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小型水槽による水草レイアウトの紹介

小型水槽水草レイアウト

小型水草水槽の普段の管理と注意点

水槽維持のためにやらなければならないことがいくつかあります。ただ、小型水槽なので手入れの手間はたいしたことはありません。あまり水槽の中をいじくりまわさず、多少放任気味の方がうまくいくことが多いです。この点は、水陸問わず植物全般に言えることなのかもしれません。

水換え

  • 水換えは綺麗に維持するための必須作業。
    ろ過器があるとはいっても水槽内の水は日々汚れていきます。通常のろ過器では処理できない汚れ(硝酸塩など)もあるからです。そのままでは魚はもちろん水草にも害があるだけでなく、厄介なコケの発生を助長します。そこで水換えを行います。
    水換え用の安価な専用クリーナーが売られているので通常はこれを使用します。小型水槽用の小さなものを選びます。
  • 水換えの量と目安は?
    間隔は一週間に一度、3分の1〜4分の1程度の水を換えるというのが目安になります。一度に大量に換水するのは避けます。魚や水草(特にクリプトコリネ類)に負担が大きいからです。水換えの際には、なるべく底のほうのゴミや枯葉などと一緒に水を排出します。
    新たに加える水は忘れずに塩素を中和しましょう。
    初心者の方は上記の1週間に一度をまず守ってみてください。
  • 経験を積めば目安にはこだわらなくてもOK。
    水換えの間隔はソイル系の底床の場合はもう少し間隔をあけても大丈夫なことが多いです。また、魚の数が目安より少なければもっと間隔をあけることができます。
    飼育者のレベルが上がって水の状態がわかるようになれば、2〜4週間に一度の水換えでも問題なく維持できるようになります。はっきりした目安はなく、感覚的な話になるので経験を積むしかありません。

ろ過材の洗浄・交換

  • 水草メインならひんぱんに清掃しなくても大丈夫。
    外掛け式や内部式のろ材が汚れた場合は、新しいものと交換しましょう。交換は2〜4週間に一度くらいが目安です。あまり汚れてないようなら、ろ材を塩素の入っていない水(水換え時に捨てる水など)で軽くすすぐ程度でもOKです。
    外部式の場合はあまりいじりませんが、1ヶ月に一度は状態を確認して必要ならメンテナンスをします。1〜4ヶ月が目安です。
    底面式の場合は、砂や砂利の場合は底床クリーナーなどで水換えの際に綺麗にしますが、ソイルの場合は表面をなぞる程度にしておきましょう。

トリミング(剪定)・植え替え

  • トリミングは習うより慣れろ。とりあえず経験を積みましょう。
    トリミングはレイアウトを美しく見せる上で重要な要素です。
    水草は日々成長していきますので、伸びすぎたらトリミングを行い背丈や植栽範囲をコントロールしましょう。
    トリミングは「こうすれば上手くいく」といった決まった手法というよりも、水草の成長に合わせて加減するなど慣れによる部分が大きいです。バラなどの花木や果樹の剪定作業と似たものがあります。
    有茎草なら多少切り位置を間違えても問題ないので、回数をこなしてコツをつかみましょう。
  • 切るよりも植え替えたほうがよいことも。
    水草によっては引き抜いて適当な長さに切って、改めて植え替えを行ったほうがきれいになる場合があります。水草の頂部が美しいもの(トニナなど)はレイアウトの大きな崩れを防ぐことができます。
  • トリミングの方法について。
    トリミングの方法については別ページに簡単にまとめてみました

コケ取り

  • 初心者が水草水槽で一番悩まされることはコケの発生です。
    有茎水草が好む明るい環境下では気をつけていてもコケが生えてしまうケースがあります。
    水槽の前面のガラスなどは歯ブラシなど小型で使いやすいものを使ってきれいにしましょう。
    水草に生えてしまったものは無理に自力で取らず、エビや貝の力を借ります。
  • 実際には予防が一番大事。水換えをしっかりすること、エサをやりすぎないことを守って水をなるべく汚さないようすることが何よりです。水換えをきちんとしていて、魚の数が適正なら大量発生なんてことは少ないはずです。
    普段からエビ(ヤマトヌマエビなど)と、貝(イシマキガイやサザエイシマキガイ)はできるだけ導入しましょう。彼らのコケ繁殖抑制効果はあなどれません。
    コケが出ても簡単に対処できるコケと、そうでないコケがあります。
    詳しくは、注意点のVSコケをどうぞ。

添加剤・肥料・二酸化炭素を与える

  • 肥料のやりすぎは逆効果。
    生育不良になったり葉が白くならないように、コケの発生などにも注意しながら、液体肥料・微量要素・カリ分を添加します。製品に書いてある規定量よりも回数・量ともにやや少なめに与えるのがコツです。
    ただ、小型水槽の場合は液体肥料を与えると逆に調子を崩す原因になりやすいので、しっかり育っているようなら無理に添加しないほうがよいでしょう。
    二酸化炭素を添加している場合は、必ずライト点灯時のみの添加にします。小さな水槽では窒息の危険があるためで、特にエビ類は酸欠に敏感です。こちらも量はカウンターで2〜3秒に一滴程度と少なめにします。
    必須ではありませんが、ライト消灯時にエアレーションするのも酸素供給と油膜防止になるのでよいでしょう。

普段の管理まとめ

  • こんなところです。大した作業はありません。でも…。
    水換えはサボリやすいので注意です。これを怠るとコケの大発生や微量要素が足りないことによる水草の不調などを招き、最悪の場合は魚や水草が死んでしまいます。
    それから、死んだ魚はすぐ取り除かないと腐って水を汚します。枯れた水草も神経質になる必要はありませんが、なるべく早く取り除いたほうがいいでしょう。
    二酸化炭素添加の止め忘れ事故はよく起こしがちなので、ライト消灯時に添加を止める作業を習慣づける(ルーチン化してしまう)とよいと思います。

水草を育成・維持する上でいくつか注意点があります。
これらの知識を事前に知っているかいないかで、その後のレイアウトや水草の育成に大きな違いが出るはずです。

水中葉と水上葉

  • 水中葉と水上葉の違い。
    水草の多くは水中だけでなく陸上でも生活できます(沈水性種のように、水上葉をもたず水中でしか生きられないものもあります)。陸上に葉を伸ばす際は水上葉となり、水中葉とは異なる姿になる場合がほとんどです。水槽内では基本的に水中葉を育てることになります。
    問題になるのは、ショップでは水草が水上葉の形で売られていることが多いことです。
    どうしてかというと、水中葉よりも水上葉の方が茎や葉が丈夫でしっかりしており、育成や輸送の際などに便利なためです。(ショップの利便だけの問題ではなく、水草によっては水中葉の性質が弱く扱いが難しいという理由もあり一概に批難はできません。また最近は届く水草が水上葉か水中葉かを併記してくれる良心的な通販会社もあります。)

    ウォーターカーナミンの水上葉(水面上)と水中葉(水面下)
  • レイアウトの際から考える必要があります。
    ショップで買ってきた水上葉の水草を綺麗にレイアウトしても、水中葉に変化した際に大きくイメージが変わってしまうことがあります。水草を水中葉のまま売っているショップが少ない以上、自分で水中葉に変化した後のことを予測しながらレイアウトを作るしかありません。植える水草を選ぶ際に、この水草は水上葉から水中葉になったらどのように変化するのかを調べておく必要があるでしょう。

    水上葉と水中葉の変化の例として、
    かなり違うもの:ロベリアカージナリス、ウィステリア、グリーンロタラなど。
    あまり変わらないもの:ヘアーグラス、アヌビアス類、ウォーターバコパなど。
    沈水性水草(水上葉にならない):バリスネリアの仲間、アナカリス、マツモなど。

購入する器具について

  • 始めに水草育成向けの器具を揃えよう。
    水草は非常に正直な生き物ではないかと思います。器具の良し悪しによってその育成難易度が大きく左右されるからです。例えば、美しくて人気のあるリシアは高光量と二酸化炭素の添加さえあれば誰でも育てられますが、そうでなければ上級者でも綺麗に育てるのは難しくなります。飼育者のレベルに左右されがちな観賞魚の場合とは異なり、器具による影響力が大きいのです。
    なので、最初にしっかりと水草向けの投資をしておけば、その後は自分の育てたい水草を枯らすことなく育てられるため結局無駄がありません(良い水草は高価なものも多い)。ソイルのおかげでだいぶ育成が楽になったとはいえ、やはりそれだけでは綺麗に育てられない水草もまだ多いのです。光と二酸化炭素の条件もしっかり整えてあげることで水草の育成は非常に楽になるでしょう。

残留農薬について

  • 水草は輸入品も多い。検閲などによる残留農薬に注意。
    水草は輸入品が多いです。水草とはいえ農場で育てているときは水上葉の状態で管理しているため、害虫や病気の被害に合うこともあります。その際、病害虫は農薬をかけて殺してしまいます。また輸入の際、検閲の過程で薬による消毒を行います。
    そうした輸入品の中には、そのときの薬が残留したままの状態でショップに入荷しているものがあります。
  • 残留農薬の影響は?
    魚は意外と平気です。水草自体もそれが影響で枯れることは滅多にありません。
    しかし、エビ類はかなり被害に合いやすく、狂ったように泳ぎだしたり、端の方で動かなくなったと思っていたら、体力のないものから次々と死んでしまいます。症状に気づいて、ほかの水槽に移しても、一度おかしくなったエビは高確率で死んでしまいます。
    エビなら問題ないとする考えもありますが、多くの水槽はエビによるコケ・残飯処理で調和が保たれているものです。
  • 対処法は?
    コケと同じで、とにかく水槽内に持ち込まないこと。
    新規に水草を導入する場合は下処理をしたうえでよく洗います。もし可能なら、しばらくは別水槽で育てます。特に残留農薬が心配なものはウールポット植えの輸入品。アヌビアスやクリプトコリネなどは特に要注意です。
    ウールマットウールポット植えのクリプトコリネ。

    掃除中水を張ったボウルで洗うとキレイになります。
  • 汚染されたら回復は難しい。導入時は慎重に。
    一度汚染された水槽は、立て直しまで長くかかることもあります。原因と思われる水草を抜き取り、水換えを頻繁に行って様子を見るしかありません。値段が高めの活性炭やアクアセイフ(テトラ)も効果があるといわれていますが、根本的な解決にはならないようです。
    最悪、一からやり直さなければならないことになるかもしれません。
    信頼できるショップで水草を購入することが大事で、極端に安価なものは危険です。

VSコケ

  • コケの種類を見分けよう。
    コケはレイアウト水槽において一番厄介な代物のとして扱われています。確かに、発生したら非常に困ったものです。でも、コケによっては簡単に除去できるものと、すべてをやり直さなければならないほど深刻なものに分かれています。あわてないでコケの種類を見きわめて対処法を考えましょう。
    ・簡単に除去できるもの:茶ゴケ。
    ・やや厄介だが、除去可能なもの:斑点状の緑ゴケ・根を張らない糸状のコケ。
    ・厄介!要注意:藍藻のようなドロっとしたコケ・硬いヒゲ状のコケ。
    ・リセット確定?:根を張る柔らかい糸状のコケ。
    簡単に分けるとこんな感じです。次にコケごとの対処法を上げてみます。
  • 対処しやすい茶ゴケと緑の斑点状のコケ。
    茶ゴケや緑の斑点状のコケはコケ取り生物(イシマキガイ・ヤマトヌマエビ・オトシンクルスなど)が食べてくれます。茶ゴケは水槽が安定してくると発生も少なくなりますが、緑の斑点状のコケは水槽が安定していても出るので、コケ取り生物は常に入れておくと良いと思います(ただしオトシンクルスは緑のコケはあまり食べてくれません。)
  • 光が強すぎるのが原因。根を張らない糸状のコケ(アオミドロなど)の対処
    このタイプのコケはセット初期や水槽を日光の当たる場所に置いた場合よく発生します。ワリバシなどで絡めるように取り除き、日光が当たる場所なら水槽の場所を移動したり、カーテンなどで遮光します。また、栄養過多のところに発生しやすいので、魚の数を適正にしエサを与え過ぎず、その後にろ過が上手く軌道に乗れば発生は少なくなります。
  • 魚の多い水槽で発生しやすい藍藻の対処。

    藍藻はしっかり管理できていればあまり発生しませんが、外から持ち込んでしまう恐れがあります。新しく導入する水草はよく見て、問題あるようだったら破棄するのもやむなしです。
    一度発生するとその再生力から堂々巡りになりやすく厄介なコケです。常時、このコケが発生するような水槽は水草栽培上好ましくないので環境を見直しましょう(見直し点:魚の数が多すぎる、エサを与えすぎているなど。)
  • 水流の強い場所で発生しやすい硬いヒゲ状のコケの対処。
    まずポンプの水流を弱める工夫をします。ろ過パイプ類はなるべく光の当たらない位置にもっていきます。とても取りづらいコケで、完全に綺麗にしたいと思ったら薬品や熱湯を使わざるを得ません。ただ、対処不能なほど広がって困るというケースはまれです。
    上記までのコケは、なんとか水槽を維持したままでも対処可能です。
  • 非常に厄介な柔らかい糸状のコケ(根ありタイプ)の対処・
    糸状コケ糸状コケ2
    いきなりですがリセット(水槽立ち上げからやり直し)したほうが早いかもしれません。抜いても、コケ取り生物でも歯が立ちません。色は緑から黒まで様々です。対策は水槽内に持ち込まない、強すぎる光を弱める、水の富栄養化の改善など。でも、どんなに注意してもダメなときはダメなので、このコケの場合は諦めることもやむなしです。
  • コケ対処のまとめ。
    ※実際にはコケは予防が一番大事で、茶ゴケや緑の斑点状のコケ以外のコケは出さないという心構えで育てる方が結果的に楽です。
    1.水中の余分な栄養分を少なくすることが大事。エサを少なくするか、水換えの回数を増やすといったことが基本です。
    2.光が強すぎる・ライトをつけている時間が長すぎるのも問題です。光の強さは育てている水草によって変わるので調整するしかありません。ライトをつける時間は、理想は8時間程度、長くても12時間は越えないようにします。
    3.魚の数を抑え過密飼育は絶対避ける。エサを与えすぎない。
    4.コケ取り生物を導入する。
    5.水換えは、水に問題がないように見えても2週間に一度程度は必ず行う。
    6.LEDライトはおすすめできないが、現在は選択肢がLEDしかないケースも多いので、なるべく水面から離し気味に設置して光の量を調整する。
    これらを守るだけでも驚くほどコケは少なくなるはずです。

根茎(ロゼット)型水草の頻繁な植え替えは避ける

  • 植え替えに弱い根茎水草。
    エキノドルス類などの根茎水草(株元から葉が出るタイプ)は植え替えにとても弱いです。根茎水草の多くは、植え替えると今までついていた根はダメにして新しい根を出すため、負担が大きく成長が非常に悪くなります。

    写真のアマゾンソードの根も、植え替えれば腐ってしまうので切り取らなくてはなりません。根茎水草を上手に育てるコツは、なるべく株を動かさないことです。

シダ病は早めに予防の対処を

  • 水が淀んだところに発生しやすいシダ病。
    丈夫で光線不足にも強いシダ系の水草(ミクロソリウムなど)の唯一といっていい大きな弱点がシダ病です。葉が急に黒くなり、どんどん他の葉に感染して最終的には枯れてしまいます。病気にかかってからだと完治させるのが大変なので予防をしっかりしましょう。
    シダ病は、株の水通しが悪く茂りすぎてると発生率が上がります。ミクロソリウムのナロー(葉が細いタイプ)がシダ病にかかりにくいことからも明らかです。病気も根元などゴチャゴチャした場所から徐々に広がっていきます。
    なので、シダ病を予防するためには茂りすぎた葉を透かしすっきりさせることが重要です。暑い時期に特に発生率が高くなります。夏になる前にすっきりした姿にしてしまいましょう。
    シダ病
    シダ病の一例

二酸化炭素の添加しすぎ・添加止め忘れにご用心

  • エビ類の弱点、酸欠に注意
    小型水槽では二酸化炭素の添加しすぎによる酸欠に気をつけましょう。大きな水槽の場合と違って添加量を間違えると酸欠になりやすいものです。特に水草が密に植えてある水槽では意外な落とし穴になることがあります。
    酸欠に弱いエビはもちろん、場合によっては魚も死んでしまう場合があります。水草が枯れることはほとんどありませんが、エビはコケ取り用に投入していることが多いと思いますので用心してください。
  • 毎日のことなので習慣づけて。
    ライトのスイッチを切るときの一連の流れとして組み込んでしまうと良いでしょう。ルーチン化することでうっかりミスを防ぐことができます。
    どうしてもONOFFを忘れてしまう方はタイマー&電磁弁で自動切換えという手がありますが、これはやや高価なものになります。正直なところ小型水槽には大袈裟でしょう。
    どうしても忘れてしまう場合は、3〜4秒に一滴程度といった、一晩消し忘れても大丈夫なぐらいの少ない量を添加するほうが現実的かもしれません。

殺虫剤には注意

  • 殺虫剤はエビ類に影響大。使うときは気を付けて。
    蚊やハエなどの害虫を殺す殺虫剤の成分の多くは魚や水草には影響が少ないのですが、農薬と同じでエビには大きな影響を与えます。
    殺虫剤を使う際には水槽上部にビニールカバーなどをかけ、しばらくしたら取り外すようにしましょう。

本当に美しい水槽は維持管理も少ないもの

  • 一瞬の綺麗さばかりを求めない。
    雑誌やコンテストなどで見られる美しいレイアウト写真。これらに憧れて水草レイアウトの世界に入った人は少なくないと思います。でも、ちょっと待って!これらはその写真を撮る一瞬のために作られたレイアウトであることが少なくありません。
    レイアウトを真似て一時期は美しい姿を見せてくれても、上手く維持できず終わってしまうことも多いです。初めのうちは失敗しても仕方ないと思いますが、経験を積めば「この水槽は長期維持はできないな」とか「維持管理が煩雑そうだ」とわかるようになると思います。
  • 長いスパンで維持のことを考えましょう。
    水草の成長度合い、落ち着いてきたときの大きさ、水草の丈夫さや本来の育ち方…などを考えつつ、長期のスパンでレイアウトを維持できるような水景を目指しましょう。
    水槽を観賞している時間は、写真で切り取ったその一瞬よりも圧倒的に長いのです。維持管理も含めた美しさを目指してみましょう。