高尾梅郷(たかおばいごう)は東京都八王子市にあるウメの花の名所群。旧甲州街道や小仏川に沿って各所にある梅林を観賞できます。同時に沿道の民家や農地に咲くウメや草花、周辺ののどかな風景を楽しめます。一部は遊歩道が整備されているものの、ウメの開花最盛期は交通量がやや多くなる旧甲州街道を歩く部分もあるので、事故等に気を付けて観賞しましょう。
高尾梅郷を巡る途中にある、雰囲気が良い高尾駒木野庭園も簡単に紹介します。
旧甲州街道や小仏川沿いに点在するように梅林があるため、高尾山口駅から徒歩で巡るか、片道に高尾駅発着のバスを利用し、下りか上りを徒歩で巡るのが一般的。両方バスを利用してメインの木下沢梅林と、するさし梅林のみを観賞するという短縮コースもあります。
ここではバス移動で上りを省略し、下りながら主な見所を紹介します。なお、なるべく旧甲州街道を歩かなくて済むように道順を工夫しているため、遠回りしている部分もあることは承知おきください。
高尾駅からバスに乗り、大下(おおしも)のバス停で降りて少し下った後、写真1枚目の線路の下にあるトンネルを潜らずに、手前にある分岐の小下沢林道方面に向かいます。少し進めば2枚目の写真のように高速道路の向こうに木下沢梅林(こげさわばいりん)のウメの花が見えてきます。
木下沢梅林には、ウメの開花最盛期であれば人の流れについていけば自然とたどり着くとは思いますが、念のため地図で確認しておくと良いでしょう。
小高い丘のような敷地にウメが植えられています。ボリューム感があり、花色のバランスもよく見ごたえがあります。
高尾梅郷の核心部といえる場所であり、観賞時間を十分取っておくと良いでしょう。
梅林は期間限定で一般開放されており、内部の散策が可能です。頂上部には広場やトイレがあって休憩にもおすすめ。開放期間は公式サイトを確認しておきましょう。
開放時間は例年10:00〜16:00となっており、混雑を避けようと朝方に行っても、門が閉まっていて林道からしか観賞できないので注意。最盛期には入場の列ができるほど混雑します。
梅林の向かい側にある高台から梅林全体を見渡せます。梅林の内部とは別の意味で見ごたえがある景色です。ちなみに、太陽光が綺麗に梅林に当たる時間は限られています。門が閉まっている朝方はもちろん、午後の遅い時間帯も避けた方がよいでしょう。
※近年は中央自動車道小仏トンネル付近の渋滞対策工事により、高台や以前駐車場だった場所への立ち入りが禁止されています。写真のような景色はしばらく望めないかもしれません。
旧甲州街道から木下沢梅林に向かう林道の途中には、有名な鉄道撮影スポットがあります。鉄道が好きなら心に留めておくと良いでしょう。
写真は有名な山野草のハナネコノメ。以前は、小仏川と日影沢の合流点にある橋の周辺や、日影沢沿いにハナネコノメやニリンソウの群生、その他の小さな野草の花がたくさん見られましたが、2019年10月の台風19号による豪雨等により、現在はその数が大きく減少してしまいました。
少しづつ復活はしているものの、まだ以前のような群生ではありません。植生の回復を祈りつつ、今はそっとしておきましょう。
日影沢の分岐を見送り少し歩くと、大きな池のあるマス釣場が見えてきます。ここから、するさし梅林までは狭い道路の脇を歩くしかないので、注意しつつ歩きましょう。
途中、有名な豆腐店があるので、興味があれば購入してみるのも良いでしょう。特におからドーナツは散策のおやつにもなります。ただし、時間が遅いと売り切れている場合もあります。
舗装された広場や園路がある、一番観賞用に整備されているといえる梅林。ウメは量感があり、環境が良いせいか花つきも見事です。
木下沢梅林の次におすすめといえる梅林で、短縮コースはこの2つを観賞するルートになっています。
他の梅林に比べると、花の見頃は少し遅めです。
湯の花梅林は敷地が一般開放されておらず、旧甲州街道沿いに設けられた歩道を進みながら観賞する形になります。
湯の花梅林の先の右手に蛇瀧方面に向かう道があり、道沿いには目印となる立派な赤花のウメが見えてきます。旧甲州街道を外れて、その道に進むと蛇滝橋手前の左手に小仏川沿いの高尾梅郷遊歩道の入口があります。
次の目的地である高尾梅の郷まちの広場にすぐ合流するので、ここでは分岐を曲がらず、そのまま旧甲州街道を歩いてしまっても問題ありません。
遊歩道を少し進み左手の階段を上ると、ベンチやトイレがある広場に着きます。周辺にウメが植えられていますが、観賞よりも休憩に向いています。
ベンチのある広場は旧甲州街道に近い高台側にありますが、ここからは旧甲州街道を進まず、小仏川沿いの高尾梅郷遊歩道を歩きましょう。快適度が段違いです。
遊歩道を先に進むと斜面に植えられたウメが見えてきます。名前の通り高尾天満宮があり、参拝していくとよいでしょう。日当たりと足場の悪い場所にあるため、ウメの花つきや見ごたえはやや落ちるものの、落ち着いた静かな雰囲気です。
遊歩道や旧甲州街道から外れた、中央本線の北側にある梅林。一般開放はされていませんが、道路から観賞できます。やや分かりづらい場所にあるので地図で確認しましょう。おすすめは天神梅林から橋を渡って旧甲州街道の荒井バス停に向かい、そこで細い道に入りトンネルをくぐって上るルート。
広々としていて、対面にある天神梅林も望める開放感のある梅林です。
旧甲州街道沿いの、小仏関跡がある小さな広場にある梅林。梅まつりの際は出店があり、イベント等も行われるので、寄り道すると良いでしょう。
荒井梅林からすぐ近くのように見えますが、実際は歩道のない旧甲州街道を少し歩かなければなりません。混雑時はいったん荒井梅林から天神梅林に戻り、遊歩道経由で向かうと良いでしょう。
小仏川沿いに列植されたウメが観賞できます。
上椚田橋(かみくぬぎだばし)から見る北高尾の山々を背景にした景色も楽しめます。
昭和初期に建てられた住居兼医院だった建物が八王子市に寄贈され、2012年(平成24年)に庭園を整備したうえで一般開放した施設です。旧甲州街道からもアクセスできますが、混雑時は遊歩道梅林から分岐する細い道を往復するのが良いでしょう。
それほど広い施設ではありませんが、雰囲気のよい池泉回遊式庭園と枯山水庭園があり、庭園が好きならぜひ立ち寄りたいところです。ウメをはじめとした花や盆栽も楽しめます。
建物内部も無料で入れ、枯山水庭園は建物内から眺められます。
高尾駒木野庭園のすぐ近くにある「病院前」バス停から、行きに来たのと同じバス(京王バス 高01)で高尾駅に戻れますが、混雑時は時間通りにバスが来ないことが多いです。それほど時間はかからないので高尾山口駅まで歩いてしまうのも良いと思います。
場所
東京都八王子市裏高尾
交通手段
■公共交通機関
・木下沢梅林までの経路。
JR「高尾」駅から京王バス 高01「大下」下車、徒歩7分。
・遊歩道梅林までの経路。
JR「高尾」駅から京王バス 高01「小名路」下車、徒歩5分。
京王「高尾山口」駅から徒歩10分。
■車
※駐車場なし、車利用の場合は高尾駅や、高尾山口駅の近隣駐車場を利用の上、そこから徒歩やバスでの移動を推奨。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kankobunka/001/p003240.html
庭園デザイン:★★
梅林は特にデザイン的な要素はありませんが、白花だけでなく適度に赤やピンクの花色のウメが植栽されているので、色彩のバランスが良いです。
高尾駒木野庭園は規模は小さいですが、オーソドックスな池泉回遊式庭園と枯山水庭園があり、建物を含めた全体的な雰囲気が良いです。
植物充実度:★★★
多くのウメが植栽されています。ウメ以外にも、花の多い高尾山の麓ということもあり、野性の植物も含めて様々な花木や草花が見られますが、ウメの開花最盛期(例年3月上旬〜中旬)はまだ気温が低いためか、花の数はそれほど多くありません。
植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★★
ウメの開花最盛期は華やかで、花に興味が薄くても楽しめると思います。混雑が苦にならず祭り的な雰囲気を味わいたいなら、梅まつりの開催日に合わせて訪れると良いでしょう。
登山者数世界一を誇る高尾山の登山口であるケーブルカー清滝駅周辺には、土産店や飲食店、自然ミュージアムなどがあります。天気が良ければ、ケーブルカーやリフトに乗って高尾山駅を往復すると充実度が高いでしょう。
さらに、薬王院や高尾山頂上まで登山するとなると、かなりの健脚向きコースになります。
混雑度:★★★★★
梅まつりの開催日は非常に混雑します。それ以外のウメ開花最盛期の土日祝も混雑しがちです。混雑を避けたいなら平日に出かけると良いでしょう。木下沢梅林の開放が午前遅めの時間なため、朝方に行って混雑を回避するという手は使いづらいです。
交通の便:★★★
公共交通機関の場合、高尾駅からバスの便があり、混雑時は複数台のバスが出ます。ただ、バス車内は非常に混雑します。また、旧甲州街道は道路が狭く行き違いが困難な場所も多いため、バスが時間通りに動かないことが多いのは承知のこと。バスを使うなら「行きはバス・帰りは徒歩」というコースをお勧めします。
また、高尾山口駅から逆コースをとることもできます。その場合は帰りも歩くことを推奨します。バスの混雑に左右されないのは良い点ですが、登りも多いため相応の体力を求められます。
車の場合、各梅林には駐車場がありません。また、旧甲州街道は道路幅が狭く、行き違いが困難で渋滞しやすいのも難点。ハイキング的な楽しみも考えると、車は高尾駅や高尾山口駅周辺の有料駐車場利用とするか、公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★
旧甲州街道や小仏川沿いの長閑な雰囲気を味わいながら巡ることができるのが大きな魅力です。ウメのみに焦点を絞れば、木下沢梅林やするさし梅林だけを巡れば十分ですが、それだけでは高尾梅郷の魅力を味わうことは難しいでしょう。
ただ、旧甲州街道は歩道がほとんどなく、道路幅も狭いため、歩いていて楽しい道ではありません。なるべく遊歩道や脇道を歩けるようにコースを工夫しましょう。
備考:近年は、中央自動車道小仏トンネル付近の渋滞対策工事により、木下沢梅林を見渡す高台への立ち入りが禁止されています。工事は長期間に及ぶ予定だそうで、最新の現地の情報をSNS等で確認した方がよいでしょう。高台からの景色は高尾梅郷の大きな魅力だっただけに、現況では満足感がやや下がってしまっています。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(ウメ)