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ガーデニング・園芸に用いられる植物の中で私が栽培したことのある種類を図鑑にしています

セッコク

セッコクセッコクの花

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セッコクのデータ

花色:
学名:Dendrobium moniliforme
別名:長生蘭(ちょうせいらん)
科名:ラン科
分類:多年草(冬落葉)
原産地:日本、東アジア
大きさ:背丈15〜25cm 横幅15cm〜40cm
主な見所:花(4〜5月)

セッコクの特徴

日本に自生が見られる野性ラン。木や岩の上につく着生植物です。近年は丈夫な性質と耐寒性の高さなどから、花を楽しむ気楽に育てられるラン植物として店頭や通販で出回ることが多くなっています。
花はバルブ(茎の一部が肥大化したもの、偽鱗茎(ぎりんけい)あるいは矢とも呼ばれる)から、花茎が出て数個の短い距がある花を咲かせます。花色は白のほか薄赤紫から赤紫や薄黄色などがあり、甘い微香を放ちます。葉は細長い楕円形で、つやがあり硬めの印象。落葉樹のように冬に落葉します。茎にみえる部分はラン科らしいバルブ形状で、硬くて細長く節がよく目立ちます。
セッコクは江戸時代から続く古典園芸植物でもあり、東洋ランとしての呼称は「長生蘭」で主に葉芸を楽しむ独特の文化があります。

  • 難易度: とても丈夫です。
  • 日照量: 木漏れ日程度の光を好み、強光線が当たり続ける場所には向きません。
  • 水分量: 乾燥に強いです。
  • 耐寒性: 耐寒性は強いです。

セッコクの育て方

着生種のため普通の植物とは異なる植え付け方をします。鉢植えの場合は鉢の中にネット等で枠を作り、ミズゴケをドーム状に配置して根を広げるようにして植え付けます(鉢植えの項目を参照)。ほかにヘゴ板仕立てや、岩に植え付けたり、庭木に直接つけたりと比較的自由な配植が可能。小さな苗から育てると花が咲くまでには3〜4年程度育成が必要です。
半日陰程度の日照で十分花は咲きます。晩秋から春は日当たりの良い場所に置いても問題ありませんが、葉焼けを防ぐため初夏から初秋は遮光します。いったん根付けば水やり以外はほぼ放任でも育つほど丈夫です。水やりはミズゴケだけでなく株全体に与えます。
東北地方でも自生が見られるとおり、寒さに強いため屋外で育てられるランです。関東以西であれば防寒の配慮は特に必要ありません。

  • 管理:花が咲き終わったら花径を切り取ります。管理の手間はほとんどなく、水やり以外はほぼ放任でも育ちます。植え替えは株が大きくなりすぎたりミズゴケが劣化した頃に行いますが、頻繁な植え替えは必要ありません。植え替えの適期は春から初夏です。
    真夏は少し乾かし気味に管理すると花が咲きやすいです。また、冬の休眠期の水やりは控えめにします。
  • 肥料:着生後で、花もよく咲くようなら無理に肥料を与えなくて構いません。生育が悪ければ春に長期間効く固形肥料(液体肥料の場合はかなり薄めにします)を少量与えます。
    多肥や春以降の施肥は逆効果になることもあるので控えます。
  • 病害虫:ほとんど発生しません。

鉢植え(ミズゴケ植え)

ミズゴケ植えミズゴケ植え
ネット(100円均一で売っている鉢底ネットで良い)などで土台となる枠を作ります。枠の素材は腐りにくく水をよく通すものなら何でも構いません。

ミズゴケ植え
枠に被せるようにドーム状によく湿らせたミズゴケを配して、根を広げるようにしてセッコクを植え付けます。根は細い針金(着生後は外す)で固定します。

セッコクのアレンジ

和風や自然風の庭に向いていますが、癖の少ない白花種なら洋風の庭にも合います。
普通は鉢植えにしますが、ヘゴ板仕立てや、庭木に直接つけるような植え方も可能です。着生種のため地植えにはしません。根が露出し野性的な雰囲気になるので、整然とした庭には使わないほうが無難でしょう。

セッコクの主な品種

赤紫など花色違いの品種が出回ることがあります。
キバナセッコクやその交配種、いくつかの地域変種がありますが店頭で出回ることは少ないです。

赤紫花の品種
赤紫花の品種。発色には個体差があります。

その他の写真

セッコクの葉や茎のアップ
葉や茎のアップ。

暖地で冬越し中のセッコク
南関東の暖地で冬越し中(1月頃)のセッコク。多少葉を落としたり黄葉していますが、葉を残したままです。冬の寒さが厳しくない場合、落葉が新芽が出る春以降になることもあります。

セッコクの個人的な印象

オススメ度:★★★★
丈夫で育てやすい初級者向けの野性ラン。日本に自生しているため耐寒性があり、屋外栽培が可能なのも魅力です。乾燥に強いので水やりが不定期になりがちな人にもおすすめ。

コメント

  • セッコク(石斛)は本来、中国原産の近縁種にあてられた名称です。
  • 鉢植え栽培は品質の良いミズゴケを使用するのがポイント。毎年植え替える必要がなくなり、結果的に得する上、花も咲きやすくなります。
  • 庭木に直接つけて育てる場合は、根が食い込みやすい幹が荒れた樹木につけると良いでしょう。ブナ類やスギなどの荒れ具合が適しており、サルスベリやツバキ類などつるつるした幹は避けます。簡単に場所を移動できないので、生育環境の条件が合うかどうかよく確かめてから植えつけましょう。
  • 繁殖は株分けで行います。大きくなった株を植え替える際に同時に行うと良いでしょう。すぐに花を咲かせたい場合はあまり細かくバルブを分けないようにしましょう。
    バブルの先に出る、根が出た芽を取って株分けする高芽取りという方法もありますが、高芽が出やすい場合は生育環境があまり良くないので注意しましょう。
    他に矢(バルブ)を付け根から切り離して、ミズゴケ植えにして芽を出させる矢伏せという方法もありますが、生育旺盛で簡単に株分けが可能なので、大量に増やしたい等の特別な事情がなければ無理にすることもないかと思います。
  • ミズゴケをドーム状にせず、鉢にミズゴケを詰めて植え付ける簡易な方法も紹介されていますが、水が滞留するのを嫌うセッコクの性質上向いていません。また、ミズゴケが劣化しやすくなるため植え替えの手間も多くなりがちなので、最初にひと手間を加えてあげる方が個人的には良いと思います。
  • 砂利のような専用用土に根を埋めて植えつける方法もあるようですが、着生する性質を考えると個人的には好ましいとは思えません。
  • 乱獲等により各地で見られた大株は失われてしまいましたが、性質が非常に丈夫なため徐々に山地等で普通に見られるようになってきました。東京近郊では高尾山が有名です。
    なお、店頭や即売会で出回っている小さな株は自然から採取されたものではなく、株分けされたものなので安心して利用できます。

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