日光田母沢御用邸記念公園は栃木県日光市に位置する、重要文化財の建物と庭園のある有料公園。
皇族が三代にわたって利用した日光田母沢御用邸は、江戸・明治・大正という様々な年代の建築様式を併せ持った大規模な建物です。また、建物の南側に広がる庭園も見所です。
こちらでは、サイトの趣旨に合わせて、庭園と、そこに咲く花を中心に主な見どころを紹介します。
地図を見るだけでも、日光田母沢御用邸が非常に大きな建物であることが分かると思います。
主に庭園は建物の南側に広く取られており、庭の散策のほか、建物からの展望も楽しめます。
最初に建物内を見学したあと、庭園を散策する順で主な見どころを紹介します。
正門は東側にあります。駐車場やバス停は北側にある通用門の方が近いですが、御用邸の雰囲気を十分に味わいたいなら少し遠回りして正門から入ってみましょう。
正門をくぐると、針葉樹の並木道が出迎えてくれます。
公開エリアの出入口となっている御車寄(みくるまよせ)
赤坂離宮にあった建物から移築したもので、格式の高さを感じさせる立派な玄関となっています。
建物内には順路があるので従いましょう。
なお、季節限定で特別公開されているエリアもあります。訪れた時期によっては、紹介している場所に入れないこともあるので承知ください。
広々とした休憩所からは、大きな中坪(中庭)の景色が見渡せます。
美しく刈り込まれたクマザサが見所。
日光田母沢御用邸に関する歴史展示のほか、様々な装飾品を鑑賞できるエリア。
襖絵のほか、錺金物(かざりかなもの)、畳縁(たたみべり)などがまとめて見られます。
これら装飾品は建物内の様々な場所にもあるので、注目してみるとよいでしょう。
御用邸の一番重要な部屋で、天皇陛下が滞在中に公式に謁見する場所でした。
建築様式は書院造りでありながら、内装は絨毯やシャンデリアの和洋折衷の部屋となっています。
天皇陛下の書斎として使われていた御学問所(おがくもんじょ)には、大きな丸窓があります。
この丸窓から見た庭園の景色は、御用邸記念公園の大きな見所の一つです。
丸窓から見た景色は各季節見所がありますが、特に春のシダレザクラの咲く頃は見応えがあります。
シダレザクラの開花最盛期は例年4月中旬〜下旬頃ですが、年によりブレが大きいので、公式サイトやSNS等で事前に確認しておきましょう。
普段は立ち入ることができない御食堂室内や、写真の2階にある御日拝所(ごにっぱいじょ)は、秋の紅葉の季節に合わせて特別公開されています。
ここ以外にも、イベント時のみ立ち入れる場所が多いので、興味があれば公式サイトでイベント情報を確認してみましょう。
基本的に春と秋に特別公開が催されることが多く、3階の御展望室のみ冬に公開しています。
春に特別公開される、皇后御座所(こうごうござしょ)の2階にある御次の間からは、丸窓で見たシダレザクラを間近で観賞できます。
シダレザクラの樹齢は約400年、樹高は15mという立派なもので、御用邸記念公園の大きな見所の一つといえます。
建物内部の紹介はここまで。
いったん入口に戻り、入口を出て向かって右側にある庭園出入口から庭園へ向かいましょう。
特に形式にこだわっていない、自然主義的な和風庭園となっています。
庭園には順路はなく、横道も多いので、自由気ままに散策できます。
建物東側には、水の流れのある静かな庭があります。
春にはミズバショウの花が見られます。
南側にある庭園(南庭)は、西から東にかけて水の流れがあり、その流れの先に池があります。
池越しに見る御用邸とシダレザクラが美しいです。
庭園の東側には小高くなった場所があり、園内を高い位置から見渡せます。
特に、紅葉の時期は見応えがあるので見逃さないようにしましょう。
御用邸に近づいてみると、建物に覆いかぶさるようなシダレザクラの量感がわかります。
歴史を感じさせる、立派なシダレザクラの幹。
幹回り(地上1.2mから測った幹周囲の長さ)は4mあるとのことです。
庭園から見る3階展望室と、シダレザクラ。
展望室は冬のみ特別公開されるため、春や秋には立ち入ることができないのが少し残念です。
さらさらと流れる控え目な小川と、よく整えられた紅葉する樹木。
歴史的なことも含め、どことなく上品な雰囲気があります。
庭園西側には紅葉する樹木が多く植えられており、秋には赤や黄色に美しく染まります。
赤い紅葉ばかりでないところに、日光という環境に合わせた、自然風の良さを感じます。
庭園南側にはひっそりと防空壕入口があります。秩父宮記念公園でも見られるように、皇族方を安全に避難させるために造られたのでしょう。
なお、防空壕内部は非公開となっています。
帰りは、入口に近い通用門から出てしまってよいでしょう。
また、通用門の東側には休憩広場があり、茶寮(レストラン兼喫茶店)が建っているので、立ち寄ってみるのもよいでしょう。なお、茶寮は営業時間が短めなので注意しましょう。
場所
栃木県日光市本町8−27
交通手段
■公共交通機関
JR日光駅、東武日光駅より路線バス「日光田母沢御用邸記念公園」下車1分。
■車
日光宇都宮道路「日光IC」から約10分。
※駐車場あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.park-tochigi.com/tamozawa/
庭園デザイン:★★★
御用邸の規模に対してみるとあまり広さはないですが、見立てや象徴に依存しない、自然主義的な和風庭園で個人的に好みです。ミズバショウなどが植えられた水の流れや、雑木の植栽などに、日光という環境を生かした工夫がみられるのも良い点です。
また、建物窓からの景色や、2階からの展望が楽しめるのも魅力です。
一方で、やはりボリュームがやや足りないのと、庭の構成が少し単調であることは気になります。
植物充実度:★★
落葉樹木が多く、新緑や紅葉の時期は美しいです。ただ、シダレザクラの植栽は1本で、ミズバショウやクリンソウなど草花類も見られますが多くはなく、植物の充実度としては低めの評価。
植物の管理状態はとても良好です。
娯楽度:★★★★
紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。また、シダレザクラは1本ですが見応えは十分で、開花最盛期なら満足できるでしょう。
それ以外の季節は派手な景色は望めず、ゆったり散策するのに向いています。
周辺観光でいえば、日光東照宮、輪王寺や逍遥園、神橋など候補はいくらでもあるので事前に調べておくとよいでしょう。
個人的には、隣にある日光植物園を強くお勧めします。
混雑度:★★★
紅葉の最盛期はやや混雑します。シダレザクラの時期も少し混雑します。
紅葉最盛期にゆっくり観賞したいなら平日に訪問するなど工夫しましょう。それ以外の季節は混雑することは少ないです。なお、日光そのものの混雑には留意しておきましょう。特に紅葉時は周辺道路や駐車場、バス車内が大混雑します。特に、東照宮周辺はインバウンドによる混雑が激しいです。
施設内は広く、オープンスペースも多めなので、混雑時でもゆっくりできる場所はあるでしょう。
交通の便:★★★★
公共交通機関利用の場合、 駅からは遠いですが、日光の観光地に隣接しており、バスの本数はかなり多いので交通の便はやや良い評価。
車の場合、高速インターから近いですが、周辺道路が混雑することがあります。
特に、紅葉の季節は公共交通機関の利用も考慮しましょう。
総合満足度:★★★
庭園デザインは自然風景式庭園の印象が強く個人的に好みです。また、御用邸も含め全体的に上品な、心地の良い空間になっているのも魅力です。一方で、御用邸に比べると庭園のボリュームが少し物足りないのと、直線的な水の流れにもあるように、やや単調なデザイン構成なのが気になります。
御用邸内部も含めると各季節楽しめますが、シダレザクラの咲く春、新緑が美しく花も多い晩春から初夏、紅葉の美しい秋から晩秋が一番見応えがある時期になります。遠方からくる場合は、これらの季節に訪れると満足度が高く良いでしょう。
隣にある日光植物園とセットで楽しめるのが、評価にも良い影響を与えています。植物愛好家であれば両方を一緒に観賞するつもりで滞在時間を考えておくとよいでしょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(シダレザクラ)
晩春〜初夏(クリンソウ、新緑)
秋〜晩秋(紅葉)
※シダレザクラの開花最盛期は非常に短いので、公式サイトやSNS等でチェックしましょう。