万博記念公園は大阪府吹田市にある広大な公園。1970年に開催された日本万国博覧会(以下万博)を記念して、その跡地に様々な施設が整備されています。
ここでは、万博時に政府の出展施設として造られた日本庭園をメインに、博覧会後に自然の森を再生し、花や紅葉が楽しめるようになった自然文化園もあわせて紹介します。
万博記念公園はEXPO CITYや、外周にあるスポーツ施設なども含んだ総称ですが、植物の見所でいえば日本庭園や自然文化園内にあります。日本庭園は一度、有料の自然文化園に入場しないと入れないようになっています。自然文化園のどの門から入っても構いませんが、公共交通利用なら東門と正門、車利用なら自然文化園東口が日本庭園に近いです。
園内は広く、移動手段も基本は徒歩なので、観賞時間には十分な余裕が欲しいです。
日本庭園は万博の開催に合わせ、日本の造園技術の紹介や、近代建築施設との対比を表現する、緑の憩いの場として造られた経緯があります。多数の人の利用が想定されたためか、道は広く舗装されており、休憩舎等もほとんどが木造以外のしっかりとした造りになっています。
庭園は西から東に向かって緩やかに水が流れており、その流れに沿って平安時代から現代まで4つの庭園様式を模範にして造られています。
正面から入ると目の前にある休憩所。建物内には軽食が頼める売店もあります。
休憩所の北側のテラスからは、心字池を目線が高い位置から眺められます。
草書体の心の字の形をした大きな池。この池は江戸時代の庭園でよくみられる池泉回遊式庭園の中心となるものです。眺める角度により様々な表情を見せてくれます。
白い州浜と水の流れがあり、周囲にはクロマツなど海岸近くで見られる植物が多く植えられています。特徴的な景観で、日本庭園の紹介にもここの景色の写真がよく使われています。
作庭者によると、枯山水の起源となる景観を再現したとのことです。
平安時代の寝殿造り庭園を模範としつつ、海に見立てた池を中心とした庭。
寝殿造りの庭園は現存しておらず、日本人であってもイメージしづらいですが、この時代の庭園からすでに自然の風景からモチーフを得る手法が確立されていました。
巨石を用いた大きな滝と2つの小さな滝、そこから続いて再現度の高い渓流があります。
周囲にはモミジが多く植えられ、紅葉の時期は特に美しいです。
茶室となっている千里庵の奥には枯山水の庭があり、抹茶を飲みながら眺められます。
また、茶室に入らなくても斜めから枯山水の庭を見ることができるので立ち寄っていきましょう。
普段は茶会等でしか入れない茶室ですが、春や紅葉のイベント時期には特別解放され観賞できます。内部はやや狭めながら、見所が多い空間になっており、特に紅葉の季節は美しいです。
池泉回遊式庭園といえば、文字通り回遊することで様々な角度で池を眺めることができるのが醍醐味です。中央休憩所から見る池とはまた違った景色を観賞できます。
晩春から初夏にかけて様々なツツジが咲く丘。立派な休憩舎もあります。
直線的な切石を使ったモダンな庭園。現代美術で見られる抽象化を、庭園でも試みているといえるのではないでしょうか。手前には休憩舎があり、座りながら観賞できます。
中央に休憩舎のある大きな池で、夏には様々な種類のハスの花が見られます。かなりボリュームがあり、日本庭園で楽しめる主力の花の一つになっています。
ここから中央休憩舎に戻って、日本庭園は観賞終了になります。
万博記念公園の象徴ともいえる太陽の塔や、各種イベントが開かれるお祭り広場なども含んだ広大な公園エリア。全てを巡ろうとすると大変ですが、各季節で花の見所の場所に直行すればそれほど時間はかかりません。ただ、サクラや紅葉の季節は見所が多いので見学時間は十分に欲しいです。
花や紅葉の見所に限れば、地図に赤文字で示す部分になります。
ここでは春から季節順に主な見所を紹介します。
太陽の塔から東方面に延びる道の両側にサクラ(ソメイヨシノ)が植えられています。開花最盛期になると出店とお花見客で大賑わいになります。他にも園内各所でサクラの花が見られます。
自然文化園のほぼ中央、水の広場の南側に広がるチューリップ畑。
見頃は春で、最盛期はソメイヨシノの見頃よりもやや遅めになります。
園の西側奥にある丘。春のアイスランドポピーや、秋のコスモスが見所です。
丘の頂上部分は芝生広場になっており、休憩にも向いています。
日本庭園前の広場にあるバラ園。万博開催時にあったバラ園をリニューアルし、現代風に改良されています。また、園路を広げてバリアフリー化もされています。
園の北西にあり、梅雨のころに見頃を迎えるアジサイ園。比較的ボリュームがあり、最盛期には様々な種類のあじさいが楽しめます。
園の南東、東の広場の南にある花畑。暑さに強い丈夫な草花や樹木で彩られています。夏によく似合うビビットな花色や、爽やかな涼し気な色の花が多く植えられています。
大阪の夏の暑さは非常に厳しいので、散策の際は曇りの日を選ぶなど工夫したほうがよいでしょう。
園の南西にある紅葉する樹木が多く植えられたエリア。ここ以外にも紅葉が楽しめる場所はありますが、紅葉渓は滝や水の流れがあり景観に優れているのが特徴です。
園の西側にある高さ19メートルの展望台。太陽の塔や観覧車、遠くの山々などを眺められます。
空気が澄み、落葉樹が様々な色に染まる紅葉の季節がお勧めです。
展望タワーと続きになった渡り廊下のような森の空中観察路。
こちらも紅葉の季節には巡ってみたい場所です。
早春が見頃の梅林、春が見頃のつばきの森、秋が見頃の万葉の里、紅葉したプラタナスの並木が美しい西大路などがあり、その季節に訪れたら立ち寄っていくとよいでしょう。
万博記念公園の象徴ともいえる太陽の塔が建つ、中央口から入って正面にある広場。季節によっては広場の周囲に花が見られます。
他にも、見所の多い国立民族学博物館や、博覧会の記念館であるEXPO’70パビリオンなどがあり、目的に応じて訪ねてみるとよいでしょう。
場所
大阪府吹田市千里万博公園
交通手段
■公共交通機関
大阪モノレール「万博記念公園駅」から自然文化園中央口まで徒歩約5分。
大阪モノレール「公園東口駅」から自然文化園東口まで徒歩約5分。
■車
中国自動車道「中国吹田IC」より中央駐車場まで約5分、日本庭園前駐車場まで約10分。
駐車場あり(有料)
入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.expo70-park.jp/
庭園デザイン:★★★★
日本庭園は万博の出展施設として造られた経緯により、庭園様式は様々。また、園内の道が広く各休憩舎も立派で、一般的な日本庭園とはやや異なる雰囲気があります。大味な部分はあるものの、各庭は変化が多く、また、歩きやすく開放感があり、こういうものとして理解すれば良いことも多いです。
日本庭園も自然文化園も水の流れを各所で効果的に使っており、その大部分が自然風の流れになっているのは好感が持てます。
植物充実度:★★★★
各季節に様々な花が咲いており、冬以外は何かしら花が楽しめます。おすすめは日本庭園がハスと紅葉、自然文化園はサクラと紅葉になります。植物の管理状態は良好です。
娯楽度:★★★★★
サクラや紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。それ以外の季節は派手な景色は望めず、ゆったり散策するのに向いています。
園内には国立民族学博物館やEXPO CITY等があり、一日楽しめるでしょう。
混雑度:★★★★
サクラや紅葉の最盛期、人気のイベント時、大型連休中はとても混雑します。ゆっくり観賞したいなら朝方や平日に訪問するなど工夫しましょう。それ以外の時期は混雑することは少ないです。
施設内は非常に広く、オープンスペースも多くあり混雑感はかなり緩和されます。
交通の便:★★★★★
公共交通機関利用の場合、モノレールの駅から歩いてすぐなので非常に良いです。また、周辺駅からバスの便もあります。詳しくは公式ウェブサイトで確認を。
車の場合、広い駐車場があり閑散期は問題ありませんが、サクラや紅葉、行楽シーズン、イベント時は駐車場が混雑するので早出早立ちを。特にサクラの最盛期は公共交通機関の利用を推奨します。
総合満足度:★★★★
日本庭園はやや繊細さには欠ける部分があるものの、開放的な雰囲気の中で様々な庭園様式が楽しめるため、気軽な気分で散策するならむしろ好ましいです。
自然文化園は広大で全てを巡ると大変なので、各季節の見所を調べてそこに直行するようにすればよいでしょう。ただ、サクラや紅葉の季節は園内のほとんどの場所に見所がある状態になるので、時間と体力に十分余裕が欲しいです。
日本庭園はもちろん、自然文化園内も自転車の持ち込みが禁止されているので、園路をゆったり歩けるのは有り難いです。一方で、移動は徒歩と園内乗り物に限られます。
遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(サクラ)※自然文化園
初夏(新緑、苔)
夏(ハス)※日本庭園
晩秋(紅葉)