奈良県奈良市にある日本庭園。明治時代に造られた庭園で、様々な遍歴を経て奈良県の保有となり一般公開されています。新緑と紅葉、美しい苔が大きな見所です。
庭園は池の庭、苔の庭、茶花の庭からなり、それぞれは高低差によってゆるく分かれています。
ここではこれら3つの庭を中心に、主な見所を紹介します。
日本庭園らしい控えめな印象の庭園入口と受付。
なお、吉城園入口は依水園のすぐ隣にあり、2つの庭園はぜひ一緒に観賞しておきたいです。
受付を通り、短い階段を上がると池の庭。敷地の高低差を生かした配置です。
対岸にあるのは東屋(あずまや)の月見台。他に庭に移動する前に立ち寄ってみましょう。
月見台から見る池の庭。ほとりに建つのは吉城園主棟(旧正法院家住宅)。建物の中に入ることはできませんが、対岸にある月見台とともに池の庭のフォーカルポイントになっています。
離れになっている茅葺き屋根の茶室。有料の貸し出し施設ですが、利用がない場合は外から内部の造作を観賞できます。騎馬武者が描かれた杉戸の先に苔の庭が見えています。
順路に沿って歩くと茶室の奥に見えていた苔の庭に辿り着きます。この庭園のハイライトで、美しく管理された杉苔と、周辺の樹木の紅葉や新緑を観賞できます。
茅葺き屋根の茶室が苔庭とよく合っています。
苔の庭を奥まで進み、振り返って茶室を見た風景は吉城園を代表する美しい景観です。
庭園の一番奥には、花木や和風の花が植えられた茶花の庭があります。
各季節花が見られますが、花が多いのは春から初夏にかけてです。
池の庭、苔の庭、茶花の庭に分かれていますが、その間の園路なども見所があります。
お気に入りの景色を探してみてはかがでしょうか。
場所
奈良県奈良市登大路町60番地1
交通手段
■公共交通機関
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩約15分。
JR奈良駅や近鉄奈良駅からバスの便もあります。
■車
公共交通機関利用推奨。
※専用の駐車場なし。車利用の場合は周辺の県営駐車場を利用。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:http://www.pref.nara.jp/39910.htm
庭園デザイン:★★★★
敷地の高低差を生かして、個性が異なる3つの庭に分けています。特に池の庭や苔の庭はそれぞれ、吉城園主棟や離れ茶室の建物と調和するように造られており見応えがあります。
個人所有の庭だった期間もあり、建物も含め比較的繊細な意匠が多いのも特徴です。
植物充実度:★★★
マツやツツジ、カエデ、コケなど日本庭園でおなじみの植物が多いです。特にコケや新緑、ツツジの美しい初夏と、晩秋の紅葉は美しいです。
管理状態は良好です。
娯楽度:★★
紅葉の時期は、庭園や植物が特別好きでなくても楽しめます。それ以外の季節はゆったり散策するのに適しています。
園内には貸出施設のほかは茶店等はありません。
周辺には東大寺や春日大社といった寺社仏閣のほか、奈良国立博物館等の文化施設、他にも奈良公園や若草山もあり、一日では巡りきれないほどの観光施設があります。京都に比べ、ひどく混雑することが少ないのも良い点です。
なお、茶花の庭にある出口から氷室神社側に抜けられるので、東大寺や奈良国立博物館方面に行くのに便利です。
混雑度:★★
秋の紅葉の時期はやや混雑しますが、それ以外の季節はゆっくり観賞できます。
園内はやや狭く、オープンスペースも少な目ですが、大きな問題はないと思います。
交通の便:★★★★★
公共交通機関の場合、近鉄奈良駅から少し距離があるものの、途中の歩道が広く歩きやすいので問題は少ないでしょう。バスの便もあり、JR奈良駅からならバスを利用したほうが良いでしょう。
車の場合、公式でアナウンスされていないので推奨はしませんが、周辺の県営駐車場に止めれば車で行くことも可能です。観光シーズンは周辺道路が渋滞しやすいので注意。
総合満足度:★★★★
あまり広くはありませんが、苔の庭を中心として見所の多い庭園。特に晩春から初夏の新緑とツツジ、晩秋の紅葉は美しいです。状態が良いコケが見たいなら梅雨から夏にかけてもよいでしょう。
満足度の高さは依水園のすぐそばにある訪れやすさも考慮していますが、吉城園自体も個性がある庭園であり、庭園が好きならぜひ立ち寄りたいところです。
備考1:隣にある依水園とセットで滞在時間を考えておきましょう。庭園観賞のみなら合わせて1時間程度は最低欲しいです。
備考2:吉城園を含めた周辺の再開発計画が進んでいますが、吉城園自体は保存されるとのことです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
晩春(ツツジ)
晩春〜初夏(新緑)
梅雨〜夏(コケ)
晩秋(紅葉)