大阪市立長居植物園は大阪府大阪市東住吉区の長居公園内にある植物園。大阪市街地に近く利便性の良い場所にありながら、バラ園やアジサイ園などの専門園や、大きな花畑に咲く季節の花、大きな池を彩る水生植物など、様々な花や植物を観賞できます。
また、緑あふれる府民の憩いの場「都会のオアシス」としても親しまれています。
さらに大阪市立自然史博物館と一体となった自然観察や自然学習の場としての側面もあります。
大きな池を中心に各所に専門園が設けられています。
出入口は長居駅から近い正門のほか、花と緑と自然の情報センター内や、無人受付で事前手続きが必要な地元民向けの北東ゲートがあります。
このページでは正門から入園し、反時計回りで主な見どころを紹介します。
正門から入ると、大池までの園路の両側に立派なラクウショウの並木がみられます。
新緑など各季節見応えがありますが、特におすすめは紅葉する晩秋になります。
園のかなりの面積を占める大池。園内各所から見えるため、景色の統一感や開放感の演出に貢献しています。また、北側ではスイレン等の水生植物も観賞できます。
池畔にはサルスベリが適度に植えられた広場があり、下草に季節の花が見られます。
自然史博物館の前にある広場には大きな花壇があり、季節の花が植えられています。
花で彩られたハートのオブジェがあり、記念撮影にもよいでしょう。
整形庭園風の広いバラ園。種類も数も多めで長居植物園を代表する花の一つといってよいでしょう。
また、背景に見えるワシントンヤシと合わせた景色も見所です。
見頃は例年、初夏バラが5月上旬から下旬、秋バラが10月~11月ごろです。
2019年に新設されたバラの回廊は、つるバラやクレマチスが植えられ、立体的な景色が楽しめるようになっています。特に、白い花が咲くアイスバーグの量感が見事です。
すでにバラ園の新しい名所となりました。
バラ園の南にある大きな花畑。例年は晩春にネモフィラ、夏にヒマワリ、秋にコスモスが咲きます。
見頃はその年の気候によって異なるので、公式サイトやSNS等で確認ください。
身近な野菜等が植えられたキッチンガーデン。ナノハナやソバなど花の美しい野菜も多く植えられています。背景の作業小屋が良いアクセントとなっています。
隣接するハーブ園も様々な種類が見られます。特に初夏に咲くラベンダーが見所。
薬草として渡来した中国原産のシャクヤク。花の美しさの方が有名ですが、現在でも生薬として用いられています。見頃は例年4月下旬ごろ。
点在する樹木は同じ中国原産のシダレエンジュです。
バラ園の裏にあるジャガランダの群生。南米原産の落葉高木で青紫の花が美しいです。
以前は、冬のある日本では美しく咲かせることが難しかったのですが、近年は温暖化の影響のためか、写真のように樹冠一面に咲かせることも増えてきています。
見頃は例年6月ごろ。
専門園にはなっていませんが、ダリアの花畑があり量感があって見所になっています。
見頃は例年6月と11月ごろ。
自然史博物館とのつながりで「大阪の森の移り変わり」を展示しているとのことです。園内にはいくつかこのような展示の森が見られます。なお、二次林とは、元々あった森林が様々な理由で破壊され、自然に再生した森林のことです。
本来の趣旨の「生きた展示」としての自然観察や自然学習としてはもちろん、森林浴感覚で気軽に散策してみるのもよいと思います。
丘のようになった場所にあるシャクナゲ園。
高木が周囲に植えられており、木漏れ日程度の日照を好むシャクナゲの性質とよく合っています。
園の地図では「カピラリス」としか書かれていませんが、園芸ではミューレンベルギアの名でよく知られているイネ科の多年草。秋になると赤い穂をつけ美しいです。
園の北側にあるアジサイ園。樹林下の小川が流れる、適度な日陰と湿り気のある場所はアジサイによく合っています。比較的規模が大きく、専門園の中でもバラ園に次ぐ人気の花といえます。
見頃は6月ごろ。
やや狭い面積ですがサクラの林があり、春にはお花見する人で賑わいます。
園内には他にも点在してサクラの花が見られます。
大池を背景にして様々な水性植物が見られます。池と園路の距離が近く、間近で観賞できます。
また、池に浮かぶスイレンも見所です。
地続きの出島のようになった展望島。それに続く一文字橋を渡れば池の景色が広がります。展望島にはサクラが多く植えられており、春には花が、晩秋には紅葉が楽しめます。
植物園とのセット券で安価に入館できる、充実した展示の自然史博物館。
花が目当ての場合でも、一度は見学してみることをお勧めします。意外な発見があるかもしれません。
緑の相談センターや各種展示、カフェ、ショップなど様々な施設のある建物。大阪の自然や淀川の魚などを紹介した常設展示もあり見学していくとよいでしょう。
また、緑化ボランティアなどの市民活動を支援する場でもあるとのことです。
休憩や飲食、観賞や観察で得た知識の確認などに使えるので、出入口付近にこういった施設があるのはありがたいです。
場所
大阪府大阪市東住吉区長居公園1−23
交通手段
■公共交通機関
Osaka Metro「長居」駅から徒歩約10分。
JR「長居」駅から徒歩約15分。
バスの便もあり、公式サイトを確認のこと。
■車
阪神高速14号松原線「駒川出口」から約10分。
阪神高速14号松原線 「文の里出口」から約10分。
駐車場あり(有料)
※民間委託されているため駐車料金は高め。公共交通機関利用を推奨。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://botanical-garden.nagai-park.jp/
庭園デザイン:★★★
大池を中心に専門園を各所に配置するデザインで、観賞しやすく見所もわかりやすいです。一方で、単調になりやすい面もあり、デザインとしてはやや退屈な面もあります。
バラ園は整形庭園風で、こちらも観賞しやすいですが、やはり単調で好みは分かれそうです。そうした中で、立体的なデザインを取り入れたバラの回廊は良かったのではないかと思います。
全体としては、公園風の親しみやすいデザインの施設となっています。
植物充実度:★★★★★
各季節で様々な花が見られます。バラ園などの各専門園が充実しているのはもちろん、専門園の名がついていないエリアでも多くの植物が植栽されており見所が多いです。また、樹木が多く自然散策的な楽しみができるのもよい点です。
一方で、植物園には珍しく大規模な温室がありません。必ずしも植物園に温室が必要とは思っていないので個人的な印象には影響しませんが、人によっては物足りなく思うかもしれません。
植物の管理状態は良好で、ボランティアの方も多く活躍されているようです。
娯楽度:★★★★
ネモフィラなどの花畑や、初夏バラの最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。サクラやアジサイ、晩秋の紅葉の時期もよいでしょう。各花の季節にはイベントが行われることがあるのでチェックしてみるのもよいでしょう。それ以外の季節はゆったり散策するのに向いています。
花と緑と自然の情報センター内にフードスペースがあるので飲食も可能です。
植物園を出ても、長居駅近くの長居公園内にある飲食店に寄れるのは良いところ。一方で、長居公園自体はスポーツ色が濃いため、植物好きからしたら他に楽しめるような場所はありません。
近隣の庭園・植物施設でいえば、大仙公園の日本庭園や、少し遠いですが鶴見緑地の咲くやこの花館などがおすすめです。
混雑度:★★★★
大阪市街地に近いことも影響し、初夏バラの最盛期はとても混雑します。他にもサクラやネモフィラ、アジサイなどの最盛期は混雑しやすいです。また、公園という側面も強いため大型連休中も混雑しやすいです。それ以外の季節は比較的混雑することは少ないです。
施設内は広く、オープンスペースも多いです。混雑時でもゆっくりできる場所はあります。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、電車の本数の多い最寄り駅から近く、とても良いです。
車の場合、専用の駐車場はありますが、民間委託の上、公園全体の駐車場を兼ねているため駐車料金がやや高めです。個人的には公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★
まず、大阪市街地から地下鉄で行ける距離に、これほど大規模な植物園があるのは素晴らしいです。東京市街地でいえば神代植物公園がそれにあたりますが、交通の便利さは長居植物園が明らかに優っています。市民の憩いの場としても交通弱者に優しい立地というのは大事なことだと思います。
また、大阪市立のため入園料が非常に安価なのもありがたいです。
さらに、大規模な花畑と、比較的珍しい植物が同時に充実しており、娯楽的な楽しみを求める方から、植物愛好家まで、様々な趣味趣向の人を満足させる展示を行っている点も好感が持てます。
一方で、施設の性格からすれば仕方がないことですが、全体的なデザインは公園的であるため、庭園デザイン的な面白味は少ないです。
備考:地下鉄駅の出口から長居公園の園路をたどって、植物園の正門に行けるのが良い所です。一方で、大阪以外の地域から訪れた場合は、大阪特有の自転車の多さに少し戸惑うかもしれません。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
晩春(ネモフィラ、シャクナゲ、ボタン、シャクヤク、季節の花)
初夏(バラ、スイレン、季節の花)
6月(アジサイ、ダリア、ジャカランダ、季節の花)
晩秋(コスモス、紅葉、ミューレンベルギア・カピラリス)