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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

仙巌園

仙巌園は鹿児島県鹿児島市にある薩摩藩島津家の別邸で、錦江湾に面した大名庭園。桜島を見渡すスケールの大きな庭園で、大陸に近い立地のためか、中国・琉球文化の影響が大きいのも特徴です。
園内には世界文化遺産にもなっている様々な史跡があり、日本の近代化・工業化発祥の地という、歴史的遺産という一面も持っています。

園内地図(クリックすると大きくなります)


受付は正面入口一か所で、そこから簡単な順路があります。分かりやすい海に沿った細長い敷地で迷うことはないでしょう。
ここでは仙巌園の公式サイトにある「仙巌園満喫コース」の順路で、庭園部分を中心に主な見どころを紹介します。

正面入口


バス停や駐車場に近い正面入口。庭園・御殿のセット券と、庭園のみの入園券が販売されています。初めて訪問する場合はセット券を購入した方が良いでしょう。

鹿児島世界文化遺産オリエンテーションセンター


オリエンテーションセンターは世界文化遺産としての仙巌園や、周辺施設の歴史等を紹介しています。庭園を巡る前に軽く見学するか、庭園観賞後にゆっくり見学すると良いでしょう。

反射炉跡


鉄製大砲の鋳造(ちゅうぞう)のために築かれた施設跡。実物を見ることができなかったため、書物を参考にして建設したもので、様々な困難があったとのことです。
反射炉の奥に見えるのは園外にある鶴嶺神社です。

土産物店や飲食店と、両棒餅


軒を連ねて建てられた土産物店や飲食店。仙巌園は鹿児島市の主要観光地という一面もあり、雰囲気を壊さないようにしながらも、ここ以外にも様々な店舗が点在しています。
食べ物の注目は両棒(ちゃんぼ)餅。武士が大小の刀を差している両棒差しの姿に似ていることから名がついたとされています。昔風の素朴な味で、帰りに賞味してみるのも良いでしょう。

正門


1895年(明治28年)に建てられた正門。
大勢の観光客を迎えるには不便な場所にあるため、現在はこちらから出入りすることはできません。

名勝仙巌園標柱と、錫門


実質的な庭園の始まりを示すように建つ名勝仙巌園標柱。
錫門は屋根を錫(すず)で葺いていることからこの名があります。錫は薩摩の特産品とのことです。
江戸時代には、藩主とその嫡男だけが通ることを許された正門でした。

御殿


江戸時代に島津家の別邸として利用されていた御殿。現存する御殿は1884年(明治17年)に改築された建物が主体となっています。見学順路があるので、それに従いましょう。
正面入口でセット券を買わなかった場合でも、観覧受付で御殿の入館券を購入可能です。

御殿内部(中庭)


御殿内部には中庭があります。中国趣味である風水を取り入れた庭となっています。

御殿内部(謁見の間)


賓客(ひんきゃく)と面会するために利用された部屋。二間続きの大きな和室ですが、シャンデリアや西洋風の家具が当時の雰囲気を伝えています。

御殿前の庭


御殿からも、外からも観賞することができる庭。一見、日本庭園らしい落ち着いた雰囲気になっていますが、借景の雄大な桜島が、ここが仙厳園であることを教えてくれます。

獅子乗大石灯籠と、鶴灯籠


御殿前の広場には、桜島のスケールに合わせたような大きな灯籠が2つあります。
鶴灯籠はガス灯の実験に用いられたとのことです。

望嶽楼


望嶽楼(ぼうがくろう)は江戸時代初期に琉球王国から送られたとされる建物で、敷き瓦などの意匠は中国趣味の影響が色濃いです。

千尋巌


望嶽楼付近から、大きな岩に文字が彫られている千尋巌(せんじんがん)を望むことができます。1814年(文化11年)に刻まれた歴史あるもので、大量の人工を擁して造られたのとのことです。

曲水の庭


曲水の宴(小川を流れてくる盃が、自分の前を通り過ぎるまでに詩歌を読む行事)を催すために造られた庭。現在も春に同様の催し物が開かれます。

桜島展望ポイント


園内の一番奥は芝生の広場になっていて、雄大な桜島を眺められるポイントになっています。

御庭神社と、水道橋付近


各所にあった島津家別邸の神社を合祀した御庭神社と、園内を横切る川に架けられた水道橋。
周辺はモミジやソテツ林、竹林などがあり、新緑や紅葉の季節は美しいです。

猫神社と、紙ふうせん民芸品


珍しい猫を神様といて祀る祠。隣には民芸品を販売しているショップもあります。
向かいには休憩できる建物もあるので、このあたりでゆっくりするのもよいでしょう。特にこの後、集仙台・観水舎跡への山歩きを考えている方は、ここで飲み物を確保しておくとよいでしょう。

集仙台・観水舎跡への遊歩道


仙巌園の裏山にある展望台の集仙台・観水舎跡に登る遊歩道。かなりの傾斜と距離があり、登る場合は体力や時間、天気とよく相談しましょう。登り口に注意看板があるので、内容を確認したうえで、どうするか決めるのをお勧めします。
周辺は温帯と亜熱帯の植物の両方が自生しており、エキゾチックな雰囲気があります。

観水舎跡付近からの展望



仙巌園の奥にある滝を眺めるために作られた建物跡。建物は現存していませんが、展望台になっており、滝や桜島を望むことができます。展望台にはベンチがあり一息つけます。

集仙台から見る桜島


集仙台は1814年(文化11年)に造られた展望台。観水舎よりも高い場所にあるため、より桜島が雄大に見え、すそ野までしっかり見ることができます。長い坂道を登ったご褒美の景色です。

御殿裏から展望


御殿の裏にある園路から眺める景色。案内がなく気づきにくい場所ですが、御殿と桜島を同時に眺められる好展望スポットです。

ショップ群と、薩摩切子


体験施設や、薩摩切子などが販売されているブランドショップ、レストラン、土産物店などが入った建物が並んでします。特に美しい薩摩切子には要注目です。

菊まつり



園内には季節ごとに様々な花が見られますが、一番の見所は秋のキク。
菊人形や菊花三重塔など、毎年様々な展示が楽しめます。

園外の施設

尚古集成館本館・別館


尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)は島津家の歴史や文化を紹介している博物館。建物は1865年(慶応元年)に建てられた現存する日本最古の石造洋式機械工場を利用したものです。
隣には別館もあり、こちらでも展示を鑑賞できます。

磯工芸館、スターバックス


磯工芸館は薩摩切子のギャラリーショップ。高価なものから手ごろなものまであるので覗いてみると良いでしょう。工芸館の後ろには薩摩切子工場もあり、見学が可能です。
近くには、国指定文化財である歴史的な建物を利用した、雰囲気のよいスターバックスもあります。

施設の概要

場所
鹿児島県鹿児島市吉野町9700ー1

交通手段
■公共交通機関
●鹿児島中央駅を起点に近郊の主要観光地を巡るバス。
カゴシマシティビュー「仙巌園前」下車すぐ。
まち巡りバス「仙巌園前」下車すぐ。
●鹿児島中央駅や鹿児島駅、天文館、金生町などから出る路線バス。仙巌園のみに行きたい場合はこちらが早くて便利。
各社路線バス「仙巌園前」下車すぐ。
■車
鹿児島中央駅付近から約20分
九州縦貫自動車道 「姶良IC」から約25分
駐車場あり(有料)

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.senganen.jp/

My impression

庭園デザイン★★★
桜島の雄大な展望を生かした海沿いの庭園。場所柄、琉球や中国文化の影響が濃く、全体的におおらかな雰囲気があります。そのような趣向が好きな方なら満足できるかと思います。
一方で、本州にある庭園のような繊細な趣向は、御殿の中庭や前庭、曲水の庭などに限られています。

植物充実度★★★
海沿いにある庭園にふさわしくマツ類が多く、ツツジ類もそこそこの数が見られます。亜熱帯植物も多く、温暖な鹿児島の庭園であることを強く感じさせます。
花の注目はキクで、菊まつりの期間は園内の様々な場所で、キクを使った展示を楽しめます。
管理状態は良好です。

娯楽度★★★★★
仙巌園自体が鹿児島市を代表する観光地となっており、園内には体験施設やブランドショップ、レストランをはじめとした様々な施設があり楽しめるでしょう。園外にある薩摩切子のショップや工場見学、歴史的な建物を利用した雰囲気のよいスターバックスなども要チェックです。
集仙台に登ることが難しく感じるなら、代わりに鹿児島市の観光地である城山公園展望台で、桜島や錦江湾の展望を楽しむのも良いと思います。

混雑度★★★★
大型連休や観光シーズン、菊まつりの頃はやや混雑します。観光施設としても有名なためか、団体客や外国人観光客も多いです。
園内はやや広めで、オープンスペースも多いので混雑時でもゆっくりできる場所はあります。

交通の便★★★★
公共交通機関の場合、駅から歩くことはできませんが、そこそこの本数があるバス停がすぐそばにあるので良い評価。ただ、鹿児島市街から意外と距離があります。立席だとつらいかもしれません。
車の場合、そこそこの広さの駐車場があり普段は問題ないですが、大型連休中や菊まつりの頃はスムーズな駐車が難しいこともあるでしょう。
※仙巌園近くに新駅を造る計画があります。新駅が完成すれば交通の便は非常に良くなるでしょう。

総合満足度★★★
桜島の展望を最大限利用した庭園。集仙台や観水舎跡まで行かずとも、様々な場所から桜島を望むことができます。また、大陸文化と結びつきが強いため、全体的におおらかで開放感のある空間が多いのも特徴。集仙台や観水舎跡への登山も、仙巌園の大きな特徴のひとつとなっています。
一方で、歴史的な遺構や観光施設と一体となった庭園を良しとするかどうかで評価も変わるかと思います。個人的には、庭園というよりも観光施設として訪れるのが良いのかなと思います。

※桜島の展望が望めないと園の魅力は半減します。難しい条件ではありますが、遠方から訪れるのであれば、できれば晴天の日を狙って訪問したいところです。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
秋(キク)
晴天の日(桜島の展望)

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