水前寺成趣園(じょうじゅえん)は熊本県熊本市にある国指定名勝・史跡の日本庭園。熊本藩主であった細川家により江戸時代前期に作庭された回遊式庭園で、阿蘇の清らかな伏流水を利用した池と、大小の築山が織りなす景色が大きな見所です。
大きな池を中心にした典型的な池泉回遊式庭園。
特に順路はないですが、庭園をゆっくり巡る前に出水神社を参拝すると良いと思います。ここでは正門側から入園し、池を中心に時計回りで主な見どころを紹介します。
正門から入ると池に面して大きな広場があります。ここから見る池と、背後にある築山の景色は水前寺成趣園を代表する眺めとなっています。
池の島に架かる2つの橋を渡る付近で下を見れば、この園の水の美しさが分かると思います。
池には錦鯉のほか、様々な淡水魚や水鳥が見られます。
明治の初めに旧熊本藩士たちによって創建された神社。歴代の細川藩主を祀っています。
水前寺成趣園は出水神社の所有・管理となっています。
池の北側を巡る園路からは思わず見返りたくなる景色が広がります。池を眺める場所によって様々な景色が楽しめるのが池泉回遊式庭園の大きな魅力です。
また、春には見返り通りの北側に植えられたサクラが美しいです。
水前寺成趣園で発見されたというラン藻の仲間が見られます。江戸時代には熊本藩から幕府に献上されていたとのことです。
養殖地を近くで眺められる見返り橋は手すりがない高度感のある橋なので、観賞の際には転落に十分注意しましょう。
鳥居が多数並ぶ神社。フォトスポットとしても人気です。
園内でもひときわ目を引く大きな築山。
美しく管理された芝生の、季節による色彩の変化にも注目です。
流鏑馬の馬場や、細川流盆石にちなんだ石庭などがあります。いこいの広場や桜の広場あたりはオープンスペースが多く、日本庭園というよりは公園的な雰囲気が濃いです。
芝生の広場を囲むようにサクラが植えられたエリア。
サクラの見頃は短いので、タイミングが合えばラッキー程度に考えておくとよいでしょう。
築山の間を歩くと、正面広場とは反対側の池に面した景色が眺められます。出水神社の鳥居や古今伝授の間を背景にした池と島が織りなす景観が見所です。
京都にあった細川家初代の細川藤孝(幽斎)由来の建物を移築したものです。建物は一般公開されており外から見るだけなら自由に観賞できます。
抹茶等を頼めばお座敷に上がることもでき、五七の桐や火燈窓、襖絵など内部の造作を鑑賞できます。また、お座敷からは園路とは趣の異なる景色を観賞することができます。
有料とはいえ、このような施設に気軽に入れる機会は多くないので、一度は利用してみることをお勧めします。
澄んだ水と、そこに生息する様々な種類の淡水魚たち。そして、その魚を狙う水鳥たち。
阿蘇の伏流水の美しさがあってこその景色です。
場所
熊本県熊本市中央区水前寺公園8-1
交通手段
■公共交通機関
市電「水前寺公園」駅から徒歩3分。
JR「新水前寺」駅から徒歩10分。
熊本バス「水前寺公園前(電車通り)」下車、徒歩3分。
■車
九州自動車道「益城熊本空港IC」から約20分。
※庭園の専用駐車場なし(神社の祈願用駐車場あり)
近隣のコインパーキング等を利用のこと。
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:http://www.suizenji.or.jp/
庭園デザイン:★★★★
美しい水を生かした大きな池と、特徴的な大小の築山が特徴。池の周囲を巡りながら様々な景色を観賞するという典型的な池泉回遊式庭園となっています。
一方で、築山の奥側は公園的な趣が濃く、同じくくりというよりも日本庭園とは別物として考えるのが良いでしょう。
植物充実度:★★
松やツツジなど日本庭園の代表的な植栽が多いです。花木はウメやサクラなどがありますが築山の奥側にまとまって植栽されているので池とはあまり絡みません。一方で、季節にとらわれない美しさがあるのは大きな利点です。
植物の管理状態は良好で、特に築山周辺の芝は美しいです。
娯楽度:★★★
正面広場や古今伝授の間からみる、築山を背景した池の景観は熊本の名所として相応しい美しさです。また、正門出口周辺はお土産店や飲食店が立ち並んでいるので帰りに寄ってみるとよいでしょう。
さらに、健脚ならば南にある水前寺江津湖公園を巡ってみるのも良いでしょう。水前寺成趣園と同様に阿蘇の伏流水が流れる水が綺麗な公園で、庭園や湧水地等が点在しています。全てを巡ると大変なので、地図で確認しつつ無理のない範囲で散策するとよいでしょう。
また、観光名所となっている熊本城周辺へは市電やバスですぐに行けるので、そちらもチェックしてみると良いと思います。特にサクラの季節であれば見逃せません。
混雑度:★★★
大型連休や観光シーズンはやや混雑します。サクラや紅葉の季節も混雑しやすいです。
一方、園内はやや広めで、オープンスペースも多いので混雑時でもゆっくりできる場所はあります。
交通の便:★★★★★
公共交通機関の場合、市電や本数の多いバス停から歩いて数分なのでとても良い評価。
車の場合、庭園専用の駐車場はなく、神社の祈願用駐車場しかありません。特別な事情がなければ公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★
大小様々な築山を背景にした池周囲の景観は見事。移築された古今伝授の間の配置も良く、築山側から池を眺めた場合にも見所があります。また、水の美しさも大きなポイントで、水底まで見える透き通った池は気持ちがよいです。
一方で、築山の奥側は公園的な雰囲気で日本庭園らしさがかなり薄れることや、これだけ豊富で美しい水がありながら、流水で造る景観がほとんどないのは少し残念です。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(サクラ)
初夏(新緑、ツツジ)
初夏〜秋(芝)
晩秋(紅葉)