土づくりは植物栽培の基本であり、かつ奥が深いものでした。しかし、最近ではそのまま植えられる培養土が多く出回り自分で土を作る機会も減ってしまいました。
以前は粗悪なものも多かった培養土ですが、今では少しお金を足せば粒状培養土など優れたものを購入することができ、少量使うならむしろお得です。大量に作りおきでもしないかぎり、自分で用土を配合することの重要性は減ってきています(育てる植物がどんな土を好むかを知っておくことの大事さは今も変わりませんが)。
ですが、庭土の改良に培養土を全面に撒くのは効率的ではありません。広めの花壇がある方には改良用土の知識はまだまだ必要です。
ここでは様々な園芸用土の紹介をしていきます。
すでにそのまま使えるように配合された用土。汎用性のあるものが一般的です。ほとんどの植物に使えますが植物の好みに合わせて改良用土を加えるのもありです。中にはサボテンやセントポーリア、ランなど用途を限っているものもあります。
販売会社や値段によって品質に幅があります。メーカー名や配合用土の中身が書いていないもの、あまりにも安いものは避けます。
汎用性のある一般的な培養土です。
必要な分だけ購入でき便利ですが品質に幅があるので気をつけましょう。
粒状に処理された土が配合されている用土。通気性と水はけにとても優れています。
※普通に販売されるポット苗と土質があまりに違うためにうまく育たないことがあります。なるべく元の土を落として植えつけますが、移植を嫌うものはそれが難しいため意外な弱点になっています。
タネまきや挿し木用に使われます。ピートモスなどが主体で粒が細かく、無菌用土で混合されています。酸度は調整されているので問題ありません。立ち枯れしやすい苗では必須の用土です。
混ぜる際の基本となる用土です。
通常は単用しないで、植物の性質に合うように改良用土を配分を変えて混ぜます。
赤みの強い土で、弱酸性の用土。水はけ・水もち・肥料もちにやや優れています。弱点の少ない万能タイプの土なので、培養土もこの土を基本にしていることが多いです。
単品では粒の大きさによって小・中・大に分けられて販売されています。大きい粒のものは樹木用ですが、底に敷く軽石がわりに使われることもあります。
黄色みの強い土で、酸性の用土。水はけに優れ・水もちにやや優れています。土の肥料分は少ないですが、肥料もちはやや優れています。赤玉土に比べると、粒がしっかりしていて長持ちします。また、湿っているときと乾いているときの土の色の違いが顕著なため、水切れが分かりやすい点も長所。
培養土以外にも、酸性用土なのでサツキや山野草を植えるのによく用いられます。
こちらも粒の大きさによって分けられて販売されています。
基本用土として広く使われる赤玉土や鹿沼土ですが、長い間使い続けると粒がつぶれて水はけや通気性の極端に悪い土になってしまいます。単用での使用は避けるべきで、腐葉土と砂などを混ぜ合わせるのが一般的です。特に水はけを好むものは砂を多めに混ぜます。水やりの頻度にもよりますが2年程度が使用期限です。つぶれやすい弱点を補うために、焼きを加えて潰れにくくしたものも出回ります(無菌にする意味もあり)
赤玉土の中でも産地によって潰れやすさに違いがあります。硬いものは盆栽や山野草などによく使われています。水はけと日持ちのよさがアップしていますが、その分やや高価です。
水はけがよい分、保水性はやや劣ります。土に水分が少ないので凍っても影響を受けにくいです。
名のとおり黒めの土です。野菜栽培ではおなじみの用土で、肥沃で比重が重いのが特徴です。保水性と保肥性に優れています。
使い方は赤玉土や鹿沼土に準じますが、水はけのよい土を好む植物にはあまり使われません。
黄色〜茶色の硬くて比重の軽い用土。感覚的には鹿沼土と軽石(特殊な用土の項目参照)の中間のような印象があります。水はけと通気性にとても優れており、改良用土としても用いられます。
粘土質の田んぼの土。保水性と保肥性に優れていますが、水はけや通気性に劣るので、ハナショウブやスイレン栽培など特殊な用途で用います。この用土は例外的に単用されることも多いです。
基本用土だけでは満たしきれない部分を補うために用います。
庭土にも、これらの用土を用いて改良します。
主に落葉樹を発酵させてつくる、一番よく用いられる改良用土。通気性に優れ、水はけや水もち、肥料もちなどを改善し、微量要素を添加する効果もあります。弱酸性用土。
なるべく黒っぽくなった発酵済みのものを用います。発酵が中途半端なものは、発酵のさいに熱を出すので根にダメージを与えます。写真1枚目程度の発酵具合のものは鉢植え向き。写真2枚目程度のものは庭土向きです。
庭が広い場合は大量に使う必要がありますが、そのような場合は圧縮された大容量パッケージで販売されるものを選ぶとよいでしょう。
様々な種類があり、ちょっと漠然としていますが、基本的にはわら・もみ・樹皮など植物系のもの(写真1枚目)と、牛糞・鶏糞などの家畜系(写真2枚目)のもの、あるいはそれらを合わせたものです。だいたいは腐葉土より粒が細かく、やや肥料分が豊富なものが多いです。通気性、水はけ、保水性、保肥性を改善し、微量要素を添加する効果もあります。
腐葉土と同じく、よく発酵したものを用います。
庭土や大鉢に用いるととても効果的なのですが、家畜系のものは臭いの問題もありマンションのベランダなどでの使用は避けたほうが無難です。
野菜栽培はもちろん、バラやボタンなど肥料分を多く必要とする植物の栽培によく用いられます。
苔などが堆積されてできた強酸性用土です。改良用土としての利用が主ですが基本用土として用いられることもあります。保水性に優れ、やや通気性も優れています。
乾燥しきったものは、水になじむまでやや扱いづらい面があります。
軽量でハンキングバスケットによく用いられます。タネまき用土や、酸性の土を好むブルーベリー栽培でもよく用いられます。腐葉土より見た目がよく清潔度も高いので室内栽培用にも使われます。
粒の細かい砂で、水はけや通気性に非常に優れていますが、保水性や保肥性はほとんどありません。
サボテン類や多肉植物によく用いられますが、水はけを好む植物にも積極的に使えます。
通常は川砂よりもやや大きめの粒で、写真上の富士砂や写真下の桐生砂が一般的です。
富士砂は火山礫で黒っぽく、粒の大きさは3〜8ミリ程度です。水はけや通気性に優れています。
桐生砂も火山礫で黄色みが強く、粒の大きさはまちまちです。通気性に優れ、保水性にもやや優れています。
ひる石を高温で固めたもので、板状のうすい石が積層している不思議な用土。保水性と通気性に優れています。焼成された無菌用土なので、タネまきの土にも使われますが、普通に売られているものは粒がやや大きめなので、細かいタネには細かい粒のものを用います。
とても軽量で、ハンキングバスケットやベランダガーデンに多用されています。また、清潔感があるので室内栽培用途にも向いています。
真珠岩を高温で焼いた無菌用土で、粒状の白い砂のような用土です。通気性と水はけにとても優れています。とても軽い用土です。
とても軽量で、ハンキングバスケットや吊鉢栽培によく用いられます。
もみ殻を炭化させたもの。通気性と肥料もちの改善、酸性土壌の中和に効果があります。また、カリ分を含むため多少の肥培効果もあります。
上記3種に分類できない特殊な用土です。
北方に生える水苔を乾燥したもので、細長い苔そのままの形をしています。保水性と通気性に優れています。
マルチングや、根の通気を好むラン栽培などに用いられます。
樹皮のチップ。粒はやや細かいものから大きめのものまで様々です。通気性に優れています。
鉢植えの表面を飾ったり、庭木等のマルチングでよく用いられます。
多孔質の白くて軽い石。排水をよくするために底に薄めにひかれます。ただ、縦長の鉢や大鉢以外は必ずしも使う必要はありません。むしろ底の浅い鉢に無理に使うと根の成長を阻害することもあります。
最近は植え替えのときに取り出しやすいように、ネットに入ったものも販売されていますが、プランターなど形に合うものには便利ですが合わないと逆に使いづらいです。
湿地植物が堆積してできた粘土状の黒めの土。被膜力が強いので、コケ玉や盆栽のコケの土台に用いられます。普通の鉢植え等にはほとんど使われません。
丸い形に焼成されている無菌用土。ハイドロカルチャーと呼ばれる室内水耕栽培専用に用いられています。とても軽く水に浮きます。他の用途で使うことはまれです。
微量要素や酸度調整に用いるものです。用土とはいえませんが土づくりにかかせません。
土壌の酸度中和に用いる石灰や苦土は植えつける一週間くらい前に施します。
珪酸塩白土を乾燥処理したもの。家庭向けの「ミリオン」、プロ向けの「ソフトシリカ」の商品名で出回っていることが多いです。白い粉末〜石状の形をしています。水を浄化して清潔に保つ他、ミネラル分補給や、肥培効果を高める効果があります。
根腐れ防止目的で土に混ぜたり鉢底にひいたりします。水腐れを抑える効果があるので水栽培にも用います。粉末状のものは挿し木などの際にも使われます。
白や灰色の粉末〜粒状で酸度調整に用います。酸性の土をアルカリ性に傾けますが、効果は緩やかで扱いやすいです。また、マグネシウムの補給にも効果があります。
家庭園芸では粉末状のものより粒状のものが扱いやすく便利です。
草や木を燃焼させてできる灰で、白や灰色の粉末〜粒状。アルカリ性が強く酸度調整に使われます。また肥料としてカリ分・微量要素添加に用います。苦土石灰に比べると肥料としての使用が主です。
カリ分が多いため、特に球根類の花後の肥料としてよく用いられています。また、寒さに弱い植物の冬越し時の体力をつけるために、秋に施肥するのも効果的です。
白い粉状で、苦土石灰と同様に用います。効果が極端で家庭園芸では扱いづらいです。
長く単用すると土壌が固くなると言われています。また、人体に害があるので特別な理由がない限り、酸性土壌の中和には苦土石灰を用いたほうが無難です。
古い土の再生に使われる改良用土。腐植や微量要素で構成されているものが多いです。
ベランダ園芸など古土の処分に困る方にとってありがたい用土ですが、まだ団粒構造を残している古土ならば再生は十分可能なのですが、すでに粒が崩れ水はけが極端に悪くなった用土に使っても大きな効果は期待できません。
※日本は火山国のため酸性土が多く、アルカリに傾ける改良用土が多く出回っています。