旧古河庭園は東京都北区にある庭園。園内全体は南に開けた斜面状になっており、北側の高い部分に洋館とバラ園、南側の低い部分に日本庭園を配しています。洋館とバラ園は旧岩崎邸庭園洋館などを手がけた建築家のコンドル設計によるもの。一方、日本庭園も無鄰菴などを手がけた著名な作庭家である小川治兵衛によるもので、どちらも大正時代に完成しました。
園内はそれほど広くはありませんが、洋館を中心にまとまった配置になっています。
ここでは芝生広場を起点に反時計回りの順路で主な見どころを紹介します。
洋館の隣は売店やトイレのある芝生の広場になっています(芝生内への立ち入りはできません)。
大きな針葉樹の並木が洋風の雰囲気を盛り立てます。
芝生広場のそばにある展望台。ベンチに座りながら園内が見渡せます。
見通しはそれほどよくありませんが、紅葉の季節は壮観です。
入口に入るとすぐに見えてくる洋館の大谷美術館(おおたにびじゅつかん)。英国建築家のジョサイア・コンドル設計の洋館で、天然スレートの屋根と石造りの外壁が独特な雰囲気をかもし出しています。濃色の外壁は手前にある洋風庭園のバラとも相性がよいです。
別料金がかかりますが、洋館の内部を見学することができます。庭園の開館日や開館時間とは異なるので、洋館内部の見学が希望であれば事前に確認しておきましょう。
なお、建物内部の写真撮影は禁止されています。
洋館の正面はバラが植えられた整形庭園になっています。
庭園自体は小さいですが、バラと距離が近く個々の花を観賞するには向いています。
西洋庭園から日本庭園に入る際、ツツジの刈り込み物と鬱蒼とした樹木の中を歩きます。
雰囲気の違う西洋庭園と日本庭園の境界の役目を果たしています。
無鄰菴の作庭などで有名な7代目小川治兵衛が手掛けた日本庭園は、心字池を中心とした回遊式庭園。心字池はその名の通り「心」の字に似せた形になっています。大きな雪見灯籠が目立ちます。
7代目小川治兵衛といえば見立てに頼りがちな伝統的な手法から脱却し、自然主義的な作庭を確立した人物として有名です。この渓谷周辺は彼がもっとも力を入れたエリアとのことで、自然の風景を生かしつつ再構成された庭となっています。
比較的落差のある滝。高低差のある園内ならではの演出になっています。滝自体も一気に1段で落ちるではなく数段かけて落ちる意匠を凝らしたつくりとなっています。
日当たりがあまり良くない場所なので、滝周辺の紅葉はシーズン終盤になってからです。
普段は入ることができませんが、春と秋に抹茶を出しています。抹茶を注文する場合のみ内部を見学することが可能です。営業日は大谷美術館の公式ウェブページで確認を。
茶室の東側にある小路から見た景色。新緑や紅葉時は見ごたえがあるので、ぜひ立ち寄りましょう。
周辺が暗いので、写真撮影の際は手振れに注意。
場所
東京都北区西ケ原1丁目
交通手段
■公共交通機関
JR京浜東北線「上中里」駅より徒歩7分
JR山手線「駒込」駅より徒歩12分
東京メトロ南北線「西ヶ原」駅より徒歩7分
■車
※駐車場なし、公共交通機関利用を推奨。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
旧古河庭園(庭園部分は下記参照)
URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index034.html
大谷美術館(洋館の見学や茶室営業については下記参照)
URL:http://www.otanimuseum.or.jp/kyufurukawatei/index.html
庭園デザイン:★★★★
園内はそれほど広くはなく、特にバラ園はかなりこじんまりしています。それでも洋館の存在感は一見の価値があると思います。一方、日本庭園は斜面の下側にあるせいか落ち着いた雰囲気。洋館周辺のような明るさはないものの、ゆっくり散策できます。
和洋折衷ではなく、和と洋をしっかり分けたうえでそれぞれの良さを生かした造りです。雰囲気が異なる西洋庭園と日本庭園の境は樹木や高低差で上手に分けられています。
ちなみに洋館も1階を洋風、2階を和風に分けており、庭園デザインと相互に結びついています。
植物充実度:★★★
バラ園の規模は小さいですが様々な品種のバラが見られます。バラとの距離の近さも個々の花を観賞するにはうってつけ。他の花は少ないですが、モミジが多く新緑や紅葉の時期はとても綺麗です。
植物の管理状態は良好。
娯楽度:★★★★★
初夏バラや紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。その他の季節も洋館の見学や喫茶室の利用が楽しめるので娯楽度は高め。
一駅隣の駒込にある六義園と一緒に庭園巡りをしてもよいでしょう。上野方面も近く、楽しめる場所はいくらでもあります。
混雑度:★★★★★
初夏バラと紅葉の最盛期はとても混雑します。施設内は狭く、オープンスペースも多くありません。ゆっくり観賞したいなら平日や朝に訪問するなど工夫しましょう。特に、人をあまり入れずにバラと洋館を広角で撮影したいとなると運が良くないと厳しいです。
それ以外の季節は酷く混雑することは少ないです。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、駅から近く交通の便は良いです。
車の場合、専用駐車場はないので、事情により車を利用する場合は近隣のコインパーキングの場所を予め調べておきましょう。基本的には公共交通機関利用を推奨します。
総合満足度:★★★★
特徴的な洋館と、その手前にあるバラ園の景色は非常にフォトジェニックであり、日本庭園もよくまとまっている印象。この景色が都内で見れるのはそれだけで貴重です。ただ、元が個人の邸宅だったこともあり、ボリューム感は都内にある他の大名庭園に比べると少し物足りなさがあります。
狭さは悪いことだけではなく、コンパクトに見所が詰まった園内という評価もできると思いますが、春バラや紅葉の最盛期の混雑感だけはいかんともしがたいです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
晩春(新緑、ツツジ)
初夏(バラ)
晩秋(紅葉)