北川村モネの庭マルモッタンは高知県安芸郡北川村にある洋風庭園。印象派の画家として有名なクロード・モネの庭を再現したもので、世界で唯一、クロード・モネ財団から「モネの庭」と名乗ることが認められています。フランスのジヴェルニーにあるモネの庭の管理責任者の協力を得て生まれた庭園は、モネや本家モネの庭へのリスペクトを強く感じることができます。
モネの庭を再現した睡蓮の咲く池や花の庭の他に、高知の温暖な気候に合わせた園独自の庭園デザインのボルディゲラの庭にも注目です。
なお、「マルモッタン」とは同じフランスにあるマルモッタン・モネ美術館に由来しています。この美術館ではモネの代表的な作品「印象・日の出」が見られることで有名です。
山の斜面を利用した庭園で、駐車場を挟んで3つの庭に分かれており、花の庭が一番低く、水の庭の池部分は中間、ボルディゲラの庭は高所側になっています。
順路は特にないですが、ここでは駐車場にあるチケット売場で受付し、水の庭とボディゲラの庭の景色を楽しんでから、駐車場に戻り花の庭を巡る順序で紹介します。
地図のとおり駐車場で庭園は2分されていますが、まずは水の庭やボルディゲラの庭の入口となるチケット売場に向かいましょう。
花の庭方面のギャラリーショップ側でも入園受付はできますが、午前中の方が美しいスイレンの性質を考えると、まずは水の庭方面に向かうのが正解です。
本家モネの庭にもある、睡蓮の咲く池を中心としたエリア。
バラや草花類による鮮やかな西洋風の植栽のほか、浮世絵などを通じた日本文化からの影響(ジャポニズム)による太鼓橋、サクラやフジ、ヤナギ、タケ、ミソハギ、ユリといった日本でもおなじみの意匠や植栽が見られるのも特徴です。
幅広の滝や、脇に花壇のある斜面の道を歩いていきます。本家モネの庭は平面的な地形ですが、北川村のモネの庭は山の斜面に造られているため、各エリアでの変化が大きいです。
なお、斜面の道は途中にある階段でショートカットすることも可能です。
斜面を上り終えると見えてくるのが縦長の池。モネの庭の核心部ともいえる睡蓮の咲く池です。
池に咲くスイレンの種類は温帯スイレンと熱帯スレインがあり、初夏から見頃を迎えるのがモネの絵画でもおなじみの温帯スイレン。本家の庭にある株から株分けされたものもあるそうです。
花期が長く晩春から秋まで咲き続け、池の周囲に咲く季節の花と一緒に楽しめます。特に初夏バラとの共演が見られる5月中旬ごろはより美しい景色を観賞できます。
夏に見頃を迎えるのが熱帯スイレン。池の水面ぎりぎりに咲く温帯スイレンに比べ、熱帯スイレンは花茎を立ち上げて咲くのが特徴で、よく目立ちます。また、花色も熱帯らしい鮮やかさがあります。
熱帯スイレンも花期が長く、夏から秋遅めまで咲き続けます。特に夏は温帯スイレンと熱帯スイレンが同時にみられるため花の量感に優れています。
また、ミソハギなどの水辺の植物との共演も見所です。
様々な種類の熱帯スイレンが咲きますが、特にモネが咲かせたいと願っていながら、本家フランスのモネの庭では涼しい気候の関係で咲かせることができなかった、青い睡蓮が見所。
なお、暖かい気候の高知にあるモネの庭では、夏の間中咲き続けます。
モネは本家モネの庭の池で多くの睡蓮の絵を描きましたが、水面とのバランスを考え、スイレンの葉の広がり具合などを庭園管理者に細かく指示したとされています。
この庭園でも本家と同様に、スイレンの草姿の美しさにこだわっていることが特徴となっています。
なお、通常毎週火曜日は睡蓮の池のメンテナンス日となっています。
ボルディゲラとはイタリアの地中海沿いにある町の名で、訪問したモネが町の景色に感銘を受け、多くの作品を残したことで知られています。
ボルディゲラの庭は、町の景色や、町を描いたモネの絵画などから発想を受け造られた、北川村モネの庭独自の庭園となっています。
メタセコイヤの林の中に続く道を歩いていきます。
性格の違う庭に切り替わる、中間エリアのような役割も果たしています。
季節のよってはバラの咲くアーチや花畑もみられます。
周囲が斜面と石組み、樹木で囲まれた池。
白色の石組と、乾燥地帯原産の植物やヤシ類が、日差しが強くて暖かく、乾燥した気候を表現しています。特に、池の周囲にある園路上部から見た池越しの庭園の景色は、明るい南欧の雰囲気を感じさせてくれます。
斜面に石組みと、ヤシやオリーブなど南欧風の植栽が見られます。
(あくまで南欧風であり、植物の原産地は様々です。)
高台に建つリヴィエラの小屋は、ボルディゲラの庭の景色のポイントになっています。
写真中央にある、よく目立つ赤い花木はブラシノキ。
リヴィエラの小屋では休憩が可能で、遠く太平洋を見晴らすことができます。また、季節限定で軽飲食を楽しむこともできるので、興味があればチェックしてみるとよいでしょう。
樹木の多い自然風の散歩道。ただ、比較的距離が長いうえ、山の斜面にあるため傾斜が強めで、暑い時期や天気の悪い日、時間がないときは無理して上らないほうが良いかもしれません。
北川村の山々や太平洋を一望できる展望台。残念ながら庭園の景色はよく見えません。
駐車場に戻って、対面側にあるのが花の庭エリア。本家モネの庭にもある整形ガーデンを再現した庭園のほか、ギャラリーやショップ、カフェやレストランなどがあります。
本家モネの庭にはない敷地の高低差を利用して、庭園を見下ろす景色を観賞できるのも特徴です。
花の庭に向かう際に通り抜ける建物。2階が駐車場、1階が花の庭入口とつながっています。
2階部分がモネの絵(複製画)と、モネの庭の四季の写真や庭園の生い立ちが見られるギャラリー。
1階部分はショップになっていてモネに関するグッズのほか、地域の名産品なども購入できます。
休憩スペースがあり、一休みにも最適です。
多目的ホールのフローラルホール。
初夏のつるバラの開花期は前庭が美しいので観賞していくとよいでしょう。
花の庭では季節ごとに様々な種類の花が見られます。花をパレットにたとえるように、様々な花色を植栽しているとのことです。
晩春から初夏はピンクや青紫など、淡い色彩の花が多くみられます。
夏の花壇は赤や黄色など、ビビットな色合いの花が多くなります。
2枚目の写真は、夏に花の庭でみられる青い紋様が美しいブルービー(ナミルリモンハナバチ)。幸せを運ぶハチとされています。オミナエシによく訪花するので探してみるとよいでしょう。
本家モネの庭でも見られるバラのアーチ。つるバラのため初夏が一番の見ごろとなります。
このように高い目線から庭を観賞できるのもポイントです。
おしゃれなカフェレストランがあり、しっかりした食事から軽飲食まで楽しめます。
外部にある手作りパン工房売店でテイクアウトも可能で、レストラン前にあるデッキで花の庭を見下ろしながら飲食するのもおすすめです。
場所
高知県安芸郡北川村野友甲1100
交通手段
■公共交通機関
土佐くろしお鉄道「奈半利」駅から北川村村営バス「モネの庭」下車すぐ。
■車
高知自動車道「南国IC」から南国安芸道路経由で約70分。
高知空港から一般道経由で約60分。
駐車場あり(無料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.kjmonet.jp/
庭園デザイン:★★★★
気候や地形の違いはあれど、本家モネの庭の世界観をよく再現している庭園デザインとなっています。気候でいえば、熱帯スイレンにとっては高知の気候の方が合っているため花つきがよく、本家よりも豪華な景色が見れるのかもしれません。また、独自の庭園デザインであるボルディゲラの庭も、地中海沿岸の明るくてドライな雰囲気が再現されていると感じます。
一方で、本家のモネの庭の再現に重きを置いているため、独自にデザインされた庭園は少なめとなっています。また、花の庭の構成は整形ガーデンであり好みも分かれるかと思います。
植物充実度:★★★★
温帯スイレンや熱帯スイレンが多くみられます。種類としてはそれほど多くはないですが、個々の株の管理が行き届いて充実度は高いです。他には初夏のバラも充実しています。
季節の花木や草花類も多くみられ、暖かい時期であれば何かしらの花と出会えるでしょう。
植物の管理状態は良好で、特にスイレンの管理は非常に良いです。
娯楽度:★★★★
温帯スイレンと初夏バラの最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。晩春のフジの咲くころや、夏の熱帯スイレンが見頃を迎える時期も良いでしょう。
それ以外の季節は派手な景色は望めず、ゆったり散策するのに向いています。
おしゃれなカフェレストランやショップがあり、それらを同時に楽しめるがポイントです。
周辺観光だと、中岡慎太郎館や室戸岬、むろと廃校水族館、伊尾木洞などがおすすめ。
個人的なおすすめは、周辺というには遠いですが、やはり高知県立牧野植物園になります。
混雑度:★★
初夏バラの最盛期はやや混雑します。一方で、スイレンの見ごろは長く、訪問客が分散されているためひどく混雑するようなことは少ないです。立地的なこともあるかもしれません。
観光バスの団体客が訪れて瞬間的に混雑することがあるので、その場合はギャラリー等で観賞時間をずらすとよいでしょう。
施設は広めで、オープンスペースも各所にあります。混雑時でもゆっくりできる場所はあるでしょう。
交通の便:★★★★
公共交通機関利用の場合、最寄り駅から歩ける距離ではありませんが、バスの便はあるので時刻表を調べていけば問題ないでしょう。
車の場合、駐車場は第二駐車場も含めそこそこの台数があります。
高知空港や高速出口から遠く長めの運転となるので、途中の道の駅などで休憩しつつ安全運転で訪れましょう。
総合満足度:★★★★
モネの庭を作りたいという思いと、クロード・モネ財団を通して園が生まれた由来、庭の再現、開園後の交流、睡蓮の池の維持管理など、様々な場面でモネと本家モネの庭へのリスペクトを感じることができます。日本の地方にこのような庭園があることは非常に嬉しいことです。
独自のデザインであるボルディゲラの庭はもちろん、再現された水の庭や花の庭も単なる本家モネの庭の模倣ではなく、高知県北川村の環境に合わせたアレンジが加えられているのも良いです。
一方で、花の庭の整形ガーデンの構成は、個人的に微妙な部分もあります。本家モネの庭とは異なり、庭園の背景の建物が高台にあるという独自性がOKなら、花の庭の構成も日本人の感性に合わせてアレンジしてもよかったのかなと思います。
休園する冬以外、各季節にわたり花は多いですが、やはりモネの庭の魅力を味わうならスイレンが見頃の時期に訪れたいです。なお、熱帯スイレンは真夏が一番美しいですが、その時期は暑さが非常に厳しいので熱中症や日焼け対策は十分に。
備考1:温帯スイレンは午後になると花が閉じてしまうことが多いので、なるべく午前中の早めの時間に訪れるとよいでしょう。また、雨の日も花が閉じ気味です。
備考2:通常、毎週火曜日は睡蓮の咲く池にメンテナンス作業が入ります。池にスタッフが入って作業するほか、泥が拡散され池の水が濁ることがあります。
作業を見学したいという場合をのぞき、遠方から訪れるなら訪問を避ける方が良い曜日となります。
備考3:ペア旅行や一人旅等で人数が少なく、体力もあるなら奈半利駅物産館でレンタサイクルを借りるのも良いと思います。歩くのは厳しいですが自転車ならばよい距離感です。
なお、奈半利駅物産館の営業時間やレンタサイクルの貸し出し状況は要確認のこと。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
晩春(フジ、温帯スイレン、季節の花)
晩春〜秋(温帯スイレン、季節の花)
初夏(バラ、温帯スイレン、季節の花)
夏〜秋(熱帯スイレン、季節の花)