奥側にもアジサイがあります。こちらには楚々とした印象の、様々なヤマアジサイやガクアジサイ、エゾアジサイが植栽されています。
手前に咲く青いアジサイはガクアジサイ系の「三河千鳥」。
広い芝生広場。イベントや遠足等がなければ混雑することは少ないので、こちらで休憩するのもよいでしょう。レジャーシートがあると便利です。
普段は非公開ですが、アジサイの季節には特別に公開されるエリア。
様々なアジサイの品種が植えられた畑。保存目的のため列植されているだけですが、個々の花をじっくり見るのには適しています。写真2枚目は青花で白覆輪咲きの品種「ありがとう」。
主に南方系のアジサイが植えられたエリア。イノシシ対策のため檻に囲まれています。
アジサイは比較的大型種が多く、量感があります。
場所
神戸市北区山田町上谷上字長尾1-2
交通手段
■公共交通機関
神戸電鉄「北鈴蘭台」駅から無料送迎バスで約10分。
※季節により時刻表に変動あり。詳しくは公式ウェブページを参照。
JR「三ノ宮」駅から神戸市バス25系統バス「森林植物園前」下車すぐ。
※三ノ宮からは春から晩秋の土日祝および、あじさいや紅葉の季節のみ運行。
■車
阪神高速道路7号北神戸線「箕谷IC」から約10分。
阪神高速道路3号神戸線「生田川IC」から山麓バイパス経由、約25分。
駐車場あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.kobe-park.or.jp/shinrin/
庭園デザイン:★★★★
自然を生かした全体的な雰囲気のよさが魅力。一方で、程よく管理もされており、アジサイをはじめとした花木や、カエデ類など紅葉する樹木の植栽も多く、観賞や散策が楽しいです。
幹線となる広い道は歩きやすくしつつ、細い枝道はまるで登山道のように整備を最低限として自然感を演出しています。また、展示館をはじめとした建造物も雰囲気を壊さないように配慮されています。
植物充実度:★★★★★
自然の植生も生かしつつ、様々な花木や樹木が見られます。特にアジサイの充実度は非常に高いです。樹林下で自然に咲く姿は単純な植栽数では測れない充実度があります。
植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★
あじさい散策期間後半(アナベルの咲く時期)や、紅葉最盛期は見所が多く娯楽度が高めです。それ以外の季節はゆっくり散策するのに向いています。
園内にはカフェがあり、軽飲食やランチも可能です。
敷地は六甲山の西側で、車ならば東側にある六甲山の観光も併せて楽しめるでしょう。バスだと周辺観光は難しいですが、北鈴蘭台駅から電車で有馬温泉方面に向かうのも良いと思います。
混雑度:★★★
あじさい散策期間後半や紅葉最盛期はやや混雑します。一方で、園内は非常に広く、オープンスペースも多いので混雑時でもゆっくりできる場所はあります。
交通の便:★★★★
公共交通機関の場合、北鈴蘭台駅からそこそこの頻度で無料の送迎バスが出ているので良い評価。ただ、アジサイや紅葉の最盛期はバスが混雑しやすいです。確実に乗りたいのであれば、駅にやや早めに到着しておくとよいでしょう。また有料ですが、三ノ宮駅からも土日祝等に季節バスの運行があるので利用を検討してもよいでしょう。
車の場合、広めの駐車場がありますが、アジサイや紅葉の最盛期は混雑しやすいので早めの到着を。
総合満足度:★★★★★
六甲山の自然や起伏を生かし、植物本来の姿を観賞できる植物園。一方で、明治中期までは大部分がはげ山同然だった六甲山地に、観光地開発も兼ねた日本初の森林植物園を整備したという歴史があります。このような経緯のためか、自然味が強すぎず程よく整備された、人にとって心地よい印象の自然風植物園となっています。個人的に、このような施設に魅力を感じるため評価は高くなっています。関東でいえば群馬にある赤城自然園に雰囲気が似ています。
また、アジサイという大きな見所の花を設けたのも良い点だと思います。遠方から訪れる動機として十分な量感があります。
季節を変えて訪れたいところですが、遠方から訪れるならやはりアジサイや紅葉の季節が良いでしょう。市街地からそれほど時間がかからない場所に、このような素晴らしい施設がある神戸市民が羨ましいです。
備考:あじさい散策期間の前半は、コアジサイなどのやや地味めなアジサイが多く、植物愛好家向けの季節となっています。見栄えのある景色を望むなら中盤から後半に訪れるとよいでしょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
6月下旬〜7月初旬(アジサイ)
7月初旬〜7月中旬(アナベル)
晩秋(紅葉)