静岡県三島市は、富士山の湧水が市内各地で見られるせせらぎの街です。
ここでは、三島市観光協会の観光マップに掲載されている定番経路「街中がせせらぎ」コースにある楽寿園と源兵衛川を中心に、三島駅からバスで行ける柿田川公園も併せて紹介します。
三島駅南口すぐにある、富士山の溶岩(三島溶岩)と湧水を利用した自然豊かな庭園。
1890年に小松宮彰仁親王の別邸として造営されたものが、様々な遍歴を経て三島市の所有となり一般公開されています。
三島駅南口から歩いてすぐのところに入口(駅前入園口)があります。駅すぐそばに見所があるのは大きな利点といえるでしょう。他の出入口として正門と、出口専用の南出口があります。
入口すぐの小浜の森では、さっそく溶岩層に生える樹木やコケを観賞することができます。
また、地形的にも溶岩塚や縄状溶岩、溶岩トンネルなど興味深い景観を観察できます。
園内にある常盤の森や、さぎの森でも似たような景観を観賞可能です。
2か所ある無料休憩所の1つ、お休み処「桜」では軽食の販売もしています。名物の三島コロッケなど気軽に頼めるメニューもあり、散策の前に腹ごしらえするのもよいでしょう。
また、近くにある三島市郷土資料館は三島の歴史を知ることができます。
アルパカやポニー、レッサーパンダなど可愛いタイプの動物が多く見られるどうぶつ広場。
観察だけなら楽寿園の入園料のみなので、立ち寄ってみるとよいでしょう。
園内はちょっとしたところに湧水の流れや池があり、その水が綺麗なのも魅力的です。
湧水によって日々水位が変化する大きな池。近年は湧水量の減少により渇水状態になることが多いですが、何年かに一度は写真のように満水状態になることがあります。
池の現在の水位については公式ウェブサイトで確認できます。
渇水状態の池。近年はこのように池の水が少ないことが多いです。
池底の溶岩が露出した様子が観察できるので、これはこれで良いかもしれません。
池には中島(なかの島、みや島、おきな島)があり、それぞれ橋で渡れます。
橋の幅が細く高度感もあるので、譲り合って慎重に歩きましょう。
小浜池に湧き水を湛えるためにつくられた「小松の提」を隔てて瀬があり、水の流れを緩やかにするために畦で3つに区切られています。畦の上を周遊しながら清らかな流れを観賞できます。
こちらも湧水量によって水位が変化し、渇水時にはほとんど水が流れていないこともあります。こちらに関しては水位が高い時のほうが見応えがあります。
池のほとりに建つ数寄屋造りの建物。館内は自由に見学できず、時間指定のガイド付きのツアーに参加する必要があります。ツアーは途中で抜けられず写真撮影も不可ですが、建物の造作や装飾絵画、建物から眺める池の景色などが観賞できます。
予約不要なので、一度は参加してみることをお勧めします。
楽寿園は花の見どころは少ないですが、秋に開かれる菊まつりの時期は華やかになります。
長い歴史がありレベルも高い見応えのある展示で、ライトアップや競技会も開かれます。
普段は貸出施設ですが、特別な日に一般公開される梅御殿と桜御殿。
写真1枚目の梅御殿は床柱に梅の木が使われていることから名が付きました。
写真2枚目の桜御殿は小松宮彰仁親王が滞在中の休息の場として主に利用されていたそうです。こちらも床柱に桜の木が使用されていることから名が付きました。
例年、7月16日の開園記念感謝デーに公開されていますが、訪問する年の公開日については公式ウェブサイトでつど確認ください。
三島市のシンボル的な存在の水が美しい川。源流は楽寿園の小浜池です。
飛び石や橋が設置してあり、川の中を歩けるようになっています。川の周辺にも観光施設があるので併せて紹介します。
出口専用の南出口を抜け、標識に従って源兵衛川に向かいます。
蓮沼川がすぐ近くにあり間違えやすいので、標識や地図をよく確認しましょう。歩行者専用を示す青い道路標識が目印です。
源兵衛川は、川の中に飛び石や橋が配置してあり、水に近い位置で歩けるよう工夫されています。
水量が多い時期は、靴を脱がないと濡れてしまうような場所もあります。水遊びもできる綺麗な清流なので濡れても大したことはありませんが、裸足で歩くことに抵抗があるならサンダルを持参すると良いでしょう。
しばらく源兵衛川歩くと一旦川を離れ、蓮馨寺(れんけいじ)の境内を進み、さらに三島広小路駅周辺の賑わう場所に出ます。この辺りは名物のうなぎ屋などがあるので食事をするのも良いでしょう。
三石公園から少し歩いた所にある時の鐘橋で再び川に戻ります。この先は観光客や川遊びする人も減ってのんびり歩けます。
なお、橋をくぐるときは頭上と足元両方に注意しましょう。水量の多い時期は足場が滑るので、頭が引っかかって転んでしまうことがあります。危なそうと思ったら無理をせず道路を歩きましょう。
広瀬橋(鎌倉古道に架かる橋)より下流は農業用水のために造られた人工的な川となっています。
そのためか、中流域以降は護岸が目立つ景色が多くなっていますが、水の美しさは変わりません。
なお、川の中の飛び石や木道は、離合地点は設けられているものの、すれ違いが困難な場所があるので、なるべく逆コースを巡るのは避けたいところです。
途中で源兵衛川を離れ、雷井戸に寄り道してみます。住宅街の路地の奥という、このコースで一番わかりにくい場所にあるので地図をよく確認しましょう。井戸から流れる清らかな水と、そこに育つミシマバイカモを観賞できます。
周辺は閑静な住宅地なのでマナーには気を付けましょう。
源兵衛川中流にある親水公園。広場もあって休憩できます。
水の苑緑地の南側には美しいミシマバイカモの群生地があります。花期は不定期ですが、初夏~夏頃に花が多く見られます。市民の方が定期的に管理をしているようです。
なお、水位が低いと水上で花が咲いてくれますが、水位が高いと水中で花が咲いてしまうので花が目立ちにくくなります。
水の苑緑地(ミシマバイカモ群生地)から源兵衛川を離れて東に向かいます。
ミシマバイカモの復元・育成するため市民が中心となって整備した施設。
源兵衛川のミシマバイカモの開花最盛期は初夏から夏ですが、ここでは年間を通して花を観賞できます。また、花を近くで見るのにも適しています。
三島梅花藻の里の向かいには、佐野美術館とその付属施設である隆泉苑という庭園があります。庭園は無料で観賞できますが、佐野美術館の開園時間のみ解放されているので注意。
こじんまりした庭園ながら湧水を生かした水の流れや池、秋の紅葉など見所があります。
溶岩石を多用しているため、楽寿園とどことなく雰囲気が似ています。
庭園の奥にある美術館も併せて見学するのもよいでしょう。
ここから三島神社方面に向かいますが、疲れてしまったり、時間が足りない場合は三島田町駅から伊豆箱根鉄道に乗って三島駅にショートカットすることもできます。
伊豆箱根鉄道が間近に迫る三島田島駅そばのガード下をくぐります。「街中がせせらぎ」コースにはここ以外にも鉄道と川の流れを近くで観賞できるポイントがあります。
源頼朝が挙兵に際し再興祈願したことでも知られる、歴史ある三島大社。
春にはサクラ、秋にはキンモクセイの大木の花も楽しめます。
三島大社から、桜川の流れに沿って歩くとたどり着く白滝公園。水の湧き出る様子を観賞できます。
道路を隔てた向かいには楽寿園の正門があります。楽寿園は当日なら再入園も可能なので、行きに見学しなかった場合はどうぶつ広場や郷土資料館に立ち寄るのも良いでしょう。
「街中がせせらぎ」コースは三島駅に戻って終了です。
三島駅に戻ってもまだ歩き足りない、時間があるという場合は、清水町にある柿田川公園にバスで向かってみるとよいでしょう。富士山の豊富な雪解け水が湧き出す様子と、美しい清流を観賞できます。
国道1号に面した公園入口。
公園の高台側は芝生広場になっています。休憩するのによいでしょう。
急な階段を降りると、柿田川の最上流部に当たる湧水が見られる第一展望台に着きます。富士山の雪解け水がこんこんと湧き出る様子を高台から見下ろせます。
水との距離がやや遠いので、小さな望遠鏡などがあると便利です。
以前は紡績工場の井戸として使われていた湧水。日照条件などによって色が変わり、特に鮮やかなブルーになると美しいです。こちらも長い階段があるので気を付けて歩きましょう。
水遊びができる湧水広場。水が冷たいので遊ぶとしたら真夏がよいでしょう。
通称「舟付場」と呼ばれる場所では、2つの井戸から湧き出る湧水を近くで観賞できます。
周辺の水辺の植物や樹木も青々として美しいです。
散策路になっている木製の橋。橋からは湧き水のほか、柿田川中流の清らかな流れを観賞できます。時期によってはミシマバイカモなどの花や、カワセミなどの野鳥も見られます。
なお、柿田川は約1.2キロという非常に短い川なので、公園の南側はもう中流域になります。
場所
静岡県三島市一番町19−3(楽寿園)
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静岡県駿東郡清水町伏見71番地の7(柿田川公園)
交通手段
■公共交通機関
楽寿園:JR「三島」駅より徒歩約3分。
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柿田川公園:JR「三島」駅からバス約20分「柿田川湧水公園前」下車、徒歩約1分。
公園まで徒歩約3分になりますが「サントムーン柿田川」バス停のほうがバスの本数が多いので、間があいてしまうようなら、こちらで調べてみるのもよいでしょう。
■車
楽寿園:東名高速道路「沼津IC」より約20分。
駐車場あり(有料)
※「街中がせせらぎ」コースを歩く場合は電車利用推奨。
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柿田川公園:東名高速道路「沼津IC」より約20分。
駐車台あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/rakujyu/(楽寿園)
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/kanko_index.html(三島観光情報)
http://www.sanobi.or.jp/(佐野美術館)
http://www.town.shimizu.shizuoka.jp/toshi/toshi00054.html(柿田川公園)
庭園デザイン:★★★
楽寿園・隆泉苑ともに、自然の溶岩石と、富士山の美しい湧水を生かした庭園となっています。特に水位が多い時期は、中島が浮かぶ小浜池の景観や、瀬の水の流れなど、見所が多いです。
ただ、近年は渇水状態になることが多く、思った通りの景色を見ることができない場合もあります。
植物充実度:★★★
各庭園内はもちろん、源兵衛川の両岸や三島大社も含め、様々な花や植物がみられます。花的な見どころはミシマバイカモに注目。初夏から夏が最盛期ですが、三島梅花藻の里ならほぼ一年中花が見られます。他には菊まつりや紅葉の時期もお勧めです。
植物全般でいえば楽寿園のコケや樹林も大きな見所。溶岩石が多いためコケの生育に適しており、梅雨から夏の多雨期には非常に美しいコケを見ることができます。
植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★★★
観光コースのため花や庭園に興味が薄い方でも楽しめるでしょう。訪問の季節は、水の中を歩いても問題の少ない夏が良いかもしれません(水が非常に冷たいため)。
コース自体はゆっくり回って2時間程度ですが、楽寿館のツアー、さらには名物のうなぎや三島コロッケを食べたり、佐野美術館を鑑賞したり、柿田川公園まで含めるなら、丸一日は欲しいです。
混雑度:★★
夏の土日や大型連休中は一部の川の遊び場で混雑しますが、それ以外はどの季節でもそれほど混雑感は強くありません。ただ、三島大社のお祭り期間は外した方が賢明でしょう。
なお、コース上にある有名なうなぎ店は常に混雑しており、立ち寄りたい場合は予約しておくとよいと思います。大型連休時には無理に寄らず、その分を観賞に時間をあてたほうが有意義かもしれません。
交通の便:★★★★★
公共交通機関の場合、楽寿園は駅からすぐの抜群の立地。このコースの大きな魅力といってもよいでしょう。駅から離れている柿田川公園はバスの時刻を事前に確認しておきましょう。
車の場合、各有料駐車場がありますが、楽寿園の駐車場は狭く分かりにくい場所にあるので注意。長時間駐車を考えると、個人的には公共交通機関の利用をお勧めします。
総合満足度:★★★★
「街中がせせらぎ」というコース名にふさわしく、終始美しい川の流れや湧水が楽しめます。楽寿園や隆泉苑も溶岩や湧水を生かした独特の魅力がある庭園になっています。離れた位置にある柿田川公園も含め、湧水と清流を目一杯満喫できます。
備考:湧水の水位についてですが、個人的には楽寿園は水位が高いほうが見栄えがします。
一方で、源兵衛川は飛び石の歩きやすさや、ミシマバイカモが水上で花を開いてくれることを考えると、水位が低めの時期のほうが良いと思います。どちらを重視するかで決めるとよいでしょう。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
初夏~初秋(ミシマバイカモ)
11月中~下旬頃(キク)
晩秋(紅葉)