兼六園は石川県金沢市にある特別名勝の日本庭園。加賀藩前田家によって江戸時代に作庭が始まった林泉回遊式の大名庭園で、様々な変革は経て全国を代表する日本庭園のひとつになっています。
庭園の象徴ともいえる徽軫灯籠(ことじとうろう)が有名ですが、実際には園内を縦横に流れる曲水、サクラやカキツバタなどの花、紅葉、よく管理された樹木、美しい苔など見所が多岐にわたります。
庭園には多くの出入口がありますが、金沢城の石川門口に隣接する桂坂口、百万石通りに隣接する真弓坂口がメインといえます。園内は広く見所も多いので観賞時間に十分な余裕が欲しいです。
ここでは気になる見所を桂坂口から入って時計回りで紹介します。
桂坂口から入ってすぐ、少し急な坂道の中腹にサクラが多く植えられています。
兼六園を代表するスポットの徽軫灯籠。名前は琴の音を調整する琴柱(ことじ)に似ていることからきています。灯籠単体に留まらず、手前に流れる曲水と、琴に見立てられることもある虹橋が一体となった景観が見所です。
庭園内で一番大きな池で、周囲には先ほどの徽軫灯籠をはじめ様々な見どころがあります。中央に浮かぶ中島は蓬莱島(ほうらいじま)で、亀の形をしています。
白山山系の山並みや、遠くは能登半島まで見渡せる展望台。手前の斜面に咲くサクラやツツジも見所です。
琵琶湖畔の唐崎から松の種を取り寄せて育てたという大きなクロマツ(写真左のマツ)。晩秋から冬季にかけて見られる雪吊りはかなりの迫力です。
11枚の赤戸室石が、まるで雁が列をつくって飛んでいくように配置された橋。石のひとつひとつが亀の甲羅のような形をしており、橋を渡ると長生きするとされていましたが、戸室石があまり丈夫ではないため橋は通行止めとなっています。
七福神に見立てた7つの自然石と手前に架かる雪見橋のある七福神山とともに、曲水にある美しい景観のひとつとなっています。
根が地上2メートルまでせりあがったクロマツ。非常に迫力のある姿で兼六園の見所の一つになっています。松の根元周辺の美しい苔にも注目です。
緩やかな曲面になった木製の橋。橋から見る花が美しいことから名が付きました。特にサクラと、カキツバタやツツジの開花期が見ごろの時期になります。
カエデやトチノキ等の紅葉する落葉樹が多く、紅葉山とも呼ばれます。山の頂上には休憩舎があり、ここから山の景色を見下ろせます。
1968年(昭和43年)に造られた比較的新しいエリア。北野天満宮や太宰府天満宮などの協力で全国の名梅を集めています。
梅林の中ほどには船の形をした舟之御亭(ふなのおちん)という休憩舎があります。
時雨亭は2000年(平成12年)に再建された数寄屋造りの建物。庭を眺めながら抹茶などを楽しめます。
一方、霞ヶ池に面した景観のよいところにある茶店は内橋亭。庭園内には他にもいくつか茶店があり、混雑しやすい時雨亭よりも気軽に飲食を頼めます。
霞ヶ池を掘った際に出た土砂を用いて造られた山。頂上への道がサザエの殻のようにぐるぐると回っているためこの名があります。頂上からは霞ヶ池の四季折々の景色を眺められます。
庭園で2番目の大きな池。ひょうたん(瓢)に似ていることからこの名があります。池には大小2つの島があり、大きな島には橋が架かっています。サクラや紅葉の時期が特に美しいです。
その瓢池に落ちるのは翠滝。敷地の高低差を生かした景観です。
瓢池の湖畔にある茶室で、兼六園でもっとも古い建物。茶室内の壁に夕顔(ひょうたんの古名)の透彫りがあることからこの名がついています。
日本で最初にできたといわれる噴水。霞ヶ池の水圧だけで水が上がっています。
園内には長さ500メートルを超える曲水が縦横に流れています。この水は城の防火用水として造られた辰巳用水から引かれたものです。流れによる美しい景観もさることながら水の美しさにも注目です。
金沢は湿度が高いためか兼六園の苔は非常に美しいです。また、園内の曲水による湿度の供給も無縁ではないと思います。ちなみに金沢は金箔で有名ですが、金箔づくりには美しい水と、静電気が起こりにくい高い湿度が最適だそうです。
庭園内から入れる、重要文化財となっている歴史博物館の御殿。江戸時代末期に前田家の奥方のために建てられました。内部に庭園があるので初見の場合は見学するのもよいでしょう。
なお、成巽閣内部の入場には別途料金がかかります。
成巽閣への兼六園側入口の赤門は兼六園や金沢城への通用門として利用されていました。御殿の一階は風格のある書院造、二階は群青の間などの色壁を用いた数寄屋風書院造となっています。内部には庭園があり、そこだけは写真撮影可能となっています。
柱のない縁台から眺める、辰巳用水から分流された遣水が静かでゆるやかに流れる開放感のある庭園。中央のクロマツや低めの落葉樹、下草がバランスよく植えられています。
野鳥の数が多く、縁台に静かに座っていると鳥のさえずりが聞こえてきます。
つくしの緑庭園から渡り廊下を挟んで流れる遣水が流れていますが、趣が異なる庭園となっています。こちらの流れは水音をたて、キャラボクなど常緑樹を中心とした植栽になっています。
天災などによりほとんどの遺構が失われた金沢城ですが、史跡公園として整備されています。初訪問だったり、サクラや紅葉の季節は美しいのでぜひ立ち寄りたいです。
桂坂口から出れば、金沢城の入口である石川橋と石川門にスムーズにつながります。
石川門は金沢城の裏門で重要文化財。兼六園の桂坂口から石川橋を挟んですぐの箇所にあります。特にサクラの季節は非常に美しいです。
いずれも再建された施設ですが木造の立派な建物。石垣も見事です。
金沢城公園の西にある庭園。藩主の内庭として利用されていました。江戸時代後期の姿を2015年(平成27年)に再現したものになっています。
兼六園周辺には写真の金沢21世紀美術館をはじめ、様々な文化施設や遺構が点在しています。また、有名な近江町市場や茶屋街も徒歩圏にあります。これらのおかげで観光する際の利便性は高いのですが、一方で庭園が過剰に混雑しやすい一因ともなっています。
場所
石川県金沢市兼六町1(兼六園)
石川県金沢市丸の内1(金沢城公園)
交通手段
■公共交通機関
JR「金沢」駅からバスで「兼六園下」「広坂」等下車、徒歩数分。
「香林坊」バス停から徒歩約10分。
■車
北陸自動車道「金沢森本IC」より券六駐車場まで約15分。
北陸自動車道「金沢西IC」より券六駐車場まで約25分。
駐車場あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/
庭園デザイン:★★★★★
大きな池とその周辺の造作や建物、造形が美しいマツ類、築山からの展望など見所が多数あり、華やかな景色と、地味ながら風情がある景色がバランスよく配置されています。個人的には庭園を縦横に流れる美しい曲水の流れに注目。それに架かる様々な橋、流れに沿うような石組と植栽が、庭園全体として一体感のある景色を造りだしています。
植物充実度:★★★★
マツやモミジ類をはじめとした日本庭園お馴染みの植栽が美しいのはもちろん、サクラやウメ、ハギ、カキツバタ、ススキなどの季節の花も多く見られます。苔の美しさにも要注目。植物の管理状態は非常に良好です。
娯楽度:★★★★★
観光地として広く認知されているとおり、金沢観光で欠かせない施設になっています。特にサクラや紅葉の季節は美しく誰でも満足できるでしょう。また、周辺に観光施設が多いのも魅力です。
混雑度:★★★★★
サクラや紅葉の最盛期、秋の行楽シーズンは非常に混雑します。その他の季節も団体客や外国人なども多くそれなりに混みます。場合によっては早朝入園を利用するのも一考。
交通の便:★★★★
公共交通機関利用の場合、兼六園に直通するバスの便は多くありますが、サクラや紅葉の最盛期、行楽シーズンはバスも道路も混雑しやすいです。庭園からやや遠いですが、経由するバスが非常に多い香林坊のバス停を起点とするのも良いと思います。
車の場合、広い駐車場があり閑散期は止められると思いますが、サクラや紅葉、行楽シーズン、イベント時は駐車場が混雑するので早出早立ちを。特にサクラの時期は公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★★
金沢の名所として有名であり灯篭の景色とともに観光地的な印象が濃いですが、庭園としても非常に満足度が高いです。観光地という先入観を抜きにして、純粋に庭園として観賞してみると良いと思います。また、各植物はさすがの管理状態で気持ちが良いです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(ウメ、サクラ)
初夏(新緑、カキツバタ、ツツジ)
初夏〜秋(苔、マツ類)
秋(ススキ、ハギ)
晩秋(紅葉、雪吊り)