徳川園は愛知県名古屋市にある日本庭園。徳川御三家の尾張藩藩主光友が1695年(元禄8年)に大曽根屋敷を造営を起源とし、様々な遍歴を経て2004年(平成16年)に再整備され開園しました。古い時代の遺構の多くが太平洋戦争の空襲により焼失してしまいましたが、現在は高低差を生かした立体感のある構成の池泉回遊式庭園として生まれ変わっています。
特に順路はないですが、一部の園路に一方通行の箇所があります。
ここでは黒門口から入園し、龍仙池を中心に反時計回りで巡り、虎の尾を上って大曽根の瀧に立ち寄りつつ、黒門口まで戻るルートで主な見どころを紹介します。
1900年(明治33年)に完成した尾張徳川家の邸宅の遺構で、総ケヤキ造りの立派な建物。太平洋戦争以前の多く遺構が失われた中で、連続する塀や脇長屋とともに、その被害を免れた建物のひとつです。
黒門や徳川美術館がある方の徳川園出入口。観光ルートバスのバス停やタクシー乗り場から近いです。最寄りの駅からは後述する大曽根口の方が近いですが、設えや配置を考えると、こちらが実質的な正門と呼べる位置といえます。
手前にある店は徳川園や徳川家にちなんだ土産物が販売されているショップで、帰りに立ち寄るとよいでしょう。
園内の立体的な造りを感じることができる虎仙橋(こせんきょう)。
橋の上からは園路に沿った渓流が見下ろます。
園内の大部分を占める大きな池。池の周囲に浮島や橋、渡し場など様々な見どころを配しています。
中国にある西湖の景勝地を模して造られた堤。
堤の周辺に植えられたシダレヤナギが水辺の雰囲気を盛り立てます。また、晩秋には背景のモミジが赤く紅葉し見栄えがします。
船小屋のある渡し場があり、池にいる鯉が盛んにエサをねだってきます。
池の水の透明度が高く気持ちが良いです。
もう一つの出入口。最寄り駅から徒歩、あるいは一般車の駐車場からだとこちらの方が近いです。
裏口感はありますが、特にこだわりがないのであれば、こちらから出入りするのも良いでしょう。
ボタンがまとまって観賞できます。見頃は例年4月中〜下旬ごろですが、近年は上旬には見ごろとなることも多いです。
なお、牡丹園以外の場所でも徳川園の園内や、徳川美術館の前庭に多くのボタンが見られます。
池の西側の高台に建てられた茶室。龍仙湖の見晴らし台になっているとともに、池側から見上げる際の点景としても重要な建物となっています。
紅葉の時期は特に見所があります。
尾張家江戸下屋敷(戸山屋敷)の庭園にあった龍門の滝を、現代風に再現した滝。
水量を変化させる仕組みがあり、滝が穏やかだったり激しかったりします。
池から続く渓流のような流れの形が、虎の尾を連想させることからついた名。
池に近い下流は緩やかな流れ、上流は岩の多い激しい流れとなっています。
虎の尾の最上流にある、落差6mで三段の滝。周囲は樹木が多く深山幽谷の趣があります。
この周辺の紅葉の見頃は遅く、初冬になったあたりになります。
池側に戻る際の園路から見た虎仙橋を見上げる景色。
龍仙湖に面するレストランやホールなどがある建物。コース料理が主なレストランに気軽に入ることはできませんが、隣接する和カフェでの軽食や、バルコニーからの滝の眺めを楽しむことができます。
黒門側の広場にある美術館。徳川家康の遺品を中心に、尾張徳川家由来の様々な大名道具を展示しています。国宝9件、重要文化財59件という数から分かる通り、質の高い展示を鑑賞できます。
尾張徳川家の旧蔵書を引き継いだ文庫で、こちらは無料で入館できます。
前庭には花壇があり、季節の花が見られます。
場所
愛知県名古屋市東区徳川町1001
交通手段
■公共交通機関
●大曽根口へ
JR「大曽根」南出口から徒歩10分。
名城線「大曽根」から徒歩15分。
名鉄「森下」から徒歩10分。
●黒門へ
市バス基幹2号系統「徳川園新出来」バス停下車、徒歩3分。
なごや観光ルートバスの利用も可。公式サイトを確認のこと。
■車
●北駐車場(地下)へ
名古屋高速1号楠線「黒川IC」から約15分。
名古屋高速都心環状線「東新町IC」から約15分。
名古屋第二環状自動車道「引山IC」から約20分。
駐車場あり(有料)
※一般車は北駐車場を利用。南駐車場は大型車と身障者用のみなので注意。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.tokugawaen.aichi.jp/
庭園デザイン:★★★
敷地の高低差や、既存の樹林を生かしたデザイン。大胆に配した海に見立てた大きな池と、東側の樹木が茂る渓谷や滝のある落ち着いた空間の対比が見所です。
一方で、虎の尾の流れや、龍門の滝のやや直線的なデザインは賛否が分かれるところです。
植物充実度:★★★
松やツツジ、モミジなど日本庭園の代表的な植栽が多いです。花はボタンやハナショウブ、ウメなどが見られます。植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★★
庭園自体はゆっくり落ち着いて観賞するのに向いています。これといった大きな見どころはないですが、いつ訪れても楽しめるでしょう。しいて言うなら紅葉の時期が良いでしょう。
徳川美術館の鑑賞が楽しめるのは大きな利点で、庭園を訪れる動機として十分でしょう。
混雑度:★★★
大型連休や観光シーズン、紅葉シーズンはやや混雑します。それ以外のシーズンは比較的のんびり散策ができるでしょう。園内はやや広めですが、オープンスペースはそれほど多くありません。ゆっくりしたいなら黒門側の広場を利用すると良いでしょう。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、2つある最寄り駅から歩けて、バスの本数が多めなバス停からも歩いて数分なのでとても良い評価。
車の場合、2つある最寄り駅から歩けて、バス停からも歩いて数分なのでとても良い評価。
総合満足度:★★★
名古屋市街という立地ですが、敷地の高低差を生かした構成で様々な景色の変化を楽しめるのが魅力。大名庭園を起源としながら、歴史を感じさせるものが少ないですが、その分、園路が広かったり、開放感のある空間が多かったりと、より大衆のニーズに合わせた施設となっています。
一方で、一時期は現代的な都市公園として利用されていたこともあり、やや公園風の印象が強いことは好みが分かれるところかもしれません。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
4月中旬頃(ボタン、新緑)
6月上旬頃(ハナショウブ)
晩秋(池周辺の紅葉)
初冬(虎の尾、大曽根の瀧周辺の紅葉)