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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

由志園(ゆうしえん)

島根県松江市にある日本庭園。1970年から造成が開始された比較的新しい庭園ながら、美しさ・規模共に高いレベルにあります。庭園はボタン苗の生産が全国一位である中海の大根島にあり、花の目玉もボタンになっています。特に、池にボタンの花を浮かべる池泉牡丹で有名です。
一方で、苔や新緑、紅葉など日本庭園自体も見どころが多いです。

園内地図(クリックすると大きくなります)

由志園庭園マップ
2つの大きな池を中心とした池泉回遊式の日本庭園。中海や宍道湖、奥出雲の渓谷など、出雲や大根島の風景を模した作庭が特徴です。順路があるのでその順番で主な見所を紹介します。

出入口の長屋門

長屋門
高麗人参の製造販売などを担った公的施設である、人蔘方役所の長屋門を復元した出入口。
今は栽培地が減少しましたが、大根島はボタンとともに高麗人参の栽培も盛んでした。

受付を出てすぐ


建物内の受付を経て、屋外に出ると、クロマツが植えられた広い空間に出ます。ここでは、期間限定で水に浮かぶボタンが見られます。季節によりダリアなど別の花が見られることもあります。

花が綺麗に水に浮かぶ仕組み

花が綺麗に水に浮かぶ仕組み
トレイ(黒い部分)にたくさんのボタンを敷き詰めて、それを浮かべることで、花がバラバラにならずに豪華な景色を楽しめるようになっています。

州浜と池泉

池泉のボタン
池泉のダリア
中海を模したという池に、期間限定でボタンやダリアが浮かびます。ボリュームが凄いです。

築山

築山
大根島から中海越しに見た大山の稜線を模した築山があります。
特にツツジや紅葉の時期が美しく、ボタンが池に浮かぶ頃は背景にもなります。

食事処や料亭

菖蒲亭食事処
日本庭園に合わせた和風の建物が並びます。

紅葉橋

紅葉橋
紅葉橋付近の紅葉
紅葉橋周辺は名前の通り紅葉が美しいです。ゆるやかに曲線を描く園路が良い雰囲気。

紅葉橋付近から池を望む

紅葉橋付近から池を望む
橋付近からは美しいコケ越しに、ボタンが浮かぶ池が望めます。

二季咲き牡丹園

二季咲き牡丹園
春と冬に咲く二季咲きのボタンが見られます。一季咲きのボタンに比べ、冬にも咲く分、春のボタンは開花が穏やかな印象です。

雌滝付近の流れ

雌滝付近の流れ
小さな滝がある庭。蛇行した水の流れもあり雰囲気がよいです。
また、この周辺は苔やシダ、樹木が綺麗で、特に苔の管理状態のよさに目が行きます。

梅恵橋からの景色

梅恵橋からの景色(夏)
梅恵橋からの景色(紅葉)
石橋の上から池が眺められます。開けているところと、陰るところのバランスが良いです。
青々とした緑の季節と、様々な色が彩る紅葉の季節のドラマチックな変化も見所。

牡丹の館

牡丹の館(通常時)
牡丹の館(イベント時)
入れ替えや栽培管理により一年中、ボタンの花が見られる建物。
季節によっては、より豪華な企画展が行われていることもあります。

牡丹庭園

牡丹庭園
ボタンがたくさん植えられた庭。最新品種から古典品種まで、様々な品種が見られます。
開花期以外はこのエリアに入れないこともあります。

牡丹庭園のシャクヤク

牡丹庭園のシャクヤク
ボタンによく似た、シャクヤクの花も見られます。こちらもボリューム、品種数ともにかなりのものですが、開花最盛期はボタンよりもやや遅めになります。

やまぼうし(売店)


売店の建物の横を通ります。散策の合間に建物を挟むのがこの庭園の特徴です。普通であれば興ざめになりかねないですが、建物を和風にして雰囲気を壊さないことで、違和感を少なくしています。

朱橋

朱橋(初夏)
朱橋(紅葉)
宍道湖を模した池に架かる朱色の橋。紅葉や新緑が周囲を彩ります。

朱橋の上からの景色


ツツジ
朱橋の上から池の奥の渓谷や、水の流れが眺められます。特にツツジが咲く季節は美しいです。

奥出雲風の渓谷

渓谷
朱橋を渡り右手に行くと、細い道から渓谷に沿って歩くことができます。
奥出雲の渓谷をイメージした景観とのことです。

竜渓滝

竜渓滝
渓谷をさかのぼった一番奥には、大きな竜渓滝(りゅうけいだき)が見られます。

シャクナゲと、ツツジの刈り込みもの


ボタンが咲くころは、同時にシャクナゲの花が見られます。
朱橋から枯山水庭園の間にあるツツジの刈り込み物も見事です。

枯山水庭園

枯山水庭園
中海の湖岸の景色を模した枯山水庭園。
庭園の前には東屋があり、ゆっくり腰かけながら庭を眺められます。

溶岩庭園


ごつごつした自然石の溶岩を組み合わせた庭園。火山でできた大根島にちなんでいます。
シダなど着生するタイプの植物が多くみられます。

雲州人参ミュージアム

雲州人参ミュージアム
溶岩庭園から再度、建物内に入ります。
建物に入ってすぐは雲州人参(高麗人参)の産地である大根島の歴史が展示されています。

茶房「一望」

茶房「一望」
池側は喫茶店になっており、庭園を眺めながら軽飲食が楽しめます。
食事処や料亭とは異なり、メニューはドリンクやソフトクリームなど気軽に頼めるものが中心となっています。

美しいコケと、専用の作業服を着た庭師


植物の管理状態の良さはもちろん、庭師さんの服装や仕事道具への配慮など、庭園の雰囲気を壊さないことに対する高い意識が感じられます。

施設の概要

場所
島根県松江市八束町波入1260−2

交通手段
■公共交通機関
JR「松江」駅から路線バスで約50分。
■車
山陰自動車道「米子IC」より約40分。
松江だんだん道「西尾IC」より約15分。
駐車場あり(無料)

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.yuushien.com/

My impression

庭園デザイン★★★★★
ボタンのインパクトを抜きにしても美しい庭園。池や流れ、美しいコケを効果的に使って園内の一体感を出しています。特に、石組に溶岩を利用した流れ部分は見所が多いです。
歴史の浅い庭園ですが、その分伝統に縛られない自由な作庭は好感が持てます。

植物充実度★★★★★
池泉に浮かべるボタンの花でよく知られる庭園ですが、ボタン自体もたくさん植栽されており、開花期は見ごたえがあります。また、モミジなどの樹木や花木、コケなどが充実しており、ボタンが咲いていない時期でも十分楽しめます。ただ、一度はボタンの時期に訪れたいです。同時にツツジやシャクナゲ、フジの花などが咲き園内が一番華やかになります。
植物の管理状態は非常に良好で、特にコケの管理状態は素晴らしく、管理者の意識の高さがうかがえます。コケの生育に適した溶岩が多い火山島である大根島の環境も影響しているのかもしれません。

娯楽度★★★★★
ボタンの開花期や、ボタンが池に浮かぶ時期なら誰にでも勧められる美しい景色が観賞できます。ただ、ボタンの開花最盛期と、ボタンの花が池に浮かぶ時期は多少ズレがあります。ボタンの開花最盛期の方が少し早いので、どちらを重視するかで訪問する時期を選ぶとよいでしょう。ダリアの花が浮かぶ時期も良いですが、ボタンほど豪華ではないのは承知のこと。紅葉の季節もよいでしょう。
それ以外の季節は、落ち着いた庭園をゆったり散策するのに向いています。

混雑度★★★★★
池にボタンの花が浮かぶ時期は大型連休が重なり、団体客も多く非常に混雑します。朝方や平日に訪れるなど、少しでも混雑を避ける工夫をしたいところです。
それ以外の時期も、ライトアップある紅葉の時期や、ダリアが池に浮かぶ時期など、イベントがある場合は比較的混雑することが多く、イベントのない時期も団体客がいるときは混雑しやすいです。

交通の便★★
公共交通機関利用の場合、松江駅から路線バスの便があります。ただ、長時間の乗車が必要なため、やや悪い評価。なお、以前あった松江境港シャトルバスは廃止となっています。
車の場合、広い駐車場があり、開花最盛期も困らないでしょう。基本的には車で来る場所です。
ちなみに境港側から来ると、ベタ踏み坂の別名で有名な江島大橋を渡ります。

総合満足度★★★★★
池泉に浮かべるボタンの花でよく知られる庭園ですが、ボタンの花木もたくさん植栽されており、開花期は見ごたえがあります。また、日本庭園部分も美しく、新緑や紅葉、苔など、ボタンが咲いていない時期でも十分楽しめます。
庭園としては非常に満足度が高いものの、公共交通の便については大きな不満があります。せっかくの美しい施設なので大型イベント期間中はシャトルバスを出す等、何かしらの対応が欲しい気がします。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
晩春(咲いているボタン)
晩春〜初夏(新緑、ツツジ、シャクナゲ)
初夏(池泉に浮かぶボタン)
初夏〜秋(コケ)
晩秋(紅葉)

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