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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

高知県立牧野植物園

高知県立牧野植物園は高知県高知市にある、世界的な植物分類学者である牧野富太郎博士の業績を表彰して開園した植物園。博士ゆかりの植物や西南日本の植物を中心に、野生植物から園芸品種まで様々な植物を展示しています。
また、植物の展示だけでなく、牧野博士の生い立ちや功績といった展示も充実しており、「牧野富太郎博士の博物館」を併設しているともいえます。
五台山という自然豊かで起伏のある環境を生かした、展望や借景も大きな見どころです。

園内地図(クリックすると大きくなります)

高知県立牧野植物園マップ
園内は正門や記念館のある北園と、中門や庭園、温室のある南園に分かれています。
五台山の斜面地を整備して造られたため、園内の道はスロープや階段が多めですが、連絡道など主要な道を巡るだけならそれほど負担はありません。
特に順路はないですが、ここでは正門側から入園し、記念館や温室を経由して、中門から出るルートで主な見どころを紹介します。

正門

正門
バス停や駐車場に近い正門。立派な植物園としては落ち着いた佇まいで、植物園の性格が表れています。なお、チケット売場はこの道の先の、牧野植物園記念館本館の入口にあります。

土佐の植物生態園

土佐の植物生態園(山地の植物)
正門から園内に入るとすぐ植物展示が始まります。牧野博士の生まれた高知県に自生する植物を集めた生態園には滝や川、砂地などがあり、様々な環境に生育する植物を観賞できます。

牧野植物園記念館 本館

牧野植物園記念館 本館
正門側のチケット売り場がある建物は牧野植物園記念館の本館です。本館には研究や収蔵用の施設がありますが、それらは一般の入園者は利用できません。
そのかわり、植物園や五台山を解説する展示室、ロビーやカフェ、ショップ、ロッカーなどがあり、広大な植物園の見学前に準備を整えておくと良いでしょう。
建築家の内藤廣氏設計の建物意匠にも注目です。なお、中央の円形の中庭から生えているタケはタイワンマダケで、学名は「Phyllostachys makinoi」。牧野博士が発見した台湾固有種とのことで、園内には他にも学名に牧野博士の名が入った植物が多くみられます。

こんこん山広場の花畑

こんこん山広場の花畑
まっすぐ伸びる園路からいったん右側にそれて斜面を登ると、見晴らしのよい丘状になった広場があります。展望のほか、花畑や台湾産ツツジ属の植物などの展示も楽しめます。

こんこん山広場デッキからの展望(春)

こんこん山広場デッキからの展望(春)
広場の奥にあるデッキからは南園側の展望が開け、サクラや新緑が見頃の春は特に美しいです。
ここ以外にも、園内には展望台が複数設けられています。

回廊

回廊
170mあるという長い回廊の片側は、主に湿度の高い環境を好むシダ植物などが展示されています。
季節によっては花も多いです。白い花はスダレギボウシ

ふむふむ広場

ふむふむ広場
香りや触感など、五感で楽しめることがコンセプトの植物展示が見られる広場。実際にハーブを触ったり、香りをかいだりすることが可能です。
こちらも周辺の展望が開け、開放感があります。

牧野植物園記念館 展示館

牧野植物園記念館 展示館
書斎の再現
記念館の展示館は牧野博士の生涯や遺品、ゆかりの植物の紹介、書斎の再現などがあり、牧野博士の博物館といもいえる展示となっています。博士の得意とした、精細で美しい植物画の展示も要注目です。
なお、撮影禁止の展示もあるので留意しましょう。

牧野植物園記念館 展示館中庭

牧野植物園記念館 展示館中庭
展示館の中庭には牧野博士ゆかりの植物が植えられています。
曲面の屋根で縁取られた景色や、水盤に映る反射が見所で、中庭内を散策することもできます。
なお、この水盤は愛媛県出身の美術家、田窪恭治氏の作品となっています。

さくら・つつじ園

さくら・つつじ園
さくら・つつじ園からの展望
様々な野性種や園芸品種のサクラやツツジが植えられたエリア。種類が多いため一斉に開花しませんが、その分見頃が春から晩春までと長くなっています。
斜面地になっており見晴らしが良いです。特徴的な突き出た山は介良富士。

ガンゼキラン群生地

ガンゼキラン群生地
開花期限定で解放される絶滅危惧種とされるガンぜキラン群生地。樹林下の斜面地にあり、群生地入口は展示館の周囲の道の北東側にあります。
園内には他にもガンぜキランの群生地があるので、開花期はチェックしてみるとよいでしょう。

ケシと、展望台

ケシと、展望台
北園と南園を結ぶ連絡道は展望が開けています。斜面地にある檻に囲まれた場所には、特別に許可を得て栽培されているケシ(アヘンの原料)が植えられています。
近くには展望台もあるので立ち寄ってみるとよいでしょう。

トビカズラと、ムクナ・バードウッディアナ

トビカズラと、ムクナ・バードウッディアナ
連絡道の途中でみられるのが、暗紫花を咲かせるトビカズラと、白緑色の花を咲かせるムクナ・ハードウッディアナ。
どちらも珍しい花なので、初夏の開花期は観賞するとよいでしょう。

混々山斜面のツツジ

混々山斜面のツツジ(連絡道から)
混々山斜面のツツジ(上部から)
こんこん山広場の東側斜面地には、春から晩春にかけてツツジの花が多くみられます。
連絡道から見上げるだけでも十分楽しめますが、花の最盛期には散策路上部からの展望を楽しむのもよいでしょう。散策路の傾斜がきついので、雨の日などは無理しない方が良いです。

土佐寒蘭センター

土佐寒蘭センター
高知県の寒蘭愛好家が名付けた土佐寒蘭を中心に、多くの寒蘭が展示されています。花は晩秋から初冬がピークとなり、その時期には展覧会も開かれます。
なおカンラン(寒蘭)の学名は「Cymbidium kanran Makino」で、牧野博士によって名づけられたものです。

温室(みどりの塔)

温室(みどりの塔)
熱帯や亜熱帯の植物が展示されている半地下構造の温室。
ガラス温室ですが、入口付近はコンクリート製の細長い塔になっており、内部に入って上を見上げる景色が見所の一つとなっています。

温室(ジャングルゾーン)

温室(ジャングルゾーン)
温室内には水辺や乾燥地など、様々な環境に育つ植物が植えられています。
熱帯雨林に見立てたジャングルゾーンには立派な滝があり、着生植物が多くみられます。

温室(展望デッキから見下ろす景色)

温室(展望デッキから見下ろす景色)
温室はスロープや階段のある立体的な動線になっています。
2階層部分はオオオニバスが見られる池があり、また少年広場側に向かう出口にもなっています。

少年広場(結網山)

少年広場(結網山)
牧野博士の号(本名とは別の名)にちなんで名づけられた結網山(けつもうざん)の高台に造られた広場。春はサクラ、晩春のオンツツジが美しいです。牧野博士の少年時代の像も飾られています。
少年広場へは、傾斜がある少し足場の悪い道を通るため、暑い時期や天気の悪い日は無理に登らなくてもよいかもしれません。

50周年記念庭園

50周年記念庭園
開園50周年を記念して造園にされた回遊式水景庭園。自然風や公園風の展示が多い園内では珍しく、デザインされた庭園となっています。
主に東洋の園芸植物が植栽され、春に咲くサクラや初夏のハナショウブ、夏に咲くハスやスイレン、オニバス類の葉などが見所です。

南園 春のサクラ

南園 春のサクラ
春のサクラ(周辺の高台から)
50周年記念庭園や、その周辺にはサクラが多く植えられており見応えがあります。
庭園内を散策しながら見る景色も良いですが、周辺の高台から温室を背景に庭園を見下ろす風景は牧野植物園を代表する景観のひとつといえます。

牧野富太郎博士像

牧野富太郎博士像
50周年記念庭園の北側にある牧野富太郎博士の像。
像の周囲は植物で囲まれ、いかにも植物を愛した博士らしい佇まいです。

植生園

石灰岩植生園
高知県の特殊な地質である「蛇紋岩植生園」や「石灰岩植生園」があり、そこに自生する特有の固有植物を観察できます。
このあたりは拡張する前の植物園の雰囲気を残しています。

お馬路

お馬路
隣接する竹林寺の参拝道であった道。道沿いの石垣は当時の名残りと考えられています。ちなみに「お馬」とは生物のウマではなく、女性の名前に由来しています。
なお、牧野植物園内には四国八十八ヶ所霊場のお遍路道が横断しており、このお馬路もそのルートの一部となっています。ときおり白衣姿のお遍路の方をみかけることもあります。

植物研究交流センター


植物資源の研究や実験、企業との連携を通じて社会還元をしていくことを目的とした施設。公開エリアと非公開エリアに分かれています。写真1枚目は無菌培養により増殖試験中のミヤマウズラ。
3階には植物園を眺めながら食事できるレストランや、牧野博士関連グッズもあるおしゃれなショップもあります。

中門

中門
植物研究交流センターの建物を利用したチケット売場があり、入退園が可能です。
※現在南門は工事中となっています。

分かりやすい展示に込められた思い

ヨウラクランヤハズマンネングサ
世界最小の花をつけるといわれるヨウラクラン(Oberonia japonica(Maxim.)Makino)と、高知県と徳島県の石灰岩地のみに自生するヤハズマンネングサ(Sedum tosaense Makino)。
地味な植物であっても、見頃の時期には看板を設け、分かりやすい説明文も併記しています。植物を知ることの大切さを一般の人々にも広めて回ったという、牧野博士の功績とも通じるものがあります。

施設の概要

場所
高知県高知市五台山4200-6

交通手段
■公共交通機関
JR「高知」駅から周辺観光バス「MY游バス」乗車、
「牧野植物園正門前」下車、正門へ徒歩0分。
「竹林寺前」下車、中門へ徒歩2分。
バスは「はりまや橋」や「桂浜」などからも乗車可能。詳しくはMY游バスで検索のこと。
■車
高知自動車道「高知IC」から一般道経由で約20分。
高知東部自動車道「高知南IC」から約15分。
高知龍馬空港から高知東部自動車道経由で約25分。
駐車場あり(無料)
※五台山内の道路は一方通行のため、入口や進む方向をよく確認のこと。

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.makino.or.jp/

My impression

庭園デザイン★★★★
五代山の自然や景観、地形を生かしたデザイン。所々で開放感のある景色が楽しめるのは良い点です。
また、展望が良くない南園のくぼ地エリアを庭園に再整備して、単体として楽しめるようにしたことは、造園者のセンスがあると感じます。
一方で、当然ながら植物園のため、庭園デザインというよりも植栽配置を重視したエリアが多くなっています。これは園の性質からしたら仕方がないことでしょう。

植物充実度★★★★★
野生種や園芸種、日本産、外国産など様々な植物が植えられており、充実度は非常に高いです。特に牧野博士に由来する植物は種類が多いです。
花に注目すると、サクラやツツジがまとまって植栽されており見応えがあります。
また、各植物の解説盤も充実しており、開花している植物も分かりやすくなっています。
植物の管理状態は良好です。

娯楽度★★★★
観光名所にもなっている通り、記念館を含め一般の方でも楽しめる展示となっています。
ただ、サクラやツツジの咲く春以外は、植物園らしい緑の多い景観となっているのは承知のこと。植物や牧野博士への興味を深めるつもりで行くとより楽しめるでしょう。
園内にはおしゃれなレストランやショップがあり、それを目当てに行くのもよいでしょう。
周辺観光ならば、隣接する五台山や竹林寺はもちろん、桂浜方面に向かい坂本龍馬像や龍王岬、坂本龍馬記念館などを巡るのもよいでしょう。
個人的には、国指定名勝庭園のある竹林寺が特におすすめです。
また、少し遠いですが、同じ高知県の北川村モネの庭マルモッタンもおすすめ。

混雑度★★★
サクラやツツジの咲く春や大型連休、観光シーズンは混雑します。それ以外の季節はのんびり散策できるでしょう。
園内は広く、オープンスペースも多いので混雑時でもゆっくりできる場所はあります。

交通の便★★★★
公共交通機関の場合、高知駅を起点に主要な観光地を巡る乗り放題バスの途中経路となっており良い評価。ただ、朝方のバスを中心に混雑しやすいのが玉に瑕。他のバスの経路もありません。
車の場合、広めの駐車場がありますが、一方通行でカーブの多い山道は運転に注意がいります。事前に五台山に登る入口の道を調べておくとよいでしょう。

総合満足度★★★★★
牧野富太郎博士という世界的な植物学者を柱に置いた植物園。植物の充実ぶりはもちろんのこと、記念館の建物や展示部分はもはや「牧野植物園兼博物館」といってもよいと感じます。
また、植物を通じて一般の方とも広く交流を行った博士の人柄に似て、分かりやすい展示を行ったり、園芸植物を積極的に取り入れるなど、堅苦しくない親しみやすい印象は好感が持てます。
植物愛好家なら一度は訪れてみたい植物園で、その中でも特にサクラやツツジの咲く春から晩春はおすすめの季節となります。一方で、植物に興味があるなら冬以外はいつ訪れても楽しめるでしょう。

備考:牧野博士が主人公のモデルとなったNHKの連続テレビ小説「らんまん」による来園者数の増加や、MY游バス減便の影響により、平日問わず朝方のバスが混雑することがあります。
朝方に座席を確保したければ始発の高知駅で早めに並んでおくとよいでしょう。途中のはりまや橋からだと座れない可能性が高まります。
なお、乗車時間は長めの30分ほどとなっており、人によっては立ちっぱなしが厳しいと感じるかもしれません。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(サクラ、ツツジ、季節の花)
中春(遅咲きのサクラ、ツツジ、季節の花)
晩春(新緑、ツツジ、季節の花)
初夏(新緑、ガンゼキラン、季節の花)

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