水戸市の南の郊外にある洋風庭園。植物公園とある通り植物園とは異なり憩いの場としての性格を強くもっています。一方で、ハーブ、サルビアなどのこだわった展示や、デザインされた植栽にも力が入ってる複合的な施設となっています。建築家が温室をはじめとした全体設計を行っているので、景観デザインという目線でも興味深いです。
清掃工場に向かう道に架けられた橋を渡って園内にアプローチします。ウェルカムガーデンになっているとともに、別の空間に入るという雰囲気作りにも役立っています。
水が流れる段状になったテラスに季節の花が植えられています。初夏の宿根草や、秋のサルビアの時期は特に見事です。周囲の樹木の新緑や紅葉も美しい。
園内は、公園的な開放感のある場所が多いのが特徴。明るい雰囲気で好感が持てます。
設計は建築家の瀧光夫氏。一般的な鉄とガラス張りの温室とは異なる、美術館のようなコンクリート造の温室です。花壇のある中庭を絡めた立体的な造りが特徴。
天井が高くないので大きな植物は少ないですが、動線に高低差をつけて変化をもたせています。
観賞温室前の広い芝庭。緩い傾斜があるので、のんびりしたり寝っころがるのに向いています。傾斜の上部にはコニファーの植えられたロックガーデンと、変わった形のあずまやがあります。
歴史と未来の2つのテーマがある薬草園。歴史のエリアでは水戸藩にまつわる伝統的な薬草を観賞できます。未来のエリアではウッドデッキのある西洋風のハーブガーデンになっています。
盆栽展や多肉植物展など様々な展示が行われています。休憩するのにもよいでしょう。
植物館前の池にはラクウショウが周囲に植えられています。紅葉が一番の見所ですが、新緑や下草のシャガの群生も見事です。
緑陰広場にはレストランやガーデンショップがあり、軽食や飲み物、季節の花などを求めることができます。また、植物公園を名乗るだけあり、ベンチや休憩できる場所が多いです。
場所
茨城県水戸市小吹町504
交通手段
■公共交通機関
JR常磐線「水戸」駅よりバスで「小吹神社前」下車後、徒歩15分。
■車
常磐自動車道「水戸IC」より約15分。
※駐車場あり(無料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:http://www.mito-botanical-park.com/
庭園デザイン:★★★★
自然な落ち着いた植栽と、デザインされた美しい植栽が両立した園内。テーマガーデン同士のつながりもゆったりしており違和感がありません。また、観賞大温室の特徴的な造形や立体的な動線は新鮮な印象を受けます。全体的に居心地のよい空間が多く、景観デザインをしっかり行うことの大事さが自然と理解できると思います。
一方で、湿生花園付近の老朽化は気になるところです。
植物充実度:★★★★
園の性格上、珍しい植物はそれほど多くないですが、その分、余裕を持った植栽がされているように感じます。ハーブやサルビアの展示は充実しています。植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★
初夏のテラスガーデンや晩秋のラクウショウの紅葉は美しく、植物に深い興味がない人でも楽しめます。それ以外の季節はゆったり散策するのに向いています。
混雑度:★
園内は広くて、オープンスペースも多く混雑感は少ないです。大型連休中に少し混雑する程度で、基本的には混雑を気にせずのんびり出来ると思います。
交通の便:★★
公共交通機関利用の場合、車前提といった立地で交通の便はよくありません。元々は清掃工場の余熱利用施設として造られたので仕方ないのでしょう。最寄のバス停から公園まで交通量が多めの道(歩道はあり)を経由して徒歩15分ほどかかります。バスの本数はそれなりにあります。
車の場合、幹線道路に接しており、駐車場も広く交通の便は良いです。
総合満足度:★★★★
植物「公園」なので、植物に深い興味がない一般の方や家族連れのみに向いていると思いきや、サルビアにこだわった展示があったり、園内・温室も変化が多くて楽しかったりと、植物愛好家の方も十分に楽しめる施設だと思います。大規模な花壇や、豪華な花木園があるわけではありませんが個人的にはお勧めです。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
初夏(バラ、季節の花、新緑)
秋(サルビア、季節の花)
晩秋(ラクウショウの紅葉)