富山県中央植物園は富山県富山市にある植物園。1993年(平成5年)に開園した、日本海側にある植物園としては大規模な施設で、特にソメイヨシノの並木や、様々なサクラの品種の豊富さで有名です。また、日本の植生を再現した展示や、珍しい植物が多い温室など、各季節に見どころ多いです。
一方で、樹木や水辺、芝生を組み合わせた景観デザインにも特徴があります。
特に順路はないですが、敷地が広いので、一通り観賞したい場合は計画的に散策すると良いでしょう。
ここでは敷地北側にある入園口から入り、池を中心に時計回りで巡り、最後に温室に寄るルートで主な見どころを紹介します。
広場になっている入園口の前庭。園のスケールの大きさが垣間見えます。
入園口入ってすぐは三叉路になっています。目の前に見えるのは展示温室ですが、ここでは最後に寄ることとし、向かって左に進みます。また、この付近は園内バス(途中下車不可のガイド付き周遊バス)の発着地点でもあります。
北側は、花の美しさや珍しい植物に注目した、分かりやすい展示が多いです。
オープンスペースが多く、余裕のある植栽配置が好ましいです。
イギリス最古の植物園であるオックスフォード大学植物園との交流により生まれた庭園。
見所はボーダーガーデンで、多年草が多く植えられており、初夏から秋に見ごろを迎えます。
北側エリアの様々な場所から見える大きな北池。対岸の景色が見渡せるため開放感があります。
池の周囲の護岸を最小限にしており、自然な雰囲気で好感が持てます。
約300mに及ぶソメイヨシノの並木道。サクラの下はトンネルのようになっています。外側から見た時のボリュームもかなりのもの。見ごろは例年4月上旬ごろです。
また、ソメイヨシノ以外にも、サトザクラをはじめとした120種類ものサクラが見られます。
様々な種類のフジが植えられたふじ棚と、各季節に様々な花でデザインされたフローラルステージ。
1か所でも季節毎にデザインされた庭があると見所のポイントになります。
花の美しいバラ科の花木が植えられたエリア。春はナノハナとの共演が見事。
サトザクラやシダレザクラも見所です。
秋の七草など、人里近くの草原に見られる植物が植えられたエリア。オミナエシやハギなどが見所。
南池に面しているため周囲が開けているので、草原のような開放感があります。
北側エリア同様に、南側にも大きな池があります。富山県の特徴である水の美しさにも注目です。
池沼や湿地に見られる水生植物を展示したエリア。ミズバショウなどの花も見られますが、植生に合わせた展示そのものに目が行きます。
人の手が加わった雑木林のようなエリア。落葉樹が多く、特に新緑の頃は美しいです。
樹林の下には、カタクリやエビネなどの山野草の花も見られます。
山地に見られるブナなど、比較的寒冷な土地に生える落葉樹主体のエリア。
まるで山を散策しているかのような雰囲気が味わえます。
南池を海に見立てて、海岸に見られる植物が展示されたエリア。
マツ林の下にセンダイハギやハマダイコンなど様々な海浜植物が見られます。
花のプロムナードの西側にはステージがあり、サクラ並木を高い場所から見下ろすことができます。
初夏から秋は、芝生の美しさにも要注目です。
天気に左右されますが、ステージの高台から北アルプスを一望できるのも大きな魅力。
左にある少し尖った山が剱岳で、その右にある残雪が多い平たい山が立山。こうしてみるとやはり剱岳の山容は峻険で見事です。
北池の大きな見所は、主に夏から秋にかけて見られるパラグアイオオオニバスです。
理想的な栽培方法を確立しているとのことで、非常に自然で立派な姿が見られます。
珍しい植物が多い中国雲南省から取り寄せた植物の中で、富山の気候に合うものを選別して展示しています。雲南省の景勝地である石林近郊から運ばれたという石灰岩が目印です。
寒さに弱い雲南省の植物を集めた温室で、温度条件により2つにエリアが分かれています。特にトウツバキが咲くエリアは見所が多いです。写真二枚目は巨大な花のスノーバナナ。
高山植物や絶滅危惧植物を展示したエリア。
鉢植えにして植物を入れ替えることで、常時花が見られる工夫をしているようです。
熱帯雨林植物室は、熱帯雨林に見られる花や葉に見所がある植物を展示しています。
隣接するラン温室は、ほぼ一年中美しいランの花を観賞できます。
ホール南側には屋外デッキに出れる扉があり、北池の広々とした景色を望めます。また、初夏から秋にかけてはスイレン等の水生植物の花も観賞できます。
展示温室内には休憩できるホールやショップ、喫茶室もあるので、最後に寄っていくと良いでしょう。季節によっては様々なイベントが開かれることもあります。
場所
富山県富山市婦中町上轡田42
交通手段
■公共交通機関
JR「富山」駅から路線バス「中央植物園口」下車、徒歩約15分。
(バス停からは、少し遠回りでも歩道がある広い道を歩いたほうがよいです)
■車
北陸自動車道「富山IC」から約15分。
駐車場あり(無料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.bgtym.org/
庭園デザイン:★★★★★
よく整備された植物公園のような、開放感と憩いを感じられる北側のエリアと、日本の植生を再現した、まるでその植物が生えている場所を散策しているかのような南側エリア。どちらも魅力的です。
また、雰囲気が異なる2つのエリアを、花のプロムナードで上手に自然な印象で区切っているのも好感が持てます。花のプロムナードを直線の軸にして、アルプスの展望を確保しているのも上手です。
美しい水と水辺を生かした、大きな池と流れのある景観デザインも個人的に好みです。
植物充実度:★★★★★
様々な花や植物が豊富に見られます。野生種・園芸種をバランスよく植えているのも充実度の高さにつながっています。パラグアイオオオニバスなど水生植物も多く見られます。
一番の見所はサクラ類で、有名なソメイヨシノの並木以外にも、サトザクラ類をはじめとした様々なサクラの種類・品種が見られます。
管理状態は非常に良好です。植生の充実度や、展示温室の花つきや果樹の実り方等を見ても、植物の維持管理は高いレベルにあることが察せられます。
娯楽度:★★★
ソメイヨシノの季節は誰にでもおすすめできる美しい景色が楽しめます。それ以外の季節も多くの花が見られますが、普段はのんびり散策するのに向いています。娯楽を求めるならイベント等をチェックして出掛けるとよいでしょう。
園内は広く、時間があまり取れない場合は、見所の花が記された紙を入園口でもらって、そこに直で観賞すると良いでしょう。
混雑度:★★★
ソメイヨシノの最盛期や大型連休中はやや混雑します。
園内は広めで、オープンスペースも多いので混雑時でもゆっくりできる場所はあります。
交通の便:★★
公共交通機関の場合、最寄りのバス停から歩いて15分程度と、あまり良くないです。
車の場合、広い駐車場があり、ソメイヨシノの最盛期の土日等でもない限り、大きな問題はないかと思います。
総合満足度:★★★★★
一般的にはソメイヨシノ並木の美しさで知られていますが、植生を再現した展示や、豊富な花や植物の種類など、魅力の多い植物園となっています。様々な調査や研究を行う硬派な植物園としての矜持を持ちながら、大衆のために憩いの空間を創り出していることも高く評価したいです。個人的には、美しい水を生かした池や小川を絡めた景観の美しさに惹かれます。
遠出をして出かけるならソメイヨシノの季節をお勧めしますが、植物や自然が好きであれば、冬以外はいつ訪れても失望しないでしょう。
唯一、残念な点は公共交通機関の利用が不便な場所にある点です。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(ソメイヨシノ、季節の花木)
中春〜晩春(サトザクラ、新緑、フジ、季節の花木)
夏〜秋(パラグアイオオオニバス、水生植物)
春〜秋(季節の草花類、日本の植生の四季)