京都府京都市左京区にある、明治・大正の元老である山縣有朋が指示し、小川治兵衛が作庭した庭園です。明るい芝庭の開放感と、軽快な水の流れを合わせた自然風の庭園になっているのが特徴で、近代日本庭園の先駆けといわれています。
入園受付後、母屋には靴を脱いで上がることができます。母屋から眺める庭の景色はまるで絵画のよう。座布団に座ってゆっくり庭を観賞できます。また、カフェでは別料金で和菓子付きの抹茶などを味わうことができます。
別の座敷から見た景色。こちら側は水の流れが近いです。
庭園は散策することが可能です。高低差はあまりないものの、曲線あり瀬落ちありで変化に富んだ水の流れが心地良いです。山縣は池よりも流れを好んだとのことです。
母屋前の日当たりのよい場所には開放的な芝庭が広がります。マツバウンランやネジバナなどの野花を切り取ってしまわないように、手作業で管理する時期もあるそうです。
作庭当初は芝だったカエデ林のグランドカバーですが、日当たりが悪く空中湿度が高いこともあり自然に生えた苔に覆われるようになりました。最初は苔を好まなかった山縣ですが、後に苔を愛でるようになったとのことです。
飛石で水の流れを渡ります。飛石は水面ぎりぎりに設置されており、水の流れを身近に感じられます。
沢飛石の上から振り返る園内の景色も美しいです。特に水面に映る各季節の樹木に注目。
園内最奥にある三段の滝。水の流れが始まる象徴を簡潔な形で造りだしています。
樹木に囲まれた雰囲気が良い茶室。
有料の貸切施設となっており、内部に入ることはできません。
数寄屋造りの母屋。広い縁側と、開放的なガラス窓が庭園とよく合っています。
冬は芝生が枯れて雰囲気が異なります。風情のある玄人向けな景色ではありますが、初めての訪問なら瑞々しい景色が楽しめる初夏から秋がお勧めです。
レンガ造りの洋館の1階では作庭の歴史が展示されています。
また、2階では要人との会談で使われた洋間を見学することができます。この洋間は無鄰菴会議が開かれたことでも知られています。
場所
京都府京都市左京区南禅寺草川町31番地
交通手段
■公共交通機関
京都市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約7分。
■車
タクシー等の公共交通機関利用推奨。
※駐車場はありません
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://murin-an.jp/
庭園デザイン:★★★★
見立てや象徴に依存しない、自然主義的な近代日本庭園の先駆けといわれる美しい庭園。芝庭の開放感と軽快な水の流れだけでなく、苔やカエデ林の新緑・紅葉など見所が多いです。
一方で、有料庭園としては敷地面積がやや狭く、ボリューム的に物足りなく思う場合もあるでしょう。
植物充実度:★★★
庭園デザインは近代的ですが、植物は苔やカエデ、アセビ、マンリョウなど従来の日本庭園的なものが多めです。管理状態は良好で、山縣の感性を大事にする庭園修復など、庭園管理者の意識の高さがうかがい知れます。
娯楽度:★★★
少人数で静かに観賞するのに向いています。
近くには南禅寺、京都市動物園、京都国立近代美術館等があり、一緒に観光コースに組み込むのもよいでしょう。
混雑度:★★★
紅葉時はやや混雑しますが、それ以外の季節も含め、他の京都の有名庭園のようにひどく混雑しないのは大きな長所です。
交通の便:★★★★★
交通の便は駅から広い道を歩いていけるため高評価。
一方で、駐車場はなく自家用車で訪れるような場所ではありません。
総合満足度:★★★★
京都には多くの庭園がありますが自然風の庭園は少なく、個人的に好みです。一方で、庭園は狭くただ歩き回るだけではボリューム不足と感じることも否めません。多少ゆっくり目に時間を取って、庭園ガイドの解説を聞いたり、座敷でのんびりできると満足度も上がるかと思います。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
初夏(新緑)
初夏〜秋(苔)
晩秋(紅葉)