神奈川県横浜市にある、実業家の原三溪が造りあげた庭園です。庭園の形式は日本庭園とされていますが、ナチュラルガーデンに通じる形式にとらわれない作庭部分も多いです。
また、各地から集められた歴史的建造物が移築され、園の自然と調和しているのも特徴です。
入口は北にある正門と、南門の2か所。どちらから入ったとしても大池を中心にして気になるところから巡っていけば良いと思います。
ここでは大池から三重塔に登り、そこから反時計回りで主な見どころを紹介します。
1906年(明治39年)から一般公開されてるエリア。池や渓流、植栽のある起伏に富んだ敷地に、三重塔をはじめとした移築された建築物を配しています。
園の中心にある大きな池。周囲は傾斜があり余計なものは見えないようになっています。
様々な花木も植えられており、特に春のサクラや初夏のツツジが見所です。
室町時代の1457年に建てられ、京都から移築された重要文化財の旧燈明寺三重塔(きゅうとうみょうじさんじゅうのとう)。三重塔が建つ丘の上に行くには急な階段や坂を登りますが、距離は短いので焦らず行けば大丈夫です。
塔の横には展望台があり、大池や旧燈明寺本堂方面を望むことができます。
三重塔から尾根に沿って松風閣へ。建物は再建されたもので展望台になっています。
昔はここから海岸線が望めたそうですが、今は高速道路と工場群が見えます。
梅の名所として知られるように、各所にウメの木が植えられています。
竜が地を這うような枝ぶりの臥竜梅(ガリョウバイ)や、ガクの部分の緑色が特徴の緑萼梅(リョクガクバイ)など珍しいウメも見所です。
渓流状の流れに沿って茶屋などの建物や橋がある、とても雰囲気が良いエリア。
大池部分が田園風景なら、こちらは山里の景色といえるでしょう。花木や草花は少なめですが、落葉樹が多くナチュラルガーデンに通じるものがあります。
建築物は一部を除いてほぼ移築されたものですが、配置は考えられており違和感はありません。
1枚目の写真は縁切寺としても有名な、鎌倉にある東慶寺から移築した建物(重文)。
2枚目の写真は飛騨から移築された古民家の旧矢箆原家住宅(きゅうやのはらけじゅうたく・重文)で内部の見学が可能です。
移築した建築物ではなく、三渓自らが建て住居としていた鶴翔閣(かくしょうかく)。
鶴翔閣の手前には睡蓮池が広がります。スイレンは初夏から秋が見頃です。
睡蓮池の隣りにある蓮池。蓮の花は三渓が好んだ花とされ、比較的大きな群落が見られます。原始蓮という品種の大型の蓮が多いのが特徴で、葉や花は背丈をゆうに超えます。
とりわけ、三重塔をバックにした風景はフォトジェニックです。
開花最盛期の7月下旬~8月中旬にはハスに関するイベントが行われており、早朝入園や、普段は歩けない蓮池周囲の園路も特別開放されます。イベントについては下記のリンクも確認ください。
三渓園の観蓮会
原家が私邸や文化サロンとして利用していたエリア。臨春閣を中心にやや小さめな古建築群が配置された、外苑に比べると繊細で落ち着いた庭園となっています。
御門から内苑に入ります。別の空間に入っていくという雰囲気作りにも一役買っています。
外苑に比べると、複数の建物がコンパクトに建つ内苑。
原家の私庭としていただけあり、外苑に比べ繊細なつくりになっています。
とりわけ大きな建物の臨春閣(りんしゅんかく・重文)は内部の意匠も興味深いです。
流れのそばに立つ聴秋閣(ちょうしゅうかく・重文)。周りにはモミジが植えられ新緑や紅葉の時期は美しいです。
移築前の建物は池のような水辺に建っていたのではと言われていますが、移築の際に建物の側を水が流れる趣向にしたことに、三渓のセンスの良さが垣間見れます。
初夏や晩秋など季節に限って公開される聴秋閣の奥にある遊歩道。
磨り減った階段の石に園の歴史を感じます。
遊歩道から見下ろす聴秋閣の景色が園内でもっとも人気のあるフォトスポットですが、雨で濡れているときなどは滑りやすいので注意。
また、撮影場所が狭いので占領せず譲り合いましょう。
斜面から流れる水の流れと、それに沿うように植えられた多年草や樹木。従来の日本庭園で重要な要素であった象徴や見立てなどを排した自然主義の作庭が見られます。
近代化の中で急速に失われていった日本の原風景への憧憬だったのかもしれません。
三渓ゆかりの資料や美術品を展示しています。併せて気軽に抹茶が頼める茶室もあります。
散策に疲れたら一休みするのもよいでしょう。
植栽と建物、点景などフォトジェニックな景色が園内各所で見られます。四季それぞれにお気に入りの場所を探してみてはいかがでしょうか。
植栽された花のほか、各種花の展示も行われているので公式HP等で確認すると良いでしょう。
園内には和風の軽食や、昼食向きの食べ物が楽しめる各種茶屋や飲食店があります。
待春軒で、三渓が考案した三渓そばを一度は味わってみるのもよいでしょう。
場所
神奈川県横浜市中区本牧三之谷58−1
交通手段
■公共交通機関
◇正門側
JR「根岸」駅よりバスで約10分「本牧」下車、徒歩10分。
JR「横浜」駅よりバスで約35分「本牧三溪園」下車、徒歩5分。
◇南門側
JR「根岸」駅よりバスで約10分「本牧三溪園」下車、徒歩3分。
■車
首都高速湾岸線「本牧ふ頭」より約5分。
首都高速湾岸線「三溪園ランプ」より約5分。
駐車場あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.sankeien.or.jp/
庭園デザイン:★★★★★
大正時代に完成した近代的庭園とあって、見立てや形式にこだわらない自然風の景観が楽しめます。特に石組に頼らない池や小川の水際のデザインが上手です。
移築された建物と自然との調和もよい雰囲気。敷地が広いとはいえ、これだけの建物を移築したら雑然としかねませんが、上手に池や水の流れ、高低差や樹木等を用いて違和感をなくしています。
植物充実度:★★★★
見所の花は多くありますが、特に春のサクラ、初夏の新緑、ツツジ、晩秋の紅葉の美しさは定評があります。早春のウメや夏のハスの花も美しいです。樹木や野草も多め。植物の管理状態は良好。
娯楽度:★★★★
サクラや紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。ウメやツツジ、新緑の季節も花や庭園に興味が薄い方と一緒でも楽しめるでしょう。ハスの花も綺麗ですが散策には向かない真夏が最盛期となります。それ以外の季節はゆっくり散策するのに向いています。
暑い時期は三重塔側に登らずに巡るのも良いかもしれません。
周辺観光でいえば、みなとみらいや横浜赤レンガ倉庫、中華街、山手西洋館など横浜の観光地が近く楽しめるでしょう。
個人的なおすすめは、横浜駅から一駅で行ける横浜イングリッシュガーデンになります。
混雑度:★★★★
サクラや紅葉の最盛期はとても混雑します。特に、紅葉時にゆっくり観賞したいなら平日に訪問するなど工夫しましょう。それ以外の季節は混雑することは少ないです。落ち着いて庭園を楽しみたければ、新緑が美しい初夏や、苔が美しい梅雨の時期もお勧めの季節になります。
施設内は広く、オープンスペースもかなりあるので、混雑時でもゆっくりできる場所はあるでしょう。
交通の便:★★★★
公共交通機関利用の場合、最寄り駅から直接歩くことは難しいですが、根岸駅から頻繁に本牧行きや本牧三溪園行きのバスが出ています。横浜駅からもバスがありますが時間がかかります。
車の場合、正門側の駐車場は混雑しやすいですが、本牧市民公園の駐車場は余裕があるので、普段は車で来ることに不安はありません。一方で、サクラや紅葉の季節は混雑しやすく朝方や平日にするなど工夫したい所。土日祝は公共交通機関を利用することも考えておきましょう。
総合満足度:★★★★★
一般的には日本庭園とされていますが、あまり形式にこだわってない自然な雰囲気で個人的に好みです。特に水の流れのあるところや、内苑全体はナチュラルガーデンに通じるところがあります。もちろん有名なサクラや紅葉も首都圏では屈指の景観が楽しめるのは大きな魅力です。
季節により建物の内部を見学できたり、普段は入れない場所に入れたりするので、イベントを公式サイトやSNSなどで確認しておきましょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
早春(ウメ)
春(サクラ)
中春~初夏(新緑、ツツジ、サツキ)
夏(ハス)
晩秋(紅葉)